2010年12月04日

ダイバーシティとは、「多様性」という意味です〜異なった考え方や意見を受け入れる企業文化を作っていこうという活動

日産自動車の志賀俊之さん(代表取締役最高執行責任者)は、産業雇用安定センターの雑誌に寄稿文を書きました。
タイトルは「ダイバーシティの大切さを知った私の経験」。

ダイバーシティとは、「多様性」という意味です。
性別、国籍、学歴、職歴など、様々なバックグラウンドを持つ人達が同じ職場で働くことで、異なった考え方や意見を受け入れる企業文化を作っていこうという活動です。

その活動により、色んな考え方を持つ「個人」が力を発揮できたり、組織全体が新たな変革を呼び起こすことが期待できます。

志賀さんが、このダイバーシティの意義を実感したのは、日産が業績回復のために仏ルノー社とアライアンス(企業提携)を結んだ時の事です。
その際、お互いの会社に従業員を派遣しあいました。
志賀さんが働いている場所にも、一人のフランス人がやってきました。

いつもの会議で、いつものように決定して会議が終わりました。
その直後、そのフランス人スタッフは志賀さんに、こう問いました。

「今の会議の結論だが、殆ど議論もしないで、どうしてあのような結論になったか教えて欲しい」

志賀さんは面倒くさそうに「あの結論以外にどんな結論があるのか?」と聞き返しました。
二人はそのまま、過去に経験したことのないような長い長いディペート(議論)を交わしました。

この議論の最後に志賀さんは、この結論しかないと思っていたのは、自分が長く日産にいたことで、知らず知らずのうちに身についていた常識であり、会議に出ていたメンバーとも阿吽(あうん)の呼吸で決まっていたことに気づきました。

自分のチームに、フランス人スタッフが加わったことで、少し見方を変えるだけで色々な意見が出て、異なった結論も導き得ることが分かったのです。

そして、会社全体で異なった意見を受け入れる文化を作れば、業績回復に向けて組織変革が出来ると確信したのです。
これが、志賀さんのダイバーシティを推進する原点となったのです。

ダイバーシティを日本の企業で推進する最も身近で効果的な方法は、女性の能力の活用だと志賀さんは考えています。
つまり、男性社会の中で、違う視点、考え方を取り入れるのです。
それによって、様々な変革が引き起こせると考えています。
これが、停滞気味の日本経済の活力復活につながるといいですね。

私の会社でも、幾つかの重要なポストに、元銀行員・元警察官等がいます。
そういうポストについているのは当然、会社が銀行や警察等と良好な関係を保つ為です。
しかし、それ以外にも「ダイバーシティ」というメリットもあります。

そういった外部からやってきた人の一人から言われた言葉を今でも記憶しています。

「君の考え、いや、この会社全体が"大企業病"だ」

社内のみんなが当たり前に思っていたその考えは、会社内だけで通じる常識だったのです。
詳しい事は社内の話しですから割愛しますが、別の仕事をしてきた人からみると、それは奇妙に思えたようです。
確かに言われてみれば、そのとおりだと気付かされました。

私自身は会社の中でも、警視庁特命係のような独立愚連隊な場所で働いていますから、会社のカラーに染まっていない方だと思っていました。
しかし、長年の勤めから、しっかり染め上がっていたのです。

染め上がることで様々な荒波を起こさず、平穏無事に過ごしたいと思うのが人というもの。
しかし誰かが声を上げ、時には嫌われ役にならないと、企業全体が大きく方向転換する事ができません。
そういう役割って、若くて気性の荒い、怖いもの知らずの若者がやりそうなものですが、実際は企業のトップの方だったりするんですよね。
トップダウンの方が、不平不満を抑えて従業員が否が応にでもやらなければいけないという感じになりますからね。
ただし、その変革によって業績が回復したり、新たな活路が生まれるのも事実です。

年末で忙しい時期です。
日々の業務で手一杯かもしれません。
けれど一瞬でいいから、ふと立ち止まってみてください。
「これって、社外の人から見たら、おかしいのではないか?」
新たな人物の登用をせずとも、既存の従業員が考え方を転換してみることだって、ダイバーシティは推進されると思います。

Posted by kanzaki at 2010年12月04日 23:29