2016年03月20日

ニセモノは社会のスパイスだと思いますよ〜ショーンKさんで話題なこのタイミングで、日経に「開運!なんでも鑑定団」でおなじみの中島誠之助さんのインタビューが載っています

3月19日付の日本経済新聞にて、「開運!なんでも鑑定団」でおなじみの中島誠之助さんのインタビューが載っていました。


この一週間、ショーンKさんに関することで、ネットもテレビも話題になっていましたね。
そんなタイミングで、鑑定家へインタビューというのが、日経らしい変化球的な皮肉です。
本文中で、「ニセモノは社会のスパイスだと思いますよ」と語っているのがまた面白い。


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●中島誠之助さん:

古美術鑑定家。

『開運!なんでも鑑定団』(テレビ東京)に鑑定団の鑑定士としてレギュラー出演。

たとえ鑑定した結果価値の低い物であっても、意匠などを褒め「大事になさってください」と依頼者に語りかけるなど、細やかな心遣いを見せる。

決めセリフの「いい仕事してますね」で1996年度の「ゆうもあ大賞」を受賞。

この決めセリフは鑑定以外の様々な場面やゲスト出演時にリップサービスとして良く使われ、中島誠之助の代名詞と言える。


●Amazon.co.jp _ ニセモノ師たち (講談社文庫) _ 中島 誠之助 _ 本
http://www.amazon.co.jp/dp/4062751372

●Amazon.co.jp: ニセモノはなぜ、人を騙すのか_ (角川oneテーマ21 C 135)_ 中島 誠之助_ 本
http://www.amazon.co.jp/dp/4047101060/



【記事の中で印象に残っているもの】


・「絹着てボロ着て木綿着ず」:
ゆとりのあるときは絹服を着るけれども普段はぼろでいいわけだよ。
木綿が悪いわけではなくて、中途半端な暮らしをするなってこと。
メリハリのきいた暮らしをして自分を高度に保っていると見る目が違ってくる。


・大切だと思うのは世間に名を博した人、偉い人とはなるべく謦咳に接しておくこと。
(謦咳:けいがい。尊敬する人に直接話を聞く。お目にかかる)


・100点の品物があれば90点はニセモノ。
だけどもニセモノがあるから面白い。
ニセモノに引っかかりたくないから勉強するんだ。
ニセモノは社会のスパイスだと思いますよ。


※※※


中島誠之助さんは自身の著書にて、「いい仕事をしている」というのは、一心不乱に作る純粋さ、誰にも真似のできない世界のことだと書いています。
大切なのは、他人が見ていようがいなかろうが、与えられた仕事に夢中で真面目に取り組んでいくこと。
一番いけないことは、「バレなければいい」という態度。


私は日本画を描いています。
描くことでその時間、夢中になれます。
終わると、「あ〜、楽しかった」と思えます。


美術って、それでいいんじゃないのかなと思っています。
鑑定・批評は他人がすること。
自分には関係ない。
一生懸命やって、それが評価されたなら、そのまま素直に受け取ればいい。
大喜びするんじゃなくて、微笑む程度に。


国語のテストで、「この文章で、作者が言いたいことはなんでしょうか?」という質問がよくあります。
その回答を見て、作者本人が「そんなこと思ってないよ」ということが多々あります。
宮本輝さんが、小説「彗星物語」でそのことを皮肉っていましたね。


今の日本は、現代作家による美術・芸術が正しく評価されにくい時代だと思います。
仮にメディアに取り上げられても、その作品そのものが良いからではなく、作家が美人だったり、イケメンだから。
雑誌に、ルックスの良い作家の写真と、さもそれらしい文章が書かれていると、「あ〜、すごいのかなあ」と普通の人は思います。


そして、ひとたび何かしらボロが出ると、一斉にメディアが叩く。
その繰り返し。


だから本当に一生懸命に取り組んで、すごい作品を長く作っている人に限って、メディアとは少し遠ざけているように思います。
そして、「芸術の世界」という閉鎖した世界だけで活動している。
なぜなら、その作品の対価を本当に払ってくれる人は、「芸術の世界」にいるから。
そうすると、美術・芸術はますます一般の人とは縁が薄くなる。


メディアのお誘いにのる人は少なく、その中で「見栄えのする人」というのは、さらに少ない。
その数少ない人をたくさんのメディアが一斉に報じる。
そして、ひとたび何かしらボロが出ると、一斉にメディアが叩く。
その繰り返し。
そりゃあ、それなりに見識のある人なら、メディアを遠ざけますよ。
せいぜい、最初だけ世間に顔を売るのに利用するぐらいです。


今の時代、美術・芸術というのは、「鑑賞・見る」ではなく、誰もが「作る・創る」時代ではないかなと思います。
クオリティが高いか低いかは関係ない。
他人の評価なんてどうでもいい。


実際に、自分が体験する時代ではないかと。
道具は、どこにいてもネットで買えます。
体験できる教室もあります。
ひとときを夢中になって過ごす。
それが一番大切で、美術・芸術と接する有意義な暮らし方ではないでしょうか。

Posted by kanzaki at 15:42
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