「転石、苔を生ぜず」〜2つの意味のうちどちらを選ぶか
●ゆったりと生きよう (PHP文庫)』(ひろさちや 著)より
「転石、苔を生ぜず」といった格言があったはずだ。
もとはといえば英語の諺で、"A rolling stone gathers no moss."をそのまま日本語にしたものだ。
外資系の出版社に勤めていたかと思えば、自分で通信教育の会社をはじめ、しばらくしたらハンバーガーの会社に入り、さらにサンドイッチの会社を自分でつくる。
そんな男に、そういつまでも腰が落ちつかんようじゃ、他人様から信用されんゾ……と忠告するときに使う諺である。
わたしはそう思っていた。
この場合は、「苔」というのは「信用」のことだ。
「転がる石に信用がつかない」──そんな意味の格言だと思っていたのである。
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なにかの本で読んだが、アメリカ人はこの諺を逆に解釈しているそうだ。
イギリス人は日本人と同じように「苔」を「信用」と受け取っているが、アメリカ人は「錆」と解釈しているらしい。
「活発に動いている人間には錆がつかない」──アメリカ人はそう読むのだそうだ。
なるほど、民族性というものか わたしは、やけに感心したことがある。
ところが、である。
もう一度、「ところが……」を繰り返す。
わたしはいま、『ことわざ大辞典』(小学館)をひいてみて、びっくりしている。
そこには、次のような解説が出てくるからである。
「活発に活動しているものはいつまでも古くならないというたとえ。
安定した位置に甘んじていると、いつのまにか古めかしく時代遅れになるということ。
また、一説に、転居や転職をしばしば行なうような者には財産も地位も身につかないというたとえとする」
ここには二説が併記されている。
しかも、わたしが思っていたほうの説(イギリス説)が、「一説」として軽く扱われている。
一般的には、わたしがそういう解釈もできるのかと感心したほうのアメリカ説が、まともだというのである。
小学館の『ことわざ大辞典』はそう見ているわけだ。
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同じ言葉なのに、捉え方が異なるという内容です。
海外で解釈の仕方が異なるだけならまだしも、いつのまにやら自国での意味合いも異なると驚くのは分かります。
確かに今の時代、「活発に動いている人間には錆がつかない」という解釈の方が相応しいのかもしれません。
特に若い人にとっては。
そして、私のように年齢を重ねてきた場合は、「苔」を「信用」だろうが「錆」だろうが、もうどうでもいいと考えてしまいます。
Posted by kanzaki at
07:01