監督:瀬々敬久
原作:馳星周
脚本:林民夫
出演:高橋文哉、西野七瀬
【あらすじ】
震災から半年後の宮城県仙台市。
職を失った青年・和正は、震災で飼い主を亡くした犬の多聞と出会う。
聡明な多聞は和正とその家族にとって大切な存在となるが、多聞は常に西の方角を気にしていた。
傷ついた人々に寄り添いながらも、たった1匹で西を目指して歩く多聞には、ある少年との約束があった。
多聞とともに旅をする和正を高橋文哉、多聞に命を救われる美羽を西野七瀬が演じる。
2025年製作/128分/G/日本
配給:東宝
劇場公開日:2025年3月20日
映画『少年と犬』予告映像【2025年3月20日(木・祝)公開】
※※※※※
【コメント】
東日本大震災直後から始まる、現代のおとぎ話です。
話しの中心となる犬「多聞(たもん)」は、5年の歳月をかけて東北から九州まで3千キロの旅をします。
その間、さまざまな人と出会い、最後は熊本にいる少年のもとへたどり着きます。
高橋文哉さんが演じる主人公は途中で死んでしまい、幽霊というか見えない存在となります。
(西野七瀬さん演じるヒロインにだけは見えるし話せる)
彼は、常に犬のそばにいて見守っていきます。
このファンタジー設定を受け入れられるかどうかですね。
しかし、高橋文哉さん、西野七瀬さんが演じているから、その「あいまいな部分」を良しとできます。
他の人だったら無理かも。
東日本大震災、熊本地震という、人間が抗ってもどうしようもない現実。
それを単純に「その時、奇跡がおきた」で解決するわけにはいかないのです。
いくら作り物でも。
そうは思いつつも、被災した人にエールを送る作品というのは、やはり大切だと思います。
※
話しのコンセプトから言えば本来、斎藤工さん・宮内ひとみさん演じる夫婦と、その幼い息子が中心になるのです。
タイトルが「少年と犬」なんですから。
他の人が書いたら、まさにそういうお話しになるでしょう。
予告を観ても、幼い少年と犬のほのぼのとした映像を流しているバージョンもありますしね。
しかし本作品は、高橋文哉さん、西野七瀬さんが演じるキャラがメインとなります。
本来なら、脇役に相当するキャラです。
犬が途中で出会う脇役その1、その2です。
脇役を主眼にした別視点バージョンの映画なんですよね、これって。
良い映画なんだけれど、最後までそういう違和感はありました。
普通なら、東北に住む斎藤工さん・宮内ひとみさん演じる夫婦が、幼い息子の為に犬を飼い始める。
息子が笑顔で元気になる。
ところが震災により、犬を置いて九州へ移り住むことになった。
犬がいろんな人と出会いながら、やがて少年と再会する。
「南極物語」とか「母をたずねて三千里」みたいなテイストのストーリーが王道でしょう。
しかし、この令和に至るまで、そういうテイストの作品はすでにあるわけです。
だから、こういう別視点のストーリーになったのではないでしょうかね。
※
高橋文哉さん演じる主人公、西野七瀬さんが演じるヒロイン、共に家族関係は良くない設定。
理由は、まっとうな人生を歩んでいないから。
まわりとの人間関係もよろしくない。
そういう人物が、犬との出会いから、少しずつ良い方向へ向かおうとする。
多分、原作者も監督も、頭が良くて、どんな人物も極悪人にできない優しさ(リミッター)があるのだと思う。
昨今の邦画は、最悪な性格の人物による最悪な事件を描けば、人間を深く描いた作品と勘違いしている部分があります。
その点、本作品はリミッターがかかっている。
主人公が犯罪集団から抜け出そうとしたら、現実ではバッドエンドまっしぐらの報復措置があります。
ヒロインだって、あの性風俗がらみの環境から抜けることは無理でしょう。
その辺りの悪い人たちにはリミッターがかかっており、他作品と違ってマイルドな行動です。
ヒロインが刑務所にいる間、犬がどういう行動をしていたかを死んだ主人公の幽霊から話しを聞くわけです。
ファンタジー設定ならば、まあそれでも良いのでしょうけれど。
ファンタジー設定を使わずに、ヒロインが犬と再会できるかを描けていたら、もっと良かったのではないかと思います。
それでも2時間超えの作品ながら、飽きさせずに最後まで観させる力がありました。
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