2022年03月13日

映画『愛なのに』の感想〜心の欠けを恋愛で埋めようとしているのかなあ

ainanoni001.jpg

●映画『愛なのに』公式サイト
https://lr15-movie.com/ainanoni/index.html

主演:瀬戸康史/河合優実
監督:城定秀夫
脚本:今泉力哉/城定秀夫

「性の劇薬」「アルプススタンドのはしの方」の城定秀夫が監督、「愛がなんだ」「街の上で」の今泉力哉が脚本を務め、瀬戸康史の主演で一方通行の恋愛が交差するさまを描いたラブコメディ。
城定と今泉が互いに脚本を提供しあってR15+指定のラブストーリー映画を製作するコラボレーション企画「L/R15」の1本。


-------


女子高生が「結婚してください」と、古本屋店主の主人公に告白。
しかし、その主人公にはずっと好きな女性がいます。
残念ながらその女性はもうじき結婚。
ところが、その女性の婚約相手は浮気をしています。
それを知った女性も、主人公に不倫を迫ります・・・。


そんな一方通行な恋愛が展開していきます。
これだけを聞いて、さらにR15指定ですから、物凄くドロドロなものを予想されるかと思います。
ところが実際はコメディ的なお笑い要素が多いし、カラッとしています。


昔の恋愛ドラマのような重い感じにしないのが今どきな感じだし、実際そういうもんだよなあと思いました。


主人公が一番マトモだけれど、決して秀でた人格というわけではありません。
基本、受け身なスタイル。
主人公が語る台詞には至極、「まとも」なものを感じます。
この主人公がいなければ、このお話しは崩壊してしまいます。


この主人公の「まとも」な感じは、瀬戸康史さんだからこそだと思います。
昔から変わらない美少年な雰囲気を丸メガネと口ひげで覆い隠してはいますが、流れている空気や時間には、隠しきれない「まとも」さがあります。


それ以外のキャラは一見普通だけれど、考え方や言動がちょっと「おかしい」。
この「おかしい」には、変人だという意味と、コミカルな意味があります。
みんな何かしら心に欠けたものがあり、それを恋愛で埋めようとしているのかなあ。


-----


この映画、無理にエロ要素を盛り込む必要は無かったんじゃないかなあ。
無理やり自ら、R15指定ルールにしているような。
中間部分は粗さがあり、それをコメディとエロ要素で補っている感じでした。
だから、登場人物たちの言動が「おかしい」と感じるのかも。


古本屋店主役の瀬戸康史さんと、女子高生役の河合優実さんの共演部分は、全て古本屋の中だけです。
この2人だけのシーンは良かったですよ。
R15な部分は一切なし。
脚本上も演出上も、なぜか2人のやりとりの部分だけは丁寧に描いていました。


古い本に囲まれ、デジタルな要素が一切ない環境。
2人の間でやり取りするのは、アナログな手紙。
会話もどことなく昭和な感じ。
流れる穏やかな空気は、令和ではありません。


この2人を中心にお話しを展開させてほしかったなあ。
この女子高生の心の背景が殆ど描かれておらず、その分、他の人物達に時間を費やしてしまっています。
実質、ヒロインなはずなのに、ヒロインとしての作品内での扱いが少ないのです。


あまりこの女子高生の心の悩みや家族関係を描くと、この作品に流れるコメディでライトな感じが無くなってしまうのかもしれません。
それでも、あの2人の芝居が良くて印象深いので、もっと描いて欲しかったように思います。


-----


現実世界でも、今は相手の心が見えにくい時代です。
裸になっても、心は固く覆われています。


平成になって以降、景気は下がり続け、心の高揚も少なくなっています。
毎年のようにある自然災害。
そこへ、コロナ禍と海外での戦争。


この映画のラストのような、ささやかでも笑顔を交わせる世の中になってほしいものですね。

Posted by kanzaki at 18:00
Old Topics