2023年02月26日

映画『銀平町シネマブルース』(小出恵介さんの舞台挨拶あり)の感想〜小出さん曰く「じわじわ育つ映画」

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●映画『銀平町シネマブルース』公式サイト
https://g-scalaza.com/

監督:城定秀夫
脚本:いまおかしんじ
出演:小出恵介、吹越満、宇野祥平、宇野祥平

【あらすじ】
青春時代を過ごした街・銀平町に帰ってきた一文無しの青年・近藤。
映画好きの路上生活者の佐藤と、商店街の一角にある映画館・銀平スカラ座の支配人・梶原と知り合ったことをきっかけに、銀平スカラ座でアルバイトとして働くことに。

同僚のスタッフや、老練な映写技師、売れない役者やミュージシャン、映画の世界に夢を見ている中学生など、個性豊かな常連客との出会いを通じて、近藤はかつての自分と向き合い始める。

撮影は、埼玉県川越市にある老舗ミニシアター・川越スカラ座で行われた。

2022年製作/99分/日本


『銀平町シネマブルース』予告編

※※※


【感想】

先日鑑賞した「湯道」は、時代遅れの銭湯を中心に、いろんな人の群像劇でした。

●映画『湯道』の感想〜気軽に観られる、昔のフジテレビ映画という感じで良かった
http://kanzaki.sub.jp/archives/005357.html

今回は、時代遅れのミニシアターを中心にした、いろんな人の群像劇です。


どちらも、主人公はなるべく感情も存在も中庸にし、周りの人と関わることで、主人公も周りの人もくっきり浮き出させる手法のように思いました。


両作品とも仕事で挫折した主人公が、銭湯や映画館で働きながら、周りの人と関わることで少しずつ感情が動き出し、一歩前へ進んでいくお話し。
王道中の王道で気持ちがいい。
ラストに前へ進んでいき、映画には映し出されていない先のお話しにも希望が持てる作品は、良い作品だと思うのです。


本作は短い内容ながら、多くの人が出てきます。
空気キャラはいなくて、それぞれがちゃんと存在感を出しています。
脚本と役者の相性が良かったのかもしれません。


今回、特に印象的だったのが、宇野祥平さん演じるホームレスと、渡辺裕之さん演じる映写技師です。


映画好きのホームレスと、年配の映写技師の2人を中心にした作品を観たいと思ってしまいました。
劇中、この2人の生きてきた背景や家族などは語られていません。
どんな人生を歩んできたのか知りたくなるほど魅力的に映っていました。


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今回、ミニシアターを舞台にした作品なので、全国のミニシアターで舞台挨拶をしています。
現在まで10都市ほどで実施。


今回、新潟市になるミニシアター「シネ・ウインド」にて舞台挨拶がありました。
小出恵介さん、日高七海さんの2名が登壇しました。


本作は2021年の秋に撮影。
「早撮りの城定」の異名を持つ監督なのですが、今回も12日間ですべて撮影したそうです。


日高七海さんが印象的な現場は、作品の後半、映画館のロビーでの長回しのシーンだそうです。
台本6ページにも及び、いろん人たちが各自演技しています。
これを1カットで撮影したので、普段は温厚な監督も、ちょっとぴりっとしていたそう。
このシーンがクランクインの演者も多かったそうで、まだ作品を理解しつくしていない中での演技は大変だったようです。


小出恵介さんは、監督から表現しすぎないで、トーンを下げてくれとの演技指導があったそうです。
確かに劇中、いろんな人が登場するのですから、統一した雰囲気にうまくバランス調整するには、主人公のこのトーンは正解だと感じました。


本作は、小出さん主演復帰作となります(あと最近、結婚したそうです)。
今回の作品を演じてみて、人間のいろんな部分を表現できて、演技のしがいがあったそうです。
こういう方向性でいこうという、今後の役者人生のステップになったそうです。


残念ながら他界された渡辺裕之さん。
小出さんは、その存在感、貫禄を感じたそうです。
紳士的、熱心、丁寧だそうで、私たちがテレビなどで受けた印象そのまんまです。


神崎が印象的だったのは、小出恵介さんと渡辺裕之さんが廊下でダンスするシーン。
小出さん自身も不思議で印象的なシーンだと感じたそうです。
あのシーン、かなり長い間カットがかからなかったそうで、カットと言われないから、ずっと2人でダンスを回り続けていたそうです。
そういう時、大物俳優だと自分から勝手に演技をやめてしまう人もいるのに、渡辺さんはずっとやり続けたことからも、小出さんは渡辺さんの人柄を感じたそうです。


日高七海さんは、渡辺さんが中学生(役者自身は本当は小学生)と2人芝居しているところが印象的だったそうです。
子役が緊張していたのですが、渡辺さんは一緒に何度もセリフ合わせに付き合ってくれていたそうです。


小出さんは本作品を「じわじわ育つ映画」と語っています。
全国のミニシアターでロングラン上映してほしいですね。

Posted by kanzaki at 12:13
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