2019年11月13日

助詞、助動詞、接続詞に意識して読むと、作者の考えに触れやすくなります〜「本の読み方 スロー・リーディングの実践 (著・平野啓一郎)」

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本はどう読んだらいいのか?
速読は本当に効果があるのか?
闇雲に活字を追うだけの貧しい読書から、深く感じる豊かな読書へ。
『マチネの終わりに』の平野啓一郎が、自身も実践している、「速読コンプレックス」から解放される、差がつく読書術を大公開。


「スロー・リーディング」でも、必要な本は十分に読めるし、少なくとも、生きていく上で使える本が増えることは確かであり、それは思考や会話に着実に反映される。
決して、私に特別な能力ではない。
ただ、本書で書いたようなことに気をつけながら、ゆっくり読めば、誰でも自ずとそうなるのである。
(中略)
読書は何よりも楽しみであり、慌てることはないのである。
(「文庫版に寄せて」より)


この本で感心したのは、「助詞、助動詞に注意する」「接続詞に印をつける」です。



【助詞、助動詞に注意する】


文章のうまい人とヘタな人との違いは、ボキャブラリーの多さというより、助詞、助動詞の使い方にかかっている。
動詞や名詞を生かすも殺すも、助詞、助動詞次第である。


助詞や助動詞が不正確な文章は、留め金がゆるんだ建物のようなもので、いくら建材(ボキャブラリー)が賛沢でも、見た目にも、また安定性という観点からも、大いに難アリである。


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誰でも知っている通り、「私はリンゴが好きである」という文章と、「私はリンゴが好きではある」という文章とでは、ニュアンスに差がある。


前者ははっきりとした断定であり、後者はそれよりも、若干の留保が感じられる言い回しだ。


この見落としは小さくない。
前者には、リンゴを贈って素直に感謝されるだろうが、後者には、恐らく別のもののほうが喜ばれるだろう。


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文章がうまくなりたいと思う人は、スロー・リーディングしながら、特に好きな作家の助詞や助動詞の使い方に注意することをおすすめする。


リズムがガラリと変わるし、説得力も何倍にもなる。
また、メールのような短い文章を書くときにも、助詞や助動詞への配慮は、相手への印象をまったく違ったものにするだろう。


※※※


【傍線と印の読書:接続詞に印をつける】


赤ペンや蛍光ペンで線を引きながら、教科書や参考書を読んだ人も多いだろう。
理由は、そのほうが内容がよく頭に入るからだ。


スロー・リーディングをするときも、気になる箇所に線を引いたり、印をつけたりする習慣をつけておくと、内容の理解が一段と深まる。
特に、難しい本を読むときに有効だ。


大切だと思う部分に傍線を引く。
どういう印をつけるかは気にせず、感情の赴くままで良いだろう。
要は、印をつけるという行為が重要なのだから。


傍線内外で、キーワードになりそうな言葉は、丸や四角で囲んで、特に強調しておこう。
必要ならば、書き込みをする。
ノートやカードにページ数と行数とを書いて、考えたことをまとめておくのも有効。


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これは教科書や参考書などではやらなかったことだろうが、接続詞に印をつける。


特に注意すべきは、「しかし」だ。


一般的に、「しかし」という接続詞の前後は、「最終的には否定されるべき考え(多くは、世間で了解されている常識的見解)」→「しかし」→「作者の意見」という文章の組み立てになっている。


「人は〜と言うだろう。しかし、実際には〜じゃないのか」といった具合である。


だから、「しかし」という接続詞が出てきたときには、そのすぐあとの部分に注目すると、作者の主張がよく理解できる。


それが、視覚的にすぐに分かるように、「しかし」をたとえば<>(←→のイメージ) で囲んでおけば、ページの中の論理構造が一目で確認できるようになる。


もちろん、「だが」や「が」「けれども」「しかしながら」といった逆接の接続詞は、すべて同じように考えてよい。


また、「第一に/第二に」や「一つに/また一つに」「そもそも/加えて」「まず/ それに」などは、並列的(あるいは補助的) に事実を列挙した部分であるから、やはり〇などでチェックしておくと、論点を整理し、かつ網羅できる。


その他、「そして」のような論理展開を示す接続詞、「だから」という結論を導く接続詞などを、気にとめながら読む習慣を身につけると、漫然と文章を辿っていくだけでなく、ページをその都度、チャート化しながら把握してゆくことができる。


スロー・リーディングは、速読のように、ページの全体を視覚的に網膜に焼きつけるなどという方法は否定し、あくまで−語一句を逃さず文章を辿っていく読み方だが、その内容を頭の中で整理し、理解を定着させるためには、論理構造を視覚的にイメージするというのもひとつの手段である。


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ある文章を読み、大事だと思って傍線を引き、印を付けるということは、結果としてその部分を二度読んでいることになる。
そして、全体をチャート化し、論理構造を視覚的に確認する。
さらに、再び本のページを開いたときには、どこが重要で、どういう議論の運びになっていたかを、それらを頼りに思い出すことができる。
これが、「傍線と印の読書」のメリットだ。


(試みに、練習がてらに、今の「ある文章を〜メリットだ」までを、傍線と印をつけながら再読してみよう。
チャート化の分かりやすさを実感できるはずだ。)


※※※


単語より、助詞、助動詞、接続詞に意識して読むと、作者の考えに触れやすくなるのですね。
はじめて知りましたよ。
今まではあいまいにしていたので、気を付けたいと思います。

Posted by kanzaki at 22:15
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