2024年09月02日
お金がない時代のお葬式
(新潟市中心部・萬代橋)
●『築地本願寺の経営学―ビジネスマン僧侶にまなぶ常識を超えるマーケティング』（安永 雄彦 著）より
葬儀の意味は、「生」にとらわれ、死の現実から目を逸らせがちな私たちに、亡き人も含めて一つのけじめとして死を受け入れさせ、一歩前に進む契機を与えてくれることにあります。
したがって、葬儀とは、亡き人の命を死で終わらせるのではなく、普遍的な価値を持って関わり続ける存在であると私たちが受け止めていく儀式と言えます。
ところが「お葬式セット」でお坊さんに来てもらった場合、儀式についての宗教的意味は存在しません。
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すなわち「お金と時間」に則ることになります。
２０００年頃から増え始めた「家族葬」は30％。
これは「身内だけで小規模に見送りたい」という人々の価値観の変化を映し出しています。
逆に「一般葬」は減少の傾向にあり、２０１２年の52％が２０１４年には42％と、年率マイナス10％。近畿、北海道、中部、関東では一般葬が50％を切っています。
特に関東では一般葬34％、家族葬32％と拮抗しています（出典：『月刊仏事』２０１３年２月号、２０１５年２月号）。
それだけではありません。
通夜と告別式をまとめて行う「一日葬」、通夜と�犢霾娘悪瓩肋蔑�して火葬によって葬儀とする「直葬」も増加傾向に。
特に関東は直葬が22％にも上るのです。
初七日や四十九日もまとめて葬儀の際に行う「繰り上げ法要」も珍しいものではありません。
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一日で一気に法要を執り行うというのは、「忙しい中、何度も集まるのは大変だから」という時間的な都合もありますが、費用の節約という理由も大きいと考えられます。
お寺でも葬儀会場でも何度も使用すればそれだけお金はかかります。
「お葬式は儀礼的なものだ」と考える人が多いなら、そこにコストをかけようとは思わないでしょう。
葬儀社の経営状況も厳しいものです。
経済産業省の「特定サービス産業実態調査」によれば、葬儀社の冠婚葬祭業務年間売上高は、年率マイナス14％です。
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時間とお金を節約するという効率主義と同様、「人間は生きているうちが花。死んだらそれでおしまい」という考え方が、特に都会人の間で急速に増えています。
そうなれば「葬式もお墓もいらない」となっていくでしょう。
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「坊主丸儲け」という皮肉が通用したのは過去のことです。
日本のお寺の数はおよそ7万７０００と言われていますが、今後20年で30％は消滅するとも言われています。
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私たち浄土真宗本願寺派が２０１５年に行った調査によれば、年収１０００万円を超える寺院はおよそ20％。
45％のお寺は年収３００万円未満、なのです。
過疎地では年収50万円を切るお寺も出てきました。
若い人は仕事を求めて町へ出て行き、過疎の村には高齢者がわずかに残るばかり。
村そのものが消滅の危機にあるのですから、お寺も同じ運命を辿ることは明らかです。
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【コメント】
お葬式にお金をかけないという風潮。
わりかしお金をかける地域である新潟市でも、そういう感じになってきたように思います。
コロナ禍以降、会社の人の親族の通夜へ行くことが無くなりました。
会社に来られた際、香典を渡すだけになりました。
コロナ禍が落ち着いた今でさえ、そんな感じなので、今後は当たり前になるのかもしれませんね。
高齢化社会だからお葬式というものが身近になるかと思ったら、どんどん遠い存在になってきました。
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自分自身が年齢を重ね、死というものが近くなってきているのは事実。
けれど、考えはそれとは逆に、日々の生活でいっぱいだから、死というものを考えられなくなっています。
仕事のことを考えていない瞬間、ふと「死」の恐怖を感じてしまいます。
本当に一瞬なのですが、深い闇に包まれます。
そして、考えないようにしようと、再び仕事に動き出す。
目を背けているだけですが、そういう人は多いと思います。