2022年05月04日

映画『ツユクサ』の感想〜日々の丁寧な暮らしを大事にする姿勢

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●映画『ツユクサ』公式サイト
https://tsuyukusa-movie.jp/

監督/平山秀幸
出演/小林聡美.松重豊

【あらすじ】

過去を抱えながらも今日を明るく生きる女性に訪れる小さな奇跡をつづったヒューマンドラマ。
小さな港町で暮らす五十嵐芙美は、気心の知れた友人たちと他愛のない時間を過ごしたり、歳の離れた小さな親友・航平と遊びに出かけたり、車の運転中に隕石がぶつかるという信じがたい出来事に遭遇したりと、楽しい毎日を送っている。
しかし彼女がひとりで暮らしているのには、ある哀しい理由があった。
ある日、彼女は町に引っ越してきた男性・篠田吾郎と運命的な出会いをする。



映画『ツユクサ』予告編【2022年4月29日(金・祝)】公開


※※※


【感想】


休日、朝一番の上映回に行ったら、前3列以外ほぼ満席で驚きました。
年齢層は50代以上が多かったです。


「かもめ食堂」へふらっと現れた「孤独のグルメ」の井之頭五郎が、黙々と食事をする作品・・・ではありません。
しかし、この最強タッグのエッセンスは劇中で感じられます。


小林聡美さん主演作品というと、「かもめ食堂」路線のおだやかで癒されるテイストですよね。
そして、観る側もそれを期待し、鑑賞後に元気が出る。
本作も観て良かったと思え、明日からも頑張ろうと思える内容となっていますよ。


昨今、TVドラマ等は「考察ブーム」だそうです。
私はどうにもそういうのが好きではなく、穏やかで、できれば悪人が出てこない作品が好きです。
そんな私には、この作品が向いています。


小さな港町が舞台で、時間の流れがとても穏やかです。
そんな場所で丁寧に生活をしているのが、小林聡美さん演じる主人公です。


この「主人公が丁寧に生活している」というのが、観ていて心地よいのです。
本作品は、ストーリーよりも、この部分が肝のように思います。


普通の賃貸アパートなのですが、綺麗に掃除されており、それでいてちゃんと生活をしている感があります。
昨今のミニマリストとは違います。
独り暮らしですが、きちんと料理を作っているし、職場へお弁当持参です。
健康の為か、ジョギングもしています。
お酒をやめようと、断酒の会にも通っています。
そいうや、自宅のシーンでTVを観ていたり、ラジオや音楽を流している様子はありません。
そういった音が無い生活なのです。


とても慎ましい生活なのですが、映し出される様子からは、むしろ豊かさが感じられます。
昭和的な雰囲気。
こういう生活も悪くありません。


同僚の小学生の息子とは、親友と呼べるほど仲がいい。
年齢の離れた小学生とのやりとりは、とても自然で観ていて微笑ましい。
メインエピソードはこちらで良いと思えるほどです。
主人公の台詞や行動が、とてもイキイキしているからです。


松重豊さん演じる男性との出会いやつきあい方は、TVドラマのような波乱があるわけではありません。
本作は起承転結、明確なストーリーはそこまでありません。
松重豊さん演じる男性との出会いを軸にすることで、一応ストーリーものになっています。
しかし、この男性が登場しなくても、歳の離れた親友との交流を軸にすることで成立します(実際、そちらの方が本作の中でも時間を費やしています)。


登場人物たちはそれぞれに辛い過去があります。
失ったものがあり、人生を変えるためにこの町へやってきて暮らしている。
だからこそ、この「ありふれた日常生活」を過ごせることが、登場人物たちにとっての幸せだったりするのです。


この平凡な生活こそ、理想なのです。


この作品を観ている人達は、各登場人物たちの辛い過去を知っているからこそ、この平凡な生活に幸せを感じることができます。


コロナ禍以降、辛い話題ばかりです。
現実の方が平凡じゃない日々。
だからこそ本作品の主人公のように、日々の丁寧な暮らしを大事にする姿勢は見習いたいものです。



ちなみにこの作品、新潟県ネタが何故か放り込まれているので、地元民が観るとニヤリとします。

Posted by kanzaki at 19:57
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