2021年03月24日

「アウトプットイメージ作成アプローチ」とは〜複数のプロジェクトを抱えた管理職が、部下へ的確に全体像と流れを伝えるのに有効ですよ

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上司が部下に対する姿勢とか、教育指導法みたいなものは、本屋にたくさんあります。


ところが日本の書籍の殆どが、「根性論」になっています。
実際、日々の仕事の中でも、それを感じますね。


殆どの上司は、仕事を指示する際の「全体のイメージ」と流れの伝え方を知りません。
上司がそんなですと、部下は無駄な模索時間を費やしてしまいます。


良い解決法として、「アウトプットイメージ作成アプローチ」というものがあります。
マッキンゼーに在籍していた著者の考案です。


特に、複数のプロジェクトを抱えている管理職は参考になると思いますよ。


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●『世界基準の上司 (中経出版)』(赤羽 雄二 著)より


【アウトプットイメージ作成アプローチで成果を出させる】


最初に全体像を示す「アウトプットイメージ作成アプローチ」とは、部下に書類・資料作成等を指示する際、最初に完了時のアウトプットイメージをページ数等も含めて詳細に書いて示し、その後きめ細かくフォローしていくアプローチのことを言う。
マッキンゼーで多くのプロジェクトを並行して進める際、私が編み出して命名した。


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アウトプットイメージ作成アプローチでは、25ページほどの企画書であれば、上司自身が表紙、目次、各ページ(メッセージと、下に何を書くか)を30分程度でざっと書き、ページも振って、極力完成形に近いイメージにする。
中はすかすかでも全くかまわない。
ただし、章構成、ページ数、ページ配分、ページごとのメッセージ等はきっちり書く。


そのコピーを部下に渡して説明し、すり合わせする。
質問にも全部答えて必要に応じて修正する。


部下はこれをガイドラインとして仕事を進めつつ、頻繁に上司からインプットを得て、短時間で仕上げていく。


上司の意図が書いた紙(=アウトプットイメージ)で最初に明確に伝わっており、ページ数などもほぼ決まっているので、部下が余計な心配をしたり、上司の意図を当てずっぽうで推測したりする必要がなく、本当に大事な部分に集中して検討を進めることができるので、上司も楽で、部下も過大なストレスなく資料を完成させることができる。


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アウトプットイメージ作成アプローチが何と言ってもよい点は、このプロセスで部下が大いに成長することだ。
全体像が最初からはっきり見えて無駄なく仕事に集中でき、過大なストレスを感じずに成果を出すことができる。
何もわからず情報収集に膨大な時間をかけたり、上司の意向がわからず、確認もできず迷走したりすることがなくなる。


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なぜ30分か。


私がこの方法を始めた時、もう少し時間をかけていた。
ところがプロジェクトが5個以上走っている時にさらに何個も立ち上がると、準備が到底間に合わない。
急ぎに急ぎ、切り詰めていった中で落ち着いたのが30分だ。


30分あればおよそどのようなものでも何とかなるということを何度も体験し、確認できている。
一方、どんなに急いでも、10分や15分では、作成する資料のタイトル、目次、各ページのメッセージと表現方法を考え、目次を再考し、場合によってタイトルも若干見直しし、それによって目次をまた微修正し、各ページのメッセージと表現方法を若干見直し、場合によっては数ページ足すことまではとてもできない。


当然ながら、アウトプットイメージ作成アプローチは、ものすごく頭を使う。
即決即断が必要になる。まさに拙著『ゼロ秒思考』で詳しく述べた頭の整理と深掘りが必要になる。


あらゆる課題を考え、知識と知恵を総合し、目的に合った書類・資料の最終形をイメージして部下に伝えるので、部下が助かるだけではなく、実は、アウトプットイメージを作成する上司自身が大いに育つ。
やるたびに自分の力が顕著に上がっていくのを感じていただけると思う。


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「部下に任せきらないと成長しない」というふうに考えている上司が多いと思うが、部下は上司の何分の一の情報しか持っていない。


上司が十分に共有していないのが最大の理由だが、部下は経験がない以上に、適切に情報を与えられていないので、判断がしづらい。
成長、という以前の問題だ。


資料・書類を作成する際、上司に頻繁に質問すると仕事ができないやつだと思われるのではないかと心配で、何とか自力で進めようとするのが普通だろう。
情報が足りない中で、無理やり推測して検討を進めるので、いいものができないし、生産性も低い。


そういうあまり意味のないストレス下で人が育つとは思いづらい。
育つのは、もっと知的にチャレンジする、深い洞察力に触れる、前向きな苦労の末に何とかやり遂げて成功体験を得る……という実体験からではないのか。


根性論は、少なくとも今の世の中にはあまり通用しない。

Posted by kanzaki at 07:00
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