2021年07月18日

「竜とそばかすの姫」を観た感想〜この作品は是非「夏(夏休み)」に観て欲しいです。学生時代の、あの頃の「成長」を思い出せるかも

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●「竜とそばかすの姫」公式サイト
https://ryu-to-sobakasu-no-hime.jp/


『竜とそばかすの姫』予告2


millennium parade - U


細田 守監督作品を劇場で観たのは「時をかける少女」以来です。


本作品は、夏に「金曜ロードショー」でオンエアされる定番作品となりそう。


歌を主軸にした作品って、本編を忘れても歌は記憶に残りますからね。
映像の美しさも相まって、子供の頃に観たら、大人になっても忘れない作品になるのじゃないかなあ。


なんとなく細田監督作品って、夏が似合うイメージ。
学生時代の夏って、成長とか変化に相応しい季節ですよね。


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●最初っから、映像も音楽も出し惜しみしません。
「U」という仮想現実の世界で、ヒロイン「ベル」が歌うシーンは圧巻ですよ。
ここまで歌とファンタジーとSF(デジタル)を融合し、尚且つ万人向けに表現したものはそうそう無いと思います。


その後も、要所要所の大切なシーンは、歌と美しい映像で表現されています。
これはストーリー云々とは別で、ずっと記憶に残るように思います。
ミュージカルみたいに突然歌いだすのではなく、日本人に合うように必然的な流れで歌います。


●ヒロインの仮想現実世界での姿「ベル」は美しいですねえ。
ファッション雑誌の表紙に掲載されてもおかしくない。
むしろアートの領域です。
日本っぽさを感じさせません。


●日本の作品ですが、仮想現実世界の映像は日本っぽくなく、むしろ海外のディズニー作品に近いですね。
ディズニーのアニメ作品は、「アナと雪の女王」のようなCGを使ったマペット(人形)風に進化しました。
本作品の映像は、昔の古き良き時代の2Dセルアニメ版ディズニー作品の正常進化版です。
手書きの線のようなのに、それを違和感なくCGで複雑に動かしています。
CGは違和感なく動かせるだけではなく、動かしながらどんどんアングルを変えて映せるのも強みですね。


●劇中の現実世界パートを使わず、全て仮想現実世界の映像だけでファンタジーラブストーリーを作ったら、多分世界を狙えるでしょう。
今年、「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」という劇場版アニメも公開されました。
こちらも、2DアニメとCGとの融合が素晴らしい作品でした。
今年はそういう意味で、日本のアニメ作品の表現レベルが一気に上がった年のように思います。


【関連記事】映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の感想〜ガンダムシリーズの新世代感を堪能できる作品です
http://kanzaki.sub.jp/archives/004864.html


●「美女と野獣」的なラブストーリーなのかと思ったらそうではありません。
実は、恋愛要素よりも家族愛の方が強めです。


主人公の女の子は、「見知らぬ子供を救うために死んでしまった母の記憶」がトラウマです。
歌おうと思っても声が出ず、気持ち悪くなって吐いてしまう。
ネガティブ思考だし、学校ではまったく目立たない存在。


しかし、仮想現実の世界では、歌姫として胸を張って歌うことができます。
そういうのって、ネットの世界以外でもありますよね。
「家と学校だけが世界のすべて」だと思っていたら、未知の世界に触れて視野が一気に広がるというやつです。


そんな主人公が、仮想現実世界で出会った「竜」。
普通ならラブストーリーとして展開するのでしょう。
その方が分かりやすい。
「竜」を「実は王子様だったのです」とは安直にはしなかった。
監督は、「家族の物語」にしたかったのでしょうね。


父親と心に距離をおいている主人公。
この女の子が、どうやって家庭で笑顔を取り戻せるようになるか。


そのためには、過去のトラウマを克服する必要があります。
現実世界の「竜」を助けることが、本編のクライマックスとなります。


「見知らぬ子供を救うために死んでしまった母」
その行動と同じ事を今度は主人公自らが主体的に行う。


エンタメ要素を課せられた作品で、児童虐待とか、片親家族とか扱いが難しいものをあえて扱ったのは尊敬しますよ。
私だったら、そういうのは実写のR-15指定作品に任せてしまうもの。


いろんな要素を凝縮しているので、よく限られた時間内でまとめたものだなあと思いました。


●多分、この作品を劇場で鑑賞している人たちは、途中まで「竜の正体は、主人公の身近にいる男性たちの誰か」と推理しながら観たことでしょう。
ニュースで、「竜」の声を佐藤健さんがあてているとは知っていました。
佐藤さんと知っていても、劇中の竜の声は、普段の佐藤さんっぽくありません。
本当に、竜に見合った声を演じていました。
「仮面ライダー電王」の頃から、いくつものキャラを演じられる器用さがありましたが、今も健在。


主人公を演じた中村佳穂さんも、良かったです。
現実世界の主人公・仮想世界の主人公、そして歌(作詞も)まで一人で演じています。
声優さんの声の出し方とは違うけれど、これが良いのですよ。
朝ドラ「おかえりモネ」の主人公を演じる清原果耶さんに似た声。
普通は、声優さん以外がやると残念なパターンが多いのですが、本当に主人公にマッチしていました。
むしろ、声優さんでは出せないかも。


●この作品は是非、「夏(夏休み)」に観て欲しいです。
学生時代の、あの頃の「成長」を思い出せるかも。

Posted by kanzaki at 21:30
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