2022年04月10日

映画『今はちょっと、ついてないだけ』の感想〜中年男性が自然の中で心を癒す姿は良いものです

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●映画『今はちょっと、ついてないだけ』 公式サイト
https://gaga.ne.jp/ima-tsui/

監督:柴山健次
原作:伊吹有喜
出演:玉山鉄二、音尾琢真

ネイチャリング・フォトグラファーとして脚光を浴びた主人公はバブル崩壊ですべてを失い、事務所の社長に背負わされた借金を返すためだけに15年間生きてきた。
すべてをあきらめて必死に働き、借金を完済した頃には40代になっていた。
もう一度やり直そうと上京しシェアハウスでの生活をスタートさせる。
そこに暮らしていたのは同じように人生に敗れた者たちだった・・・。



伊吹有喜さんの原作です。
「四十九日のレシピ」とかが有名です。
私の場合は、地元・新潟を舞台にした映画「ミッドナイト・バス」の原作者という方が認識として強いです。
そういう意味で、ちょっと私的には期待して鑑賞したわけです。


●映画「ミッドナイト・バス(原田泰造さん主演)」を撮影地・新潟市民が観た感想〜この映画の真のテーマは「気づき」だと思います
http://kanzaki.sub.jp/archives/004002.html



原田泰造主演 映画『ミッドナイト・バス』予告編


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自然の中でゆっくり時間を過ごす姿、レトロな家でコーヒーをゆっくり淹れる姿は、観ていてとても良いものです。


現実の世界で心が傷ついているのはどの世代もそうです。


40代とか50代の男性の場合、いろんな場面で矢面に立たされて逃げ場が本当にありません。


今のキャンプブームって、中年男性のソロキャンプが特に注目されていますよね(女子高生がキャンプするマンガの人気も要因ですが)。
逃げ場のない男性にとってのオアシスである自然。
そんな映像を観られたし、最終的にはハッピーエンドな内容なので良かったですよ。


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●原作があるから仕方がないのでしょうが、無意味に登場人物が多すぎるように思いました。
しかも、殆どが使い捨てキャラです。
その時だけ登場し、後でまったく出てこない。
急に登場して感情をぶつけ合われても、観ている方は人間関係を知らないから、ただ傍観するだけです。
各登場人物と主人公の関係性が、あまり説明されていません。
そこへきて、時系列が行ったり来たりしています。
内容自体は難しいものではないので、もう少しシンプルに観せてほしかったです。


●128分もある作品なのに、本当に必要なのって、主人公でカメラマンの玉山鉄二さん、元TV番組製作者の音尾琢真さん、そしてこの2人の高齢な母親だけです。
この4人だけでじっくり描けば、相当クオリティが上がったように思います。
(原作無視にはなるかもしれませんが、本当にそう思いました)


●予告編を観る限り、中年の男性が大自然の中でキャンプする姿をたくさん映しています。
てっきり、ヒロシさんのソロキャンプみたいな内容かと思っていました。
人生のうまくいかない時期、大自然の中に身をゆだねて心を落ち着かせる。
やがて、前へ進もうとゆっくりと歩み出す・・・。
そんな映画だと思っていました(期待していた)。
100分ぐらいは、中年2人のキャンプしている様子がただ流れるだけでも良かったのです。
「孤独のグルメ」みたいに、ただ食べているだけのシーンがむしろ良いのと同じです。


●玉山鉄二さんの演じる人物、音尾琢真さんが演じる人物は同じ世代ですが、くすぶっている悩みは異なります。
特に玉山鉄二さんの演じる主人公は独身(離婚歴無し)なので、母親との関係性は、幼少から変わりません。
老いた母親との会話が、とてもリアルに感じられました。
主人公の年齢を重ねてもなお残るあどけなさ(幼さ)や優しさは、玉山鉄二さんにピッタリあってました。
笑顔がとても素敵でしたよ。
とても控えめで、自分の感情を相手にさらけ出せない。
就職氷河期世代の今の男性を象徴するような感じでした。

Posted by kanzaki at 21:20
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