2003年04月07日

年収300万円時代を生き抜く経済学

昨晩、何気にツタヤへ行ってきました。
新書のコーナーをふらふらしていると、「年収300万円時代を生き抜く経済学(森永卓郎・光文社・1400円)」という本が目に入りました。
他の新書が複数冊陳列されているのに、これだけは一冊しかありませんでした。
売れているということでしょうかね?
ツタヤへ寄る前に、ネクタイを3本ばかり買ってきたので、財布はすっからかん。
買う余裕も無いので、立ち読みで済ませました。
立ち読みのコツは、やはり、前書き・後書き・第一章・最終章のみを読むことですよね。
大抵はそれで概要がつかめますもの。

日本の平均世帯収入は、約700万円。
けれど、こんな不景気が続く昨今、日本はやがで、平均収入が300万円〜400万円の家庭が一般的になるだろうと書いてあります。
当然、大金持ちもいるのですが、それはほんの1%。
アメリカみたいに、所得格差が100倍なんていうのも当たり前。
賃金低下は更に厳しくなるとのこと。
しかし、年収300万円になったところで、果たして貧しさで大変になるかというとそうでもないらしい。
だって今現在、テレビ、冷蔵庫、携帯電話、車・・・よその国では贅沢品と呼ばれるものは既に大抵の家にありますし、品質・メーカーに拘らなければ安く買えてしまいます。
「システムキッチン」と呼ばれるものは、一式で500万円とかしたりします。
しかし、世の中の人全てが、「システムキッチン」を欲しがっているかと言うとそうでは無い。機能だけで言えば、「台所」で充分であります。
食べたいモノ、着たいモノ、人それぞれ好きなモノが買えている昨今、年収が一気に下がったところで、本当に何も出来ないのでしょうか?
年収300万円は貧乏なのでしょうか?

めちゃくちゃ贅沢しなければ、今の日本では貧しさで死ぬということは無いでしょう。
この本では、これからの日本の各家庭の収入、支出がどのように変化するかを経済の面から解説しています(途中の章に書いてあるみたいですが、読み飛ばしたので具体的には分かりません)。

最終章は、経済的な面の説明は少なくなり、精神的な豊かさについて語られています。
今までの物質的な満足が、精神的な満足に置き換えられていた考え方を改めてみる必要があるのではないかと語っています。
筆者の友人でライターがいるそうです。
その人は数年前から東京を出て、ライター業は半分の量にして、農業を営んでいるそうです。
無農薬に拘った栽培をしているのですが、評判となり、全国各地から注文が殺到しているそうです。
このライターは、もう東京に戻りたくないと言っているそうです。
東京の人はそれこそ、年収1千万円とか稼いでいるかもしれませんが、それと引き換えに、毎日遅くまで働き、プライベートを犠牲にしています。
彼は、収入こそ減ったものの、帰宅途中に自然に育つ植物を眺めて心を豊かにしたり、農業の仲間と楽しく飲んだりしています。
農家の人たちの誰もが、愚痴を言わないそうです。
収入は、東京の人よりも少なくてもです。
そして彼らは、「東京の人たちはいつも愚痴を言って、今に満足はしていない。今を語りたがらない会話なんて、何が面白いんだ。そんな人生のどこが良いのだ」と口にします。

これからの高齢化社会になると、様々な問題が出てくるでしょう。
よく年配の人たちが、「老後は、夫婦で世界一周をしてみたい」と言いますよね。
実際にやった人たちによると、あれは最初はいいものの、途中で飽きてしまうそうですよ。
その旅行だって、老後の人生のほんの一瞬でしかない。
日々の生活の充実が必要なのです。
定年退職後ですし収入源は無くなり、年金もこれからはあてになりません。
生活費は苦しくなるでしょう。
そしてそれ以上に、仕事一辺倒だった人にとっては、それ以降の長い時間を持て余してしまいます。
その時間を何に使うか。
目的が必要になりますね。
筆者は、何をするかは自由だが、それは「ドリーム(夢)」では無く、「タスク(課題)」と捕らえるのが重要だと語ります。
そのやった事が無理だった場合、すぐに心を切り換えて、別の方向へ進むのが望ましいと。
確かに、老後に必要以上の苦労はいりません。
何よりも、毎日の生活の充実のためにやっていることで苦しむのは、楽しい生活とは言えませんもの。
以前にも書きましたが、夢というのは呪いと同じようなもの。
呪いを解くには、夢を実現しなければならない。
しかし、実現できなかった人は、その呪いに一生苦しめられてしまいます。
そういうのは、老後に必要ありません。
いや、若い人だってそう。
無茶な夢は、夢ではありません。無謀です。

こんなに表面上は豊かな日本なのに、自殺する人の数は、年間3万人にもなります。
今、戦争が起きていますが、それで死ぬ人よりも圧倒的に多い数が、日々失われているのです。
物質的豊かさが必ずしも、心の充足だとは言えない証拠です。

収入の多い事を否定するつもりは更々ありません。
けれど、少なくなったからといって、落ち込むことはありません。
少なければ少ないでやりくりすればいいし、心を豊かにしてくれる何かに夢中になれるのは素敵な人生だと思います。

年収300万円時代を生き抜く経済学(ISBN:4334973817)

Posted by kanzaki at 2003年04月07日 18:53
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