2019年08月25日

『外資系コンサルの知的生産術 プロだけが知る「99の心得」(山口周さん)』〜「思考技術」のトレーニングではなく、具体的に手や足をどう動かすかが大切

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どんなにピカピカの学歴を持った頭脳優秀な人材でも、「動き方」を知らないとまったく知的成果を生み出すことができない、ということです。 こういった人たちに対して何より必要なのは、「思考技術」のトレーニングではなく、具体的に手や足をどう動かすか? という「行動技術」、つまりは「心得」のトレーニングなんですね。 (本文より)


私が気になった部分をご紹介します。
一つ一つのエッセンスに頷けますよ。
一本道の川の流れのような構成ではないですが、読んだうえで仕事に向き合うと手助けになりますよ。

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・「よい質問を作るコツ」は、「紙に書き出す」こと:
日常生活の中で質問文を最後まで言い切ることはなく、途中で質問の受け手側にゆるやかにバトンを渡すように語尾を露消させている。
とにかくはっきりさせたい論点が明確なのだから、質問も明確にしておく必要がある。


・「青い鳥を探さない」:
解こうとしている目の前の問題について、答えはこの世に存在しない。
それを解けるのはその問題に直面している自分自身なのだという覚悟を、特に知的生産に関わる人であれば持つ必要がある。


・「とにかく、なんとかする」という意識を持つ:
情報収集する心がけとして「ありません」「できません」とは絶対にいってはいけない。
とにかくなんとかする、逆立ちしてでもひねり出してみせる、という気構えを失わないこと。
コンサルファームに入社してから足踏み状態で止まる人は、「知的な粘りがない」。
過去の研究から、イノベーションのほとんどは「思いついた人」ではなく「あきらめなかった人」が実現している。


・「長く考える」のではなく「何度も考える」:
長く考えるより、短く何度も考える方が突破口を見つけやすい。
せいぜい5分程度の思考を、時間と場所を変えて繰り返し行う。
知的生産の総量が、結局のところ思考の総量に比例することは否定しないが、思考の総量は「考える時間」の量よりも「考える回数」の量によって決まる。


・紙に書き出して並べてみる:
一次情報から洞察や示唆を引き出す際の作業場のコツは、「紙に書き出して並べてみる」ということ。
スタイルはなんでも良くて、「書き出す」という行為そのものに意味がある。
自分では思いもしなかった情報の組み合わせが生じ、それが新しい洞察や示唆いつながる。
そして、書き出すのは別に「答え」でなくて構わない。
脳のやる仕事の一部を紙に代わってもらうというイメージ。
考えている過程そのものを書き起こすという感じ。
それを繰り返しているうちに「紙から答えをもらう」瞬間が出てくる。


・「Less is more=少ないほどいい」と知る:
アウトプットの心得は「レス・イズ・モア=少ないほどいい」という価値観。
建築やデザインの世界では大変有名な言葉。
理由を一言で答えれば「効率がいいから」。
ビジネスにおける知的生産は最終的に「望ましい行動を起こさせること」を目的にしている。
行動を起こさせるためにはメッセージが明快に伝わる必要があり、メッセージを明快にするためには余計な情報をできる限りそぎ落とす必要がある。
だから情報は「Less is more=少ないほどいい」。


・質問には答えず質問で返す:
「質問に答えてはいけない」というアドバイスの理由は単純で、顧客が質問するとき、それが本当の意味で質問であることは滅多にないから。
相手が質問しているとき、それは質問という名を借りた反対意見や懸念の表明であるケースがほとんど。
本当に完璧な知的生産物であれば顧客から出てくるのは感嘆符と感謝の言葉だけなので、質問は出てこない。
もし質問が出されているなら、それは知的生産物に欠陥があったということ。
したがって、質問が出た際には、その質問の背後にある真意、つまりその質問は「どのような欠陥を指摘しているのか」をくみとる質問を、逆にこちらからするべき。
質問には回答せず、逆に質問で返すことでより良質なインプットが得られることがある。


・知的ストックで創造力が高まる:
創造力を高める有効な手段の一つとして多くの人が指摘しているのがアナロジーの活用。
アナロジーとは、異なる分野からアイデアを借用するという考え方で、わかりやすくいえば「パクリ」。
スティーブ・ジョブズは、創造というものが「新しい何かを生み出すこと」ではなく、「新しい組み合わせを作ること」でしかないと指摘している。
高いレベルの創造性を発揮した人物の多くが同様の指摘をしている。
そして、アイデアの質はアイデアの量に依存する。
量が質に転化するのが、アイデアの面白いところ。


・常に「問い」を持つ:
日常生活の中で感じる素朴な疑問をメモしてみる。
手帳でもカードでも、使う道具は好み。
大事なのは「ふっ」と思った疑問や違和感をしっかりと言葉に認める、その瞬間の気持ちをうまくすくい取れるような道具を使うこと。


・独学する:
クオリティの高い知的生産には継続的なインプットが必要。
その際、「では学校で」と考えるだけではなく、まずは「仕事を通じてよい学びを得る」、あるいは日常生活の中で「独学でよい学びを得る」ということを意識してみる。


・冷蔵庫ではなくイケスを作るイメージを持つ:
最大のポイントは、記憶に頼らないという心構えを持つということ。
「インプットした情報をストックする」と聞けば、多くの人は「インプットされた情報を脳内に記憶する」ことをイメージする。
しかし、これは大きな勘違い。
脳内の記憶だけに頼って知的生産を行うとアウトプットはとても貧弱なものになってしまう。
そこで、イケスを作って、そこに情報という魚を放す、というアプローチ。
必要な情報はイケスの中にいるわけだから、詳細まで全部記憶する必要はない。
関連キーワードやコンセプトをイケスに紐づけておき、必要に応じて、そのイケスから検索できればそれで十分。


・情報という魚を選り抜く:
まず本を読んで、気になるところは必ずアンダーラインを引く。
本を汚すのが嫌かもしれないが、アンダーラインを引くという行為を抜きにしたら、イケスの構築はできない。
アンダーラインを引きつつ一冊の本を読了したら、アンダーラインを引いた箇所のうち、どこをイケスに放り込むかを選別。
イケスに放り込むのは九つまでとする。
なぜかというと、あまりに多いと、アンダーラインを書き写すという作業そのものに嫌気がさしてしまうから。
筆者の場合、転記先の記録媒体としてエバーノートを用いているので、単純にエバーノートに新規のノートを設定し、そこに書籍名と先ほど選り抜いた九ヶ所のアンダーラインの主要部をパチパチと転記している。
そもそも選り抜きを転記する最大の目的は「忘れる」ため。
イケスにテーマを設定して自分なりの「引き出し」を用意することで、情報に対する感度が高まる。

Posted by kanzaki at 18:04
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