2010年12月30日

「相棒 -劇場版II- 警視庁占拠! 特命係の一番長い夜」を観た感想(ネタバレ注意)【2】

前回の続きです。

●前回の記事: 「相棒 -劇場版II- 警視庁占拠! 特命係の一番長い夜」を観た感想(ネタバレ注意)【1】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002245.html

●公式サイト「相棒-劇場版II-」
http://www.aibou-movie.jp/


今回の映画第2弾は、ミステリー要素は殆どありませんでした。
トリックらしいトリックといえば、警視庁人質籠城事件の犯人・八重樫哲也(元組織犯罪対策部刑事、演:小澤征悦)を警視庁幹部が殺す際の合図として、モールス信号音を足音で行ったところぐらいです。
テレビ版でも、警察組織内の闇を描いたエピソードは、トリックは二の次の場合が多いですが、今回も同様でした。
トリックより、主人公達の所属する組織にメスを入れるという部分を描くならば、それもアリです。
そういった所も「相棒」のエッセンスですからね。

映画だからと大きな風呂敷を広げ、登場人物が多すぎて話しが散漫になるより、今回の話しは良いとは思いました。
元々、レギュラー・準レギュラーの多い作品なのに、更に映画のみの登場人物まで深く掘り下げるには、やはり2時間じゃ収まりきれないですしね。

映画のみの登場人物で、ストーリー上、把握しておくべき人はそんなに多くありません。
それ故、話しは大きいけれど、ちんぷんかんぷんになる事はありませんでした。
(観客が、テレビドラマ版を観ているという条件はつきますが)

今回のエピソードは、小野田公顕(警察庁官房室長・警視監、演:岸部一徳)が刺されて死ぬ事が前提で作られた感があります。
それ故、「ああ、刺されて殺されてしまっても仕方が無い」と、無理なく話しは進みました。

しかし、私の感性が鈍いからなのでしょうか、ストーリーは進みますが、登場人物達にあまり感情移入が出来ませんでした。
ドラマはストーリーの動きではなく、感情の動きが重要だと思っている私には、この映画に感情があまり感じられませんでした(注:話し自体は好きですし、もう一度観たいとは思っていますよ。相棒は好きなシリーズですから)。

映画の重要人物である重樫哲也(警視庁人質籠城事件犯人、元組織犯罪対策部刑事、演:小澤征悦)は、開始早々に殺されてしまいます。
特命係は、彼の犯行に至る経緯を調べていき、その人物像を探っていきます。
しかし、どんなに探っていっても、この映画を観ている私には、この犯人に同情・共感が出来ないんですよね。
「警察は組織なのに、なんで単独でいろんな所へ勝手に顔を出し、失敗ばかりしているのだろう」と思ってしまいました。
精神的に追い詰められて、やむなく犯行に至るという感じじゃないんですよね。
唯一、この犯人の行動・感情で良かったのは、朝比奈圭子(総務部装備課・主任、演:小西真奈美)を共犯にしないため、エレベーターで神戸尊(特命係刑事・警部補、演:及川光博)へ押し付けたこと。
あそこのシーンは、製作側のこだわりを感じました。
ワインが割れるカットも、象徴的でしたね。

重樫哲也と朝比奈圭子は恋愛関係にありません(影の管理官を見つけるという共通の目的があっただけで、無かったですよね?)。
もし、朝比奈圭子の恋人・磯村栄吾(故人、公安部外事第三捜査員課、演:葛山信吾)という存在を無くし、重樫哲也と朝比奈圭子を恋人同士の設定にしていれば、エレベーターで神戸尊に朝比奈圭子を押し付けたシーンも、もっと感情が強くなったかも。
また、朝比奈圭子が、影の管理官に銃口を向ける時の感情だって強まったかもしれません。
重樫哲也と朝比奈圭子の関係性をもっと、恋愛という理性とはまた別の強い感情で繋げていれば、観ている私も感情移入できたように思います。

警視庁12人の幹部(特に、犯人射殺をした3人の部長)に別段、際立ったキャラクターの区別はありません。
お偉いさんで、特命係が挑む敵というだけ。
不気味さとか、どんなに挑んでも超えられない壁という感じもしない。
小野田公顕と対等となりえるほど、「魅力的な敵」では無かったように思います。

また、テレビドラマ版では毎回、魅力的に描かれている捜査一課のトリオ。
今回もそれなりに出演シーンがあるのに、殆ど活躍していないし、魅力的なシーンがありませんでした。
ひょっとしたら119分に無理やり押し込める為に、本筋に大きく影響しないと言うことで、捜査一課トリオのシーンがことごとくカットされたように推測されます。
ラスト近く、神戸尊が伊丹憲一(捜査一課刑事・巡査部長、演:川原和久)に向かって「もう、どうにもならないんですか?」という感じの台詞があります。
この二人だけで会うシチュエーションは珍しい。
普通はありえない。
偶然に出くわしたようにも感じられません。
何か大前提となる二人の間の約束なり取引なりがあったのですが、結局は事件の真相が闇に葬られる形になり、不成立になったのでは?
この映画で、もし尺の都合でカットされているシーンがあり、それが魅力的な内容ならば、完全版で観てみたいものです。

今回の劇場版には、小説版やオフィシャルガイドブックがあります。
私は買っていませんから、どのような内容かは分かりません。
もしかしたら、私が色々と不満に思っている部分、分からない部分、劇場版の補完エピソード・解説が掲載されているかもしれません。
しかし、それはフェアではないと思います。
映画はテレビと違い、お金と時間を費やして観ています。
その対価は、劇中で全て語られるべきだと思います。
時間内に収める為、登場人物達の感情の推移や、観ているお客の感情をスポイルしてしまうシーンのカットはすべきではないと思います。

なんだかんだと不満ばかり書きました。
しかし今回のストーリーは警察内という内輪話しという、相棒の得意分野ですから、ストーリー自体は安定していたし、製作側が冷静に作っている感はありました。
エンターテイメントではないけれど、相棒ファンならば、まず観て損はないと思います。

※※※

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Posted by kanzaki at 2010年12月30日 21:00