2010年01月03日

勝間和代さん著「断る力」を読んで【1】

正月気分もそろそろ抜かないと、仕事の勘が戻らなくなりそうです。
そんな訳で、本でも読んでみることにしました。
勝間和代さん著「断る力」です。

勝間和代さんについては、神ナナで何度か書いていますし、昨年の紅白歌合戦の審査員までするぐらいの人ですから、皆さんも御存知かと思います。

人に対して自分の考えを伝え、互いにとってより良い環境を一緒に作っていくために「断る力」が必要だと書かれています。
相手も自分も大事にするために「断る」。
この日本という国の独特な社会環境において、この「断る」という行為には、かなりのリスクがありますよね。
ましてや、会社の上司からの命令に対しては、それが単なる思いつき程度の内容だとしても、真剣に取り組んで、それ相応の結果を出さなければいけない。
しかし、そもそも根幹が適当なものだから、それを成立させるために疲労困ぱいしてしまう。
組織も自分も疲労しないためには、自分の軸を持ち、生産的な提言や交渉を行う好環境を作っていこうというお話しです。

第一章では総論として、望まない事には「NO」ということを相手に伝え、適切な自己主張を行いながら、自分がすべきことに時間と力を集中しようと書かれています。

そしてその事で相手の信頼を勝ち取り、相手の依頼を全て受け入れることが出来なくても、そういう人達が私たちの応援団になってくれる仕組みを築き上げる。
その結果、私たちは、「コモディティ(汎用品)」から「スペシャリティ」になろうとの事。

相手からのリクエストや説明を鵜呑みにせず、指示に対して「断る力」がある部下とない部下では、将来の生産性が変わります。

「断る力」というのは、「自己主張をする力」。
「相手が読心術を持つエスパーでは無い限り、あなたが言葉を使って言わなければ絶対にわからない」と書かれています。
上司の考えや方針にあきれ返っても、それを説明して、変えてもらわない限り、状況は変わりません。
「断る力」を養うためには、適切なコミュニケーション能力を磨き、相手と自分の間に横たわる認識の違い、誤解、そして立場の違いを理解しあう必要があるのです。

相手の話しにただ従って作業をする方が、責任もなくて楽という考えもありますが、不条理な指示に従って不満をつのらせ、心身ともに疲労するのは、私も感心しません。

断ることで失うよりも、得られるものの方が大きいそうです。
日本は同調思考が重んじられます。
しかしそれが、海外との競争において、自己主張の弱さ、断らないことによる弊害が目立っています。
日本が年間、三万人も自殺者が発生するのはなにも、失業率の増加やセーフティネットの不備だけではなく、他者に評価を左右される体質にも原因があることでしょう。
それがうつ病の原因にもなります。

あなたが本当にしたい事が出来ない・・・その基礎になるのが「断る力」。
けれど、断るというのは、なかなか勇気が必要です。
相手に嫌われるかもしれないという心理が働くからです。
勝間さんは、すべての人に好かれる必要はないと言っています(友達の数なんて、大人になるとそれ程多くある必要はないという考えから)。
嫌われることを恐れてしまい自己主張できず、相手に対して従属意識が芽生え、リスク回避や同調行動として、流される体質になってはいけないと言っています。

「断らなく」ても嫌われることはゼロにできないものだそうです。
断る力が無い人には、どことなく卑屈な感じがして、媚びへつらう感じが拭えないからです。
ただ、嫌われるリスクを減らしたいのであれば、「なぜ嫌われるか」に対する原因分析を徹底的にする必要があるそうです。

客観的に観察するわけですが、多くの場合、全方位的に全ての人に嫌われるのではなく、ある場面であることをしようとしたら、その事がきっかけで嫌われた、という事の方が多いはずです。
その他いろいろありますが、結論としては10人中1人くらい相性が悪くても、ある程度仕方ないとします。

それより、熱狂的ファンをつくることに集中しようと言っています。
ロイヤリティの高いファンを作ることが上手な人の要素として一番大きいのは、こちらが圧倒的に憧れる個性、才能、クセがあり、私たちの代わりに何かを実現してくれることです。
私たちがどんなに時間をかけても追いつけない名人芸を有していること。
別に俳優やエコノミストみたいなものじゃなくても「企画書を書くのであれば、この人に聞くとコツが分かる」みたいなものでいいのです。
そういった能力を時間をかけて積み重ね、集中すること。
どの分野に時間を集中させるか、磨くかを早期に判断し、その分野以外についてはなるべく「断る力」を発揮して集中をしないと、ファンは増えません。

そういう継続的な努力は、強い共感を持ってもらえます。
ファンとの間にはコミュニケーションも必要。
こういう人になりたい、自分ができないことをヒーローやヒロインとしてやってくれている姿がファン作りの基礎となります。
職場でも、そういう姿勢がひいてはリーダーシップとして発揮するのです。

自分の才能を伸ばして活躍するほど、必ず周囲からの嫉妬は生じるものです。
しかし、そういうものだと割り切った方がいいのです。
自分の才能が伸びてきた証拠だと思えば、嫉妬に対するコントロールも楽になります。

勝間さんは「三毒の追放」というものを推奨しています。
「怒る、愚痴る、妬むことを止めること」です。
その中でも自分が妬むこと、嫉妬をしなくなれば、逆に嫉妬されても全く気にならなくなるそうです。
そうやって、慣れてしまいましょう。

相手から悪意を持たれた場合ですが、その奥底にあるバックグラウンドを理解して、相手をプロファイリングしましょう。
そして相手がこちらに悪意を持つ動機があったとして、その問題は労力とコストを使って解決すべき問題なのか考えます。
別に解決しなくてもよい問題ならば、嫌われたまま放っておけばよいという割り切りが大切です。

私たちが相手からどのように対応して欲しいか、取り扱って欲しいかは、私たちの言動が相手に教えているそうです。
相手の下手に出るような行動を繰り返していると、相手はそのとおり下手に扱ってしまうものなのです。
そんな事で貴重な体力、労力を相手に浪費されることは避けるべきです。

「断る力」を身につけるには、相手との「対等」な人間関係が必要になります。
発注先と受注先、上司と部下、夫と妻等・・・立場と役割の違いはあっても、本来上下関係があってはいけません。
相手との関係性を健全に保つには、「対等な人間関係」が前提となります。
この「対等概念」を身につけることが、断る力の第一歩となります。


続きます。

●勝間和代さん著「断る力」を読んで【1】
http://kanzaki.sub.jp/archives/001993.html

●勝間和代さん著「断る力」を読んで【2】
http://kanzaki.sub.jp/archives/001994.html

●勝間和代さん著「断る力」を読んで【3】
http://kanzaki.sub.jp/archives/001996.html

●勝間和代さん著「断る力」を読んで【4】
http://kanzaki.sub.jp/archives/001997.html

Posted by kanzaki at 23:31
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