2009年09月07日

自分大学〜この世でいちばん大事な「カネ」の話(西原理恵子さん)

ここしばらく更新できずに申し訳ありませんでした。
生きてりゃ色々ありますよ。
でも、これからもマイペースで延々と続けていきますよ!(レンタルサーバーの容量も増えたし)


●<できコツ33>会社で働きながら勉強する「自分大学」という方法
http://www.j-cast.com/kaisha/2009/09/04048855.html

「勉強する」というと、どうしても「学校に行く」というイメージになりますが、本を読んでも、問題集を解いても、職場で実務経験を積んでも「勉強する」ことはできます。私は、勉強を続けるために「自分大学」という方法をとっています。

仕事に必要な資格を専門学校に通って取得するのはいいことだとは思いますが、有資格者でなければできない仕事をするのでなければ、実務と独学を組み合わせれば案外学べるものです。私はこれを「自分大学」と名づけています。

ただ「独学」には、自分のペースでできる、お金がかからない、役に立たなさそうなことはやらなくて済む、というメリットはあるのですが、意思が弱いと全く進まなくなるという欠点があります。その意味では諸刃の剣です。

意思を持続するためには、動機をはっきりしておくことでしょう。いつものことですが、動機は不純な方がパワーがでます。裏の目的として、お金持ちになりたい、女性にモテたい、職場で「できるヤツ」に見られたい、見返してやりたい・・・。そんな動機があれば大丈夫です。


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この前、ニュースを見ていたら、国家公務員の中途採用試験の事を報じていました。
9月6日に一次試験があるのですが、全体でたった169人の採用予定なのに、受験申込者は1万1337人だったそうです。
競争率は67・08倍でして、昨年度の59・92倍より更に難関になっていました。

このご時世ですから、倒産するという概念の無い公務員は魅力ではありますが、それにしても異常な数値ですよね。
バブル終了から日本は不安定な状況です。
そうなると人は、資格を取得しようと仕事の合間に勉強をはじめたり、その資格をきっかけに転職を考えたり、公務員の中途採用試験なんかに目が行ったりします。

不安な精神から生まれるパターンですよね。
でも、私もこの気持ちは非常に分かりますよ。
なんかこうね、「一発逆転」を狙いたいのよ。
今まで圧迫され続けていた心を安住の地へ移したいがためにやりたくなるのです。

けれどこれが、なかなか上手くいくものではありません。
資格を取るのだって競争倍率が高ければ、それ相応の勉強が必要です。
勉強をしていると、思うように進展しなかったり、仕事や他の事が邪魔になって集中出来なかったり、ストレスがたまる一方です。

安住の地へ心を移したいのに、その道中たるや心がズタポロの繰り返しです。
何のために勉強しているのか分からなくなります。
それで更に不合格だった日には、目もあてられません。
一体、これまでの時間はなんだったんだろうかと。

一般的に資格をとったりする理由は、それを元手に仕事でお金を稼ぐためです。
できれば、今まで就いていた職場よりも楽に沢山のお金を稼ぎたい。
けれどそんな事が現実になる人なんて、ほんの一握りです。

私もこの年齢になりますと、勉強はするものの、流石にそれを元手に転職をしようとは考えられません。
資格はやはり、若い人がこれから進む道のりの為の「パスポート」であって、私のような年齢の人にとっては、多くは酒の席のネタぐらいにしかなりません。

資格の勉強をして、それが合格しようが不合格であろうが、今、自分が就いている職場の仕事に活かせるのが一番だと思います。
不合格だったとしても、知識が全く増えなかった訳じゃない。
多少は得られる知識、興味のある知識はあったはず。
それが今の仕事に活かせれば、別に合格なんて関係ないのです。
だって既にその時点で、「その勉強が仕事を通してお金になった」のですから。

もし本当に、新しい仕事に就いてお金を稼ぐために資格を取ろうなんて考えたら駄目。
大抵、それが王道だと信じきって自滅してしまいますから。

本当に自分が、何かの知識・技能でお金を稼ぎたいのならば、我々凡人の場合、もっと違う攻め方があると思います。

先日、図書館から「この世でいちばん大事な「カネ」の話し」という、イラストレーター西原理恵子さんの本を読みました。
彼女のこれまでの自叙伝です。
大学でどんなに一生懸命に絵を学んでも、自分よりも凄い才能の人が沢山いる現実。
自分の描けるものは、いわゆる「ヘタウマ」の絵ぐらい。
そんな彼女ですが、学校の他の子達よりもお金を稼ぎ、そして有名になった理由は分かりますか?

それは「最下位の人間には、最下位の戦い方がある」という事を知っていたからです。

最下位の人間には、勝ち目が無いと思っている人は多い事でしょう。
そんな考えだから、最初から負け組みになってしまう。
トップの人間に勝とうと思うのは駄目。
目先の順位に目がくらんで、戦う相手を間違えてはいけません。

西原理恵子さんの当時の目標は、「トップになること」ではありませんでした。
高知から上京してきた彼女の一番大切な目標は「この東京で、絵を描いて食べていくこと」でした。

だから肝心なのは、トップと自分の順位を比べて卑屈になることじゃありません。
最下位の自分の絵でも、使ってくれるところを探すことなのです。
最下位の人間には、最下位の戦い方がある。

そのためにまず、来る日も来る日も描き続け、自分の得意なものと、自分の限界点を知りました。
やりたい事と、やれる事の着地点を探したのです。

そして彼女はひたすら自分の描いたイラストを出版社へ持ち込んで、仕事をもらえるか営業をかけました。
勿論、この時はまだ在学中です。
自分に才能があるかなんて、机の前で考えていたってわかるものじゃありません。
もんもんと考えているぐらいならば、実行あるのみでした。

彼女にとって「絵の才能がある」とは、「それでお金をちゃんと稼げる」という事でした。
若さと勢いで無数の出版社を訪問しました。
回っていくうちに、それこそ才能のある人が行う仕事もあれば、同じ業界でも別のいろんな仕事がある事を知ったそうです。

「どうしたら夢がかなうか?」と考えると、全部を諦めてしまいそうになるけれど、そうではなく「どうしたらそれで稼げるか?」と考えてみるのです。
「いいじゃない。お金にならなくても」ってやっているうちは、現実にうまく着地させられない。
「自分はそれでどうやって稼ぐのか?」を本気で考え出すと、やりたい事が現実にどんどん、近づいてきたそうです。

国家公務員の中途採用試験やら、競争倍率の高い難関の資格を目指す人の中で、「自分はそれでどうやって稼ぐのか?」までちゃんと考えている人ってどれぐらいの割合なのでしょうか?
殆どが「合格したら幸せがやってくる」と考え、合格してから先の事を具体的に考えている人って、少ないのではないでしょうかね。
だからこそ、甘ちゃんな人達が沢山応募するので、倍率が高くなると。

当時、西原理恵子さんは色んな出版社を回ったのですが、一番自分の絵を面白がってくれたのは、エロ本の出版社の人達だったそうです。
同じ美大のトップクラスの人達ならば、まずそこへ行こうなんて考えませんよね。
プライドが許さないもの。
けれど、そこへ飛び込むのが最下位の戦い方。

エロと言っても編集者は若い人達ばかりでノリがよく、エロの要素がどこかにあれば何でもアリ。
今で言う「サブカル」みたいなものだったらしい。
彼女も高知の女だからサービス精神旺盛で、編集者にシモネタも余裕でかましていたので、随分と相性がよかったみたい。
まさか自分が、「オンナのアソコはこう責めろ!」なんてテーマの図解を描くとは夢にも思わなかったそうですが。

そんな感じで、じょじょ仕事が入ってきたそうです。
絵を描くことで生計を立てたいと考え、それには何を為すべきかは「大学の勉強」ではなく、売り込みに行った出版社の一つ一つの現場が、自分がこれから何をするべきかを示してくれたそうです。
「絵の仕事で月収三十万円」を目標にやり続けていたそうですが、これも明確な目標ですよね。
明確ゆえに、その為に何をすべきかも明確です。

とにかく彼女は、来る仕事を拒まず、場数を増やしていきました。
そうすると慣れてくるし、得手、不得意の部分も分かってくる。
不得意なものだとしても、上手く誤魔化しつつなんとか出来る術も得ました。
日々、仕事の中で鍛えられていくからこそ、こういうスキルアップも出来るし、活きた術をどんどん吸収できる。

未熟な頃に仕事をえり好みせずやったのが良かったそうです。
やってみなきゃ分からないことはこの世に沢山ありますし、自分をやる前から過大評価していると、せっかくのチャンスも逃してしまいます。

彼女の文章でいいなあと思ったのが、何でも仕事を始めたら、「どうしてもこれじゃなきゃ」って粘るだけじゃなく、人が見つけてくれた自分の「良さ」を信じて、その波に乗ってみればいいという事
人から「あれ描いて」「これ描いて」と注文されて、断らずにやっているうちに、「この間のあれ、面白かったよ」「こういうのまたやりましょう」と、ウケる方に、食べていける方に仕事が寄っていったそうです。
一つの仕事が次の仕事を呼んで、仕事の道が出来ていく。
「才能」って、人から教えられるものだそうです。
いい仕事をすれば、それがまた次の仕事につながって、その繰り返し。
時には自分でも意識的に方向転換しながら、とにかく足を止めないこと。
そうすると、自分の進むべき道が見えてくるそうです。

今の職場から逃げの姿勢で資格を取得しようとしても、その先には明確なものが見えません。
そもそも、そういう人が合格できるものでしょうか?
勉強や資格って、ある程度の年齢になったら、「次の職場」ではなく、「今の職場」の仕事を充実させるために研鑽するものではないでしょうか?
だから、「自分大学」という考えは、西原理恵子さんと同じく、非常に前向きで「カネになる行為」だと思います。

Posted by kanzaki at 2009年09月07日 22:04