2022年06月12日

映画「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」の感想〜⁣富野ガンダムは、刀で人を斬る。安彦ガンダムは、クワで畑を耕す

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●機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 公式サイト
https://g-doan.net/


監督:安彦良和
声:古谷徹/武内駿輔/成田剣/古川登志夫
2022年製作、108分

【あらすじ】


1979年に放送されたテレビアニメ「機動戦士ガンダム」の第15話「ククルス・ドアンの島」を映画化。
テレビシリーズを再編集した劇場版3部作には含まれなかった伝説的エピソードを、「機動戦士ガンダム」のキャラクターデザイナー&アニメーションディレクターで、近年は「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」も手がけた安彦良和が監督を務めて新たに映像化。
アムロたちの乗るホワイトベースは、作戦前の補給のためベルファストへ向けて航行していたが、その途中、ある任務を言い渡される。
それは、通称「帰らずの島」と呼ばれる無人島に潜む残敵の掃討任務だった。
島に降り立ち捜索を開始したアムロは、そこにいるはずのない子どもたちと一機のザクと遭遇する。
ザクとの戦闘でガンダムを失ってしまったアムロは、ククルス・ドアンと名乗る男と出会う。



『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』ロングPV


※※※


【感想(ネタバレあり)】


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富野ガンダムは、刀で人を斬る。
安彦ガンダムは、クワで畑を耕す。


同じ一年戦争でも、切り口、作風が変わりますね。



幼い頃は、ガンプラブームの真っただ中。
現在とは異なる理由で、ガンプラの入手は困難でした。
人気のガンダム、シャアザクはもちろん買えません。
せいぜい、「武器セット」ぐらいしか手に入りませんでした・・・。


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「作画崩壊」で有名なエピソードを一本の劇場版としてリメイクしたのが本作です。
ファーストガンダムの大筋には影響のないエピソードなので、昔の劇場版でもカットされました。
言ってみれば「捨て回」なのに、とても印象に残っています。


公開最初の日曜。
朝一番の上映回に行きました。
上映後、舞台挨拶中継付きの回です。


昨年、「閃光のハサウェイ」が公開された最初の日曜朝も、映画館は大変な混み具合でしたが、今回は更に上回っていました。


「トップガン マーヴェリック」「シン・ウルトラマン」「名探偵コナン」「クレヨンしんちゃん」といった人気作も公開中なので、それらとの相乗効果でしょうか。


上映チケットを買った人しか、本作「ククルス・ドアンの島」のブルーレイが買えないというのも、上手な商売だと思います(お値段13,000円!)。



ククルス・ドアン、劇場限定ブルーレイを開封してみました!



ラスト、森口博子さんが歌うテーマ曲にあわせ、青空をホワイトベースが旅立つシーンでぐっときました。
なんて爽やかなんだろうと。
その後、エンドロールの背景が真っ黒ではなく、お誕生日会の準備イラストが映し出されていくのも良いです。



森口博子「Ubugoe」MV -「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」主題歌


戦争映画なのですが、優しさに溢れていました。
昔の『ハウス食品・世界名作劇場』を思い起こします。
それはきっと、機械文明とは程遠い島の生活・・・田を耕し、ヤギの乳を搾り、魚を釣る、雨水を貯える、みんなで賑やかに夕食をいただく姿のせいだと思います。


作画で一番気合い入っているのが、20名の子供たちを交えた夕食シーンです。
子供達各々が、好き勝手に食べているので動きも表情も豊かです。
ククルス・ドアンが子供たちに、ヤギの乳しぼりを教えるシーンも良かったなあ。
最近、こういう昭和的というかジブリ的なシーンを観なかったので、なんともノスタルジックに感じました。


それでいて、モビルスーツの戦闘にも気合いが入っているのがうれしい。
閉鎖された陸戦なので、ヒートホーク、ビームサーベル等の殺陣が中心のアクションシーンです。
巨大なロボットが大きくジャンプしたり、ホバリングしながら武器を構えて突っ込んでいく姿はかっこいい。
そこはCGで描かれていますが、アニメ絵のような感じを含ませているので、違和感がありません。
戦闘はZガンダム以降の、ビームの撃ちあいより、こういう泥臭い格闘の方が好きです。


殺陣が時代劇的な感じとならば、ガンダムがカーテンの後ろからフワッと登場したり、灯台の灯りに照らされて崖の上から現れるのがかっこいい。
ここも時代劇というか、見栄えが良いです。


ガンダム以外、ホワイトベース隊のモビルスーツ陣営がまったく役に立たないのに笑いました。
そして、この映画で最強の兵士はヤギさんです!
後半、スリリングな感じで展開しつつも、子供達のおかげで殺伐にはなりません。
ロボットと子供達・・・銀河漂流バイファムを思い出します(今、ユーチューブで毎週配信していますね)。


島の子供たちの年長者である女の子・カーラ。
このキャラの声を担当した人は、声優業はじめてだそうですが、うまかったですよ。
TVアニメ版のこのキャラは、割とクールというか人工的無表情だったのですが、映画版は子供たちにとってお母さん的な感じ。


その優しさのおかげで、アムロ・レイは15歳の子供らしい表情を本作で見せています。
ごく普通の15歳の男の子の表情って、そういや本編だとありませんでした。
TVアニメ版の本エピソードでは勝気な感じで、島の子供達とも意思疎通ができていませんでした(子供達も勝気)。
映画版は子供達が20人もいるのですが、アムロに対して最初以外は友好的な感じです。


アムロと同じ感じぐらいの男の子(一般人・非戦闘員)の存在も珍しいです。
アムロに対抗心みたいな姿勢を見せていますが、戦場というより学校内でのいざこざみたいなもの。
普通の男の子と接しているアムロが、昔のTV版より幼く感じられいいんですよねえ。


アムロ、カイの声を担当されているお二人は、声がまったく衰えていないことに驚きました。
今回の映画を観る為、TV版を数エピソード観たのですが、40年の間隔があるのに待ったく変わっていません。
素晴らしいですよ。
舞台挨拶の中継で、お二人を観られて良かったなあ。


本作では、昔のTV版の色々な名シーンを回想シーンで再現してましたね。
アムロのお母さん、お父さんの登場。
「殴ったね! オヤジにもぶたれたことないのに!」とか。
大気圏突入エピソードも。
昔からのファンには嬉しい。


後半の爆発シーンの作画は、担当が忙しく安彦監督が手伝ったそうですが、自分で見返してNGだなあと言ってました。
ブルーレイを劇場で発売する関係で、公開2ヶ月前には完成しなければいけなかったそうです。
本当は公開直前までいじりたかったそうです。


「ジ・オリジン」の各エピソードをもっとアニメ化してほしい反面、今回がベストなラストとも思え、もどかしいです。
本当、ラストのホワイトベースの旅立つシーンが良かったです。

Posted by kanzaki at 07:00
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