2007年12月03日

夢は見るもの、志は立てるもの

慌ただしい日々が続きまして、思うように自由な時間がとれないです。
皆さんも、お忙しい時期ではないでしょうか。
何をするにも健康が一番です。
風邪やインフルエンザにはお気を付けください。
特に今年のインフルエンザは、例年よりも流行る時期が前倒しになっているそうですよ。
予防接種はお早めに。


さて、本題。

新入社員達にアンケートをとったところ、「辞めるつもりで入社」が4割もいることがニュースで取り上げられていましたよね。

また、ここ10年の大卒新入社員の離職率は、在職3年目で30%を上回っているそうです。
新入社員のうちの3割が3年以内に退職するという時代。
「石の上にも3年」なんて言葉があります。
辛抱して継続すれば最終的には物になる例えですが、大学を卒業して何年も悩み続けながら仕事をして、ようやく決意が固まった頃には、転職が有利な年齢を過ぎていたなんて事もあることでしょう。
また、3年もあれば、結婚して子供を作ることも可能。
人生の地盤を固めてしまうと転職をするのにも、かなりの勇気が必要なものです。

社会人の皆さんは、「夢」をお持ちでしょうか?
一口に夢と言いましても、広うございます。
寝ている間に見るのも夢ですし、希望や願望を実現させたいと考える事も夢です。

後者の場合、あまりに突飛で実現困難な夢は、空想・妄想と呼ぶこともあるでしょうね。
ここではとりあえず、「職業」に限定した夢について書きます。

希望や願望を実現するには、自身の持つ能力や努力が伴うものです。
それ故、実現されずに終わる事もあります。
どうしてもなりたい職業があり、懸命に努力をしたのですが、残念ながらその努力は実らずに挫折することもあるでしょう。
実現されなかった理由は、能力不足、努力不足のようなものもありますし、就職氷河期のように、本人の意思とは関係なく、世の中の情勢に影響されることもあります。

このように、自分の描いていた未来が、現実とは違うこともあります。
否、違うことが殆どだと思います。
今、自分が就いている仕事を学生時代に予想できていた人は、どれぐらいいるものでしょうか。
いろんな選択の積み重ねで今がある訳で、必ずしも予想した通りの人なんてのは、あまりいないと思うのです。
それ故、入社する前から、就いた職場を辞めたいと考え、実際に3年以内に行動に移す人が30%もいる訳ですね。

現実の自分と理想の自分にギャップが大きければ大きいほど、会社を辞める確率も高くなることでしょう。
よくCMなどで、「夢」「ドリーム」などの言葉が使われます。
そのCMで夢を口にする人と言うのは、多くはプロスポーツ選手など、日本の人口と比較すると、小指の爪に乗るか乗らないかの極限られた人達です。
若いころはやはり、ああいう「(見ている人にとっては)虚像」の世界に憧れてしまうものです。
しかし、そのCMに出演している人と同じようになれる人は、ほんの僅かな特殊な人達だけです。
多くの庶民には関係ありません。

なんかこんな風に書いていますと、
「神崎は夢を否定しているのか? そんなに超現実主義者なのか?」
と思われるかもしれません。
けれど、ちょっと違うのです。

もし、なりたいと思っていた仕事に、実際には就けなかったとしても、それで自分の人格を全否定することはありません。
私は最近、次のように考えているのです。

「夢は見るもの、志は立てるもの」

思い描いていた夢を実現できなかったとしても、確固たる志さえ持っていれば、どんな場所でどんな事をしていようが、己の理想に沿うようにまっすぐ進めるはずだと考えるのです。
その志の向かうところが現実化した時、それが必ずしも夢に描いていたものと同じとは限らないのです。
自分の志を世の中で活かす為、寺の住職になるのが良いと思っていたけれど、実際には企業の社長になる事で実現することになるやもしれません。

人材を多く輩出した幕末の私塾・松下村塾。
そこで吉田松陰は「志を持て」と言っていたそうです。
私心を捨て、まっしろな心になって、何をすれば世の中の役に立つかを考える。
そして出てきた答えが、志なのです。

松平春嶽の懐刀として活躍した幕末の俊英、橋本左内が、自らを常に奮い立たせるために、自己の行動規範を五項目に渡って記したものがあります。
それが「啓発録」。
その一つに「志を立つ(立志)」とあります。

自分の目標を揺ぎなく定め、ひたすら精進せよ。 志とは自分の心が向う目標である。一度決心したからには、真直ぐにその方向を目指し、迷わず進まなければならない。聖賢豪傑になろうと決意したら、聖賢豪傑らしからぬところを日一日取り去っていけば、どんなに才能が足らず、学識の乏しい者でも、最後には聖賢豪傑の地位に到達できるはずである。  また、志を立てる近道は、聖賢の考え方や歴史の書物を読んで、その中から深く心に響いた部分を抜書きし、壁に貼り付けたり、常用の扇にしたためておくなど、常に目に触れるところにおき、自分を省みることである。

イギリスの政治家・実業家・首相であったスタンリー ・ ボールドウィン (1867-1947)。
彼の有名な言葉に、こんなものがあります。

「人間、志を立てるのに遅すぎるということはない」

自分が志すものを実現しようと決意する(志を立てる)ことが大事。
「もう歳だから」などと理由(言い訳)を考えるよりも、「遅すぎるということはない」と決意できたらいいのではないか。

現代において、夢を見たり語ったりすることはあっても、志を立てる事について語ることってないですよね。
他の人と語るどころか、本人が志を立てることすら、あまり無いように思います。

志さえしっかりしていれば、予測しなかったどんな状況でも、その志に基づいて考え、悪いことも良い方向に解釈できると思いますし、精神的に身動きが出来なくなることはないでしょう。

「夢=結果」を中心に考えるのではなく、「志=考え方・方針」に沿って生きていけば良いのかなあと思うようになりました。

私は、若いうちの転職を否定しません。
冒頭にも書きましたとおり、歳を重ねれば重ねるほど、転職に不利になるからです。
ただし、転職を考える際、今の仕事が夢に描いた職業かどうかで判断するのではなく、己の志に沿った職業かどうかで考えてみてはどうでしょうか。
多くの場合、転職を考えるよりも、同じ職場で仕事の方法を見直したり、人間関係を深めたり、考え方を変えることで打破できたり、満足する事が多いと思いますよ。

Posted by kanzaki at 2007年12月03日 21:46