2010年02月08日

NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【4・会社とのつながりを失った人々】

前回の続きです。


●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【3・薄れる家族とのつながり】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002017.html


3万2千人の無縁死。
取材を進めて行く中で、無縁死は将来、更に拡大する兆しがあることが分かってきました。
今、頼れる家族たちがいない人達が、NPOの窓口に殺到しています。
家族に代わり、亡くなった後の手続きを行うNPOがここ数年、相次いで設立されています。
死後の葬儀や納骨、遺品整理等をしてもらう生前契約を結び、入会金を納めます。
生活にある程度余裕のある人達でも、一人暮らしに不安を抱えてやってきます。

取材したNPOは、設立から8年。
年々会員は増え、今年は四千人近くまでになりました。
最近では、定年退職前の50代で入会を決める人もいます。
取材班は、50代で入会した一人の男性に会うことにしました。

58歳の時にNPOに入会した高野藤常さん。
高野さんは定年退職した途端、唯一の社会との接点を失いました。

●会社とのつながりを失った人々/無縁社会

リストラや非正規雇用の増加。
そして団塊世代の大量退職。
会社との繋がりを失った時、何が起きているのでしょうか?

NPOに入会した高野さんは、一人孤独に死にたくないと、東京の小平市にある有料老人ホームに暮らしています。
50代で熟年離婚。
老人ホームに来たのは、定年退職してすぐの事でした。
頼れる家族のいない暮らしです。

高野さんは高校卒業後、大手都市銀行に就職しました。
会社中心の42年間の生活。
殆どが、人間関係で築いた人間関係でした。

高野さんは今も、勤めをしていた頃の大量の名刺を所有しています。
営業の現場を渡り歩いていた当時の取引先の名刺の数々。

高野さん
「本当に息をつく暇もないというか、食事が出来ないという感じです。
毎日帰宅が、2時3時でした」

仕事時代の思い出を振り返る毎日の高野さん。
高野さんは取材班に、「三菱の100年」という本を見せました。
その書籍のとあるページにある写真。
大きなコンピューターの前に立っている若き日の高野さんが写っていました。
その大きなコンピューターは、アポロを上げたコンピューターなのだと嬉しそうに説明してくれました。
アポロがあがった時にどう思ったかの問に、「おれは三菱だという感じなんですよね」と返しました。

彼は仕事で無理を重ねた結果、40歳で体を壊しました。
糖尿病なので、老人ホームのスタッフが部屋に運んでくる食事は一日三食、厳しく栄養管理をしています。
食事と一緒に、「うつ」の薬も運ばれてきました。
仕事のストレスからうつ病にもなったのです。
そして、それは今も完治しておらず、確かに目の動きや歩き方等に挙動不審なところが見えます。

高野さん
「今考えたら、あんなに仕事をして、おかしいんじゃないかと思う。
全部自分にツケが帰ってきたという感じです。今みたいな形で・・・」

家庭より仕事。
50歳で熟年離婚。
息子と娘は妻が引き取りました。

「これは私の宝物ですからね」と言って取材班に見せたのは、ポケットから出した鍵。
その鍵には、小さな金属製のプレートが付いています。
小学校の修学旅行で息子が買ってきたキーホルダーのお土産です。
「FUJITSUNE TAKANO S.59.8.10」と刻印が打ち込まれています。

会社にはもう行く必要がない。
社会との接点を失った・・・。
高野さんは仕事をやめるまで、自分の家族や人生をかえりみることはありませんでした。

この日、退職して以来はじめて、自分の両親のお墓参りをしました。

高野さん
「(両親の墓を見ながら)もちろん子どもがいて孫を抱いて、そういう生活が一番の希望だった。
家族団らんですよ。
昔わたしがね、ひとりで銚子に行ったのよ。
銚子に行った時、お年寄り夫婦がね・・・(間をおいて唾を飲み込む。ゆっくりと震えた声を押し出す)・・・座って、尺八を吹いているんだよ(涙が出てくる)。
私も、ああいうふうになりたいと思っていたのよ・・・」

家族より会社を優先に生きてきた人達。
家族との繋がりをなくし、会社との接点を失った時、無縁化する姿が見えてきました。

*****

ここは名古屋市の中心部にあるNPOの合同墓地。
普通の墓より一段高い場所に、巨大な石で作った箱型の墓が二つあります。
それには扉が付いており、中を開けると、沢山の骨壷が納められていました。

この墓を生前に予約している人が既に一千人。
今も増え続けています。
その中で最近目立ち始めたのが、独身のまま一生を過ごす「生涯未婚」と呼ばれる人達です。

(続く)


いやあ、今回も切ないケースでした。
妻も子供もいて、しかも大手に勤めていたのだから給料もいい。
しかし、そんな人なのに、過度の労働で体を壊し、妻とは離婚し、子供たちとも引き離され、寂しい一人暮らしをすることになった・・・。
真面目に生きてきたのに、どうしてこんな結末になったのでしょうか?

家庭と仕事のどちらを優先するかと言われれば、給料をもらわなければ生きていけないのだから、やはり仕事を優先してしまう人が多いことでしょう。
最近の調査で、若者達が恋人との約束と、急な仕事とどちらを優先するかとの質問に、仕事と答えた人の方が圧倒的に多かったのを記憶しています。

終身雇用、年功序列にも賛成の若者たちも多い。
これはやはり、大学を卒業しても就職が困難な時代だからでしょうかね。

私も定年まで、まだまだ長い道のりです。
今の仕事をやめてしまったら、転職は相当困難でしょう。
仮に転職ができたとしても、給料が下がったり、待遇が以前より悪くなる可能性の方が高いです。
だから仕事上、辛いことがあったとしても、無理して頑張らなければいけないと思ってしまいます。
それが、ストレスやうつ病、自殺等につながるのも分かってはいますが、どうしようもありません。

経済評論家であり公認会計士でもある勝間和代さん。
彼女が言うには、一つのところから収入を得ている状況が、長時間労働、心身の故障につながる原因だと言っています。
収入が、会社からしか得る手段がないから無理をしてしまう。
しかし、別の副業(投資等)があることによって、精神的にゆとりが出ると言っています。
今の経済状況からすれば、勝間さんの勧める投資信託等も、私にはちょっと危険な感じがします。
しかし、複数の手段で収入を得ることで、精神にゆとりを持たせるという考えには賛成です。

私の場合、残念ながら複数からの収入がある状態ではありませんが、こうやってサイト更新をしたり、写真を通じて地元の人達と交流が出来る事も、精神のゆとりにつながっているように思えます。

仕事一筋人間の終着が、必ずしもグッドエンディングだとは限らない事が判明した以上、自分自身、いろいろと生き方に幅をもたせた選択をしようと思いました。


●次回の記事: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【5・"生涯未婚"の急増】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002019.html


*NHKスペシャル無縁社会(全6回)

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【1・行旅死亡人(こうりょしぼうにん)とは】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002015.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【2・身元不明の死】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002016.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【3・薄れる家族とのつながり】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002017.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【4・会社とのつながりを失った人々】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002018.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【5・"生涯未婚"の急増】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002019.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【6・希望の光】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002020.html

Posted by kanzaki at 01:04
Old Topics