2011年03月24日

何故、フリージャーナリスト・池上 彰(いけがみ あきら)さんの解説は分かりやすいのか?〜メディア・リテラシーが欠如した時代【2】

前回の続きです。

●何故、フリージャーナリスト・池上 彰(いけがみ あきら)さんの解説は分かりやすいのか?〜記者として学んだこと、ニュースキャスターとして学んだこと【1】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002314.html

(週刊こどもニュース)

「週刊こどもニュース」で分かりやすいと評判を呼んだものに、「模型を使ったニュースの説明」がありました。
これは、首都圏の番組でキャスターを務めた時代のアイディアなのです。

「ここで模型があったら分かりやすいのになあ」と思っても、毎日のニュースでは準備する時間がありませんでした。
「週刊こどもニュース」は、一週間に一度の生放送番組です。
模型製作をはじめ、いかに分かりやすく伝えるかにじっくりと頭を巡らせる事が出来ました。

(事実と意見)

2005年、NHKを退職してフリージャーナリストになりました。
民放の番組に出演するようになりました。
分かりやすさに加えて、「事実」と「意見」をはっきり区別して伝えることに心を砕きました。
なぜなら、NHKの場合は、ニュースで意見は一切言わないからです。
それでは、視聴者に欲求不満が出ます。
民放では、ニュースキャスターが意見や感想を付け加えることが出来ます。
それはそれで押し付けがましいと感じる視聴者もいます。
ニュースを伝える際、このさじ加減が難しいと考えられています。

池上さんのニュースの伝え方は、その中間に位置しているものと考えられています。
NHK的に事実を伝える。
その後に、「今、なぜこのニュースを取り上げるのか」、「こういう背景があるから、今これがニュースになっている」と説明する。
そのニュースの背景を池上さんなりの「意見」としてフォローしているのです。
そういう心がけを持って伝えると、視聴者の方々も腑に落ちて、内容がより一層分かりやすく伝わるのです。

(池上流「分かりやすさ」の五箇条)

池上さんは「週刊こどもニュース」にて、子供達にいかに分かりやすく伝えるかを考え抜きました。
その「分かりやすさ」の五箇条は以下のとおりです。

一、難しい言葉を分かりやすく噛み砕く
一、身近なたとえに置き換える
一、抽象的な概念を図式化する
一、「分ける」ことは「分かる」こと
一、バラバラの知識をつなぎ合わせる

【出展】相手に「伝わる」話し方(講談社現代新書)

(無批判に信じないために)

池上さんも我々と同様に、グーグルやウィキペディアを使っています。
情報の信ぴょう性や価値という点で、あくまで参考程度に留めているそうです。

グーグルでキーワード検索すると、トップから5ページぐらいまでは同じような事が載っています。
それ以降は全く逆の事が書かれていることは、よくあることです。

ウィキペディアは、色んな人の手が加わり、日々辞典として進化している面を否定しません。
新聞や書籍のように編集者や校閲など、数多くの人々の目を経て確定された「事実」というわけではありません。
そんな新聞や書籍でも間違いがあるのですから、丸ごと信用することは出来ないのです。

インターネット検索で情報を収集する際の心構えは、
「参考にはするが、無批判には信じないこと」
「必ず複数の情報源をチェックして、事の真偽を確かめること」です。

(メディア・リテラシーの欠如)

最近、若い世代を中心に、何の疑いもなくネット等の情報を鵜呑みにしている人達が目立ちます。
原因は、「メディア・リテラシー」の欠如です。

・メディア・リテラシー - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%86%E3%83%A9%E3%82%B7%E3%83%BC

メディア・リテラシー(英: media literacy)とは、情報メディアを主体的に読み解いて必要な情報を引き出し、その真偽を見抜き、活用する能力のこと。「情報を評価・識別する能力」とも言える。メディア・リテラシーで取り扱われるメディアには、公的機関やマスメディア(新聞、テレビ、ラジオ等)を始め、映画、音楽、書籍や雑誌等の出版物、インターネット、広告等、様々なものがあり、口コミ(口頭やブログ等)や各種の芸術等も含まれることがある。


情報の信憑性という問題だけではありません。
ブログ等では差別的な表現や、なんの根拠もない誹謗中傷の類が平然と書いてあります。
ツイッターを見ると、何故か池上彰さんが三人も存在して発言しています。
便利だけれど、「負の空間」にも成り兼ねない側面があります。

ネット情報をベースにする安易な「コピペ文化」も、オリジナリティの喪失に繋がっています。
「ネット情報をいかにクリエティブに使いこなすか」が問われています。
創作面の流儀やルールも含めて、ICT社会におけるメディア・リテラシーの習得は、何よりの緊急課題だと池上さんは感じています。

・ICT(アイシーティー、Information and Communication Technology)
http://www.sophia-it.com/content/ICT

ICTとは、情報・通信に関連する技術一般の総称である。従来ひんぱんに用いられてきた「IT」とほぼ同様の意味で用いられるもので、「IT」に替わる表現として日本でも定着しつつある。別名:情報通信技術

(続く)

●次回の記事(最後): 何故、フリージャーナリスト・池上 彰(いけがみ あきら)さんの解説は分かりやすいのか?〜「分かりやすさ」の指標は、伝える相手に想像力を持って接すること【3】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002316.html

Posted by kanzaki at 2011年03月24日 22:30