2022年01月30日

映画『前科者』の感想〜未来は、過去や今につながっているけれど、考え方と行動次第で負の連鎖を止めることができると信じられる作品

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●映画『前科者』公式サイト
https://zenkamono-movie.jp/


映画『前科者』本予告(2022年1月28日(金)公開)【WOWOW】

監督:岸善幸
阿川佳代・・・有村架純
滝本真司・・・磯村勇斗
工藤実・・・若葉竜也
工藤誠・・・森田剛

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「保護司」という非常勤の国家公務員を扱った作品を観ました。


保護司は、犯罪や非行により保護観察中の人が地域社会のなかで更生を図るためのさまざまな手助けをする人達です。
お給料は出ないので、主人公はコンビニでアルバイトをしています。


●20代は日本でわずか12人だけ...。罪を犯した人の更生を支える「保護司」の切実な現状
https://www.huffingtonpost.jp/entry/zenkamono-hogoshi_jp_61f1eb46e4b094ce54a5bdcc


警察官なら事件を解決できます。
裁判官なら刑を下せます。
医者なら病気を治せます。
しかし保護司は、ただ寄り添うことしかできません。


一度犯罪を犯して社会のレールから踏み外れると、仕事にありつくのも難しい。
その人たちを見る人々の「目」は厳しいです。


保護司はそんな前科者にとって、警察官や裁判官、医者よりもありがたい存在だという事が分かりました。


有村架純さんが演じる主人公は、そういう職業ですから、今回巻き起こる連続殺人事件を解決するとかそういう立場じゃありません。
ある意味、傍観者です。


けれど、2時間を超えるこの長編作品の主軸となり、映画を鑑賞しに来た人たちは時間を忘れて観ることができました。


各登場人物の悲しい過去。
それが影響して人格形成された今。


未来は、過去や今につながっているけれど、考え方と行動次第で負の連鎖を止めることができる。
決して暗い道じゃないことを感じさせる作品でした。


カラー映像の作品なのに、根底に流れる重い空気により、なぜかモノクロ作品を観ているように感じました。
それゆえ、ラストの主人公がとる行動が、負の連鎖を止めた心情をあらわし、一気にカラー映像作品になりました。


バッドエンドで終わっても仕方がないはずなのに、未来に救いがある感じでした。



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森田剛さん、若葉竜也さんが演じた兄弟は、本当に切ない人生ですよ。
子供の頃の虐待シーンは、観ていて泣いてしまいました。
負の連鎖で、本当に今まで良いことが無かった人生。


若葉竜也さんは、精神的に子供のまま大人になってしまった感じをうまく表現していました。
常におびえて生きる人生。


森田剛さんは、ちょっと首をすぼめた感じで動く姿が良かったです。
どこか引け目があり、人との関わり合いを拒絶したような心情を演じていました。
アイドルだった頃のキラキラ感を完全に消しており、これは大したもんだと。


有村架純さん演じる主人公と、磯村勇斗さん演じる刑事は、幼い学生時代の恋人同士。
ある事件がきっかけで2人の人生は大きく変わり、その先の人生に影響します。
犯人を逮捕する刑事と、更生を助ける保護司。
同じ犯罪者に対して、見つめる目の感情が全く異なります。
この2人に流れる絶妙な空気をお二人はうまく演じていました。


この作品、2022年早々に公開されましたが、既に今年の邦画を代表する雰囲気があります。
できたら、続編をやって欲しいですよ。


まずは、まだ未視聴であるWOWOWのドラマ版を観たいと思います。

Posted by kanzaki at 17:15
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