【義眼技師】
高齢者雇用総合誌「エルダー」にて、義眼技師・水島二三郎さん(みずしまふみお・74歳)が紹介されていました。
●「義眼工房みずしま」 義眼職人、水島二三郎のページ
http://www.geocities.jp/gigankobo/
水島さんの「義眼工房みずしま」は、東京都北区王子のマンションにあります。
自宅のある神奈川県厚木市から通勤し、この工房で依頼者の相談に乗り、義眼の製造作業をします。
工房には看板を出していません。
義眼と知られたくない方もいるための配慮です。
ことさら宣伝もしていませんが、ホームページやネット上のクチコミを頼りに、年間140人ほどの依頼者があります。
水島さんは特に、子供達へ愛情を注いでいます。
「区別するわけではないけど、特に子供さんの場合は、とにかく何とかしてあげたいと思うんですよね。
お子さんの症状で悩みを抱える親御さんたちがネットで探して連絡をくれるようです」
腕が良いのはもちろんですが、笑顔の優しい「お目々の先生」と評判なので、依頼者には小さな子供達が多いです。
ガンで眼球を摘出したお子さんや、生まれつき眼球が無い子もいます。
義眼を入れたいという親子の願いは切実です。
そのため、依頼者は北海道から福岡まで広範囲です。
「骨格が成長する幼少期は頻繁に義眼を作り替える必要があります。
子供を抱えた親御さんに何度も足を運んでもらうのは時間と交通費が大変です。
だから都合がつく限り全国に足を運ぶことにしています。
年間59回前後かな。
リュックサックに道具一式を入れてね。
若い時はハイキングに熱中していたからバスの通わないところも平気。
交通費は自腹だから節約しないと(笑)」
毎月第3火曜日、このリュックを背負って、都内の帝京大学医学部付属病院へ出向きます。
月1回開設される「義眼外来」で、眼科医の診察結果をもとに無償で義眼の調整を行っています。
このように水島さんの予定は、毎日埋め尽くされているのです。
※
【義眼の製作過程】
まず、眼窩(がんか・眼球の収まる頭蓋骨のくぼみ)にシリコンゴムを入れて型を取ります。
その型に、白いアクリル樹脂を流し込み、土台の白目を作ります。
そこへ、着色したアクリル樹脂の黒目部分を埋めて、表面をコーティングし、やすりをかけて黒目を磨き出します。
色調やサイズなど微調整しながら、片方で5時間ほどかかります。
(黒目の他に白目には、微妙な赤みや毛細血管が再現されます。
磨きだし作業は、腕に粉末が飛散するので、1年を通して半袖姿で作業します)
※
【義眼技師への志】
水島さんの名前「二三郎」は、本来「文郎」と書きます。
「この仕事を本格的に専門とする義眼技師、義眼職人と称するようになってから"二三郎"と名乗るようにしました。
二男の私には、1歳下の三男がいたのですが、病気で2歳で亡くなっています。
小さな棺を囲んで、大人たちが悲嘆にくれていた光景は、今でも覚えています。
短い生涯で無念だったろうな。
そんな思いを込めた改名なんです。
この仕事、私は体力の続く限りやっていきますよ」
水島さんは、千葉県に住んでいた小学生時代から、叔父が東京で経営していた義眼製造販売の会社を何度も訪ねていました。
いつしか、白衣の仕事姿にあこがれを抱くようになりました。
高校卒業後、叔父の「日本義眼研究者」へ入社しました。
定年後も協力関係を保っています。
水島さんは、日本ではあまりやらない、眼窩(がんか・眼球の収まる頭蓋骨のくぼみ)にシリコンゴムを入れて型を取る方法が評価されています。
これは、アメリカで学んだ技術です。
結婚して10年ほどが経った40歳前半、アメリカ企業の義眼技師研修の費用を奥様が工面し、参加することが出来ました。
叔父の会社の支援もあり、その後も2年に1回は、米国義眼技工士会(ASO)の会合に参加し、技術を磨きました。
この長年に渡る熱心な取り組みに対し、2012年12月、ASO本部から日本人として稀有の表彰を受けています。
※※※
もし自分が、ドキュメンタリー写真集を作るならば、「義眼技師」を追ったものにしたいと思っていました。
そこには、子供達を温かく見守る親御さんや、職人の愛情がかいま見えるからです。
(もちろん、プライバシーを尊重したうえでです)
人が人を思いやる「心」に、職人の「技術」が組み合わさると、「笑顔」が生まれます。
こんなに素敵な社会貢献はないと思います。
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