2016年04月13日

「コンビニコーヒーは、なぜ高級ホテルより美味いのか (川島 良彰 (著))」〜BS日テレ「久米書店〜ヨク分かる!話題の一冊〜」【2】

前回の続きです。


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●前回の記事: 「コンビニコーヒーは、なぜ高級ホテルより美味いのか (川島 良彰 (著))」〜BS日テレ「久米書店〜ヨク分かる!話題の一冊〜」【1】
http://kanzaki.sub.jp/archives/003579.html

●コンビニコーヒーは、なぜ高級ホテルより美味いのか (川島 良彰 (著)-ポプラ新書)
http://www.amazon.co.jp/dp/4591146928

●BS日テレ - 「久米書店〜ヨク分かる!話題の一冊〜」番組サイト
http://www.bs4.jp/kumebook/



・「コーヒーベルト」:
赤道から上に25度、下に25度。
この50度の間でコーヒーは採れます。
発展途上国が多い。
消費するのは主に先進国。
生産するのは主に発展途上国。
ワインと違い、フェアなトレードが出来ていないのが現実です。


・価格が暴落した時、可哀想な生産者の話しをよく聞きます。
実際に産地へ行くと、価格が暴騰したとき、生産者は裏切ります。
契約して、時期や値段が決まった後に、ニューヨークの相場が吹くと、いろんな理由を言ってふっかけます。
暴騰すると、可哀想な輸入・焙煎業者が出るのです。


・だからこそ、sustainable(サステナブル:維持できる、持続できる)なコーヒー流通を作りたかったのです。
どうするかというと、「品質に対する対価を払う」のです。
貧しさに対する対価ではありません。
良いものを作ったから、それに対する対価を払うのです。


・買う側(消費する側)が良いコーヒー、悪いコーヒーの見極めができるようにならなければ、正しい対価を払えませんよね。
日本はまだ、焙煎至上主義だったり、ラテアートだったり、そういうのに重きを置いています。
本当に大切なのは、「豆」なのです。


・豆を挽く前に、欠けている豆を取り除くだけでだいぶ味が良くなります。
ちなみに、「粉」ではなく、「豆」で買ったほうが良いです。
粉だと、欠けている豆がもっとたくさん入っている可能性があるからです。
同じコーヒー豆でも、豆と粉だと、同じ量でも粉の方が大抵は安いです。
豆だと、見ただけで欠けているとか分かってしまうからです。


・JALのファーストクラスで、頂点の美味しいコーヒーを出したいというオファーがあった。
上空1万メーターは、85度までしかお湯の温度が上がらないという難しい環境です。
しかも狭い場所で、CAの誰でも美味しい味にする必要があります。
その為、実験を何回も行いました。
羽田〜沖縄間で、抽出したコーヒーを5分おきに、温度と味の変化のデータを取りました。
実現までに半年以上かかりました。
結果、JALが予想した量の5割り増しでお客様が消費してくれるようになりました。
さらにうれしいのは、砂糖とミルクの量は、以前から増えていないことです。
みんなブラックで、コーヒーの純粋な味に喜んでいるのです。


・生産国では、おいしいコーヒーは飲めません。
中南米のほとんどの生産者は、品質の高いものを販売し、自分たちが飲むのは、売れ残った豆です。
キリマンジャロやケニアで有名な東アフリカの生産国は、元々イギリスの植民地だったため、コーヒーよりも紅茶を飲む文化が根付いています。
おいしいコーヒーを知らなければ、おいしいコーヒーをつくることはできません。
川島さんが生産者を訪ねる際に持参するお土産は、彼らが作り川島さんが製品にしたコーヒーです。
抽出器具も持参し、彼らに飲んでもらうと「おいしい」と驚き喜んでくれます。
これも、コーヒー生産者と消費者をつなぐ架け橋としての川島さんの役目なのです。
現在、タイやルワンダ、コロンビアなど生産国で技術指導をしているのも、コーヒーで彼らの生活が豊かになることを望んでいるからなのです。


・世界の生産量の30%以上を占めるブラジルの天候次第で、世界のコーヒー相場は大きく変動します。
しかも現在、円安です。
為替相場も大きなファクターになります。
今後、輸入価格があがれば、100円のコンビニコーヒーも値上げを強いられる可能性があります。
利益を減らしても料金は据え置くか、コーヒーの粉の量を減らすなどして対応するかの選択を迫られることがあるかもしれません。
コンビニコーヒーの6割超を占めるセブンカフェは、2015年度の販売計画は前年比2割り増しで8.5億杯を見込んでいると言われています。
計算しやすいように、消費税を考慮せず単純に100グラム100円の豆を使っていると仮定します。
1杯当たり10グラム使っていたのを1グラム減らすと、1杯当たり100円÷100=1円。
1円×8.5億杯=8億5000万円の節約になります。
重量では、850トンの節約になります。
だからといって、原材料のコスト削減のためにコーヒーを薄くするわけにはいきません。
味を薄くしないためには、焙煎度合いを変えるか、豆を細かく挽くなどの工夫が必要になりますが、当然、味は変わってしまいます。
その上、コーヒー豆の量や挽き方を変更するには、全国の店舗に設置された抽出器を一斉に調整するコストが掛かってしまいます。
今後、国際価格が上昇し、さらに円安が進めば、1杯1円の原材料費を抑制するコストと、抽出器の調整に掛かるコストを天秤にかけ、頭を悩ますことになるかもしれません。
ここまでコンビニコーヒーというマーケットを作ったのですから、品質を落としてほしくありません。


・どこのコーヒー屋も、「うちは最高級品」と言います。
誰も、上から3番めとか言いません。
みんなが最高級品といっているのはおかしい状況です。
その点、ワインは違う。
高級レストランなら、それ相応のワインリストが並ぶ。
中級レストラン、若い人向けなら、その価格帯にあるおいしいものを出しています。
コーヒーの場合、極端な話し、同じコーヒーがコンビニでは100円で売られ、喫茶店で400円で売られ、レストランでは800円売られ、ホテルでは1200円で売られます。
これって、消費者に対する裏切りだと思っています。
1200円とるなら、それなりのコーヒーを使わなければいけない。
そういう良いコーヒーをどんどん、みなさんに知ってもらいたいです。


※※※


「品質に対する対価を払う(良いものには、それ相応の対価を支払う)」


当たり前のはずなのに、この20年の不況で、すっかり忘れられてしまいました。
安くて、そこそこのものばかりが溢れた日本。


正直、私自身が「安くて、そこそこのもの」で満足しているのは事実です。
そういう人が多いのではないでしょうか。


きっと、この不況・低迷は、そういう考えが根底にあるからかもしれません。
コンビニコーヒーのヒットも、それが要因でしょうしね。


こんな停滞した時代ですが、「品質に対する対価を払う」という言葉に相応しい人・会社は、疲弊せずに生き残るのでしょうね。

Posted by kanzaki at 22:03
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