2011年12月24日

新書ブームは去り、売れない時代です〜各社の対応

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【新書が売れない】

「新書ブームが去った」と朝刊に書かれていました。

2010年に刊行された新書は3323万冊。
前年に比べて10.2%も大幅減です。

今でも、週間ランキングでは新書が上位にランキングします。
けれどセールスが長続きしません。

そのため、2011年の年間ベストセラーで、新書トップテン入りはたった1冊でした。

・老いの才覚 (ベスト新書): 曽野 綾子
http://amazon.jp/dp/4584122954

【新書が売れない理由】

新書が売れない理由は、「質の低下」です。
雑誌の特集記事の寄せ集めのようなものが多く、読み捨て・使い捨て感覚になってしまっているのです。

以前ならば、新書で知識を吸収していました。
しかし今は、ネットやスマートフォンにより、知りたいことは手軽に「検索」するだけで済ませる人が若者を中心に増えています。

【各社の対応】

●ラクレ|中央公論新社
http://www.chuko.co.jp/laclef/

中公新書ラクレのキャッチフレーズは、「ネットより深く、スマホ並みに軽快に」。
創刊10年の節目、全面リニューアルしました。
スポーツやサブカルチャーまで幅広いジャンルを取り扱い、カバーの色や表紙、帯を一新しました。
ネットの後追いにならないように、その人ならではの体験を積んだ著書を起用することを意識しています。


●星海社新書「ジセダイ」
http://ji-sedai.jp/

今年2011年9月に創刊したばかりです。
キャッチコピーは「武器としての教養」、「20代・30代――次世代のための教養!」。
創刊ラインナップの「武器としての決断思考」は6刷18万部、「仕事をしたつもり」は5刷7万部と好スタートです。

・武器としての決断思考 (星海社新書): 瀧本 哲史
http://amazon.jp/dp/4061385011

・仕事をしたつもり (星海社新書): 海老原 嗣生
http://amazon.jp/dp/4061385038/

創刊までの1年間、競合他社を徹底的に研究し、どういう切り口で勝負するかを考えました。
結論は「新書の原点に立ち返る」でした。

新書はもともと、様々な物事を専門書よりも分かりやすく解説する「学問の入り口」としての役割でした。
星海社新書は、新書本来の役割に立ち返り、若い世代に知識・教養を分かりやすく伝えるという明確なコンセプトがあります。

※※※

本に限らず、どの業界も、流行りモノを量産する傾向にありますよね。
薄利多売じゃないけれど、ロングセラーになるような本を作ろうという傾向にありません。
ネットにある情報と大して変わらなければ、速報性のあるネットへみんな流れてしまいます。

もし、今後も内容の薄いものを大量投入するならば、電子書籍の方がマシな気がします。
それも低価格が条件。

最近は、紙の本を裁断し、スキャナーで読み取って、自前の電子書籍を作る「自炊」というのが一部の人達で流行っています。
それをiPadのようなもので読むのです。

その自炊作業を代行する業者も出てきました。
作家の東野圭吾さん、漫画家の弘兼憲史さんらが代行業者を相手取り、営業差し止めを求める訴訟を起こすことがニュースになっていましたね。

自炊をさせるのが嫌ならば、出版者が自ら電子書籍を販売すればいいのにね。
自炊業者へ依頼するお客というのは大抵、普通の人達より多くの本を購入しています。
出版社から見ればお得意様です。
自炊を制限するような事ばかりしていると、本当に買ってくれる人達を敵に回してしまうような気がします。
結局、市場縮小となり、自ら首を絞めてしまうのに。

音楽業界も一時、パソコンでのデジタルコピーを抑止する「コピーコントロールCD」が出回りましたが、ユーザーからもアーティストからも反感を招きました。
今はiPodのようなデジタルオーディオプレーヤーで音楽を聴くのが一般的になったので、事実上消滅しました。

音楽同様、書籍の世界も、電子書籍をオンライン上から購入するのが当たり前になって欲しいです。
個人的には、物凄く低価格にする代わりに、オンラインからダウンロードして、一定期間が過ぎたらファイルが読めなくなる形でも構いません。
電子書籍を購入というより、レンタルという形でしょうか。
速読派の私は、安くなるならばそれで良いです。

それに、私の親は本屋をやっていた事があるので分かるのですが、今の時代、本屋は儲かりません。
いろいろアレなんで書きませんが、もう大型書店以外は生き残りが難しいのは事実です。
ニュース等で小さなお店の成功例が取り上げられる事がありますが、それはレアなケースだからこそ取り上げられるのです。

必要な情報が書かれている本をインターネットを通じて購入し、宅配されるのを待つ。
ネットは即時性がメリットなのに、必要な情報は、宅配された紙媒体で調べるというのは、なんとも無駄な気がします。

本という形に拘る人もいるでしょうから、勿論、それもアリです。
しかし私のように、体裁なんてどうでもよくて、内容が分かれば良い人間には、電子書籍の方がメリットがあります。

来年こそ、日本でも電子書籍が普及して欲しいものです。

Posted by kanzaki at 2011年12月24日 23:55