●『NHK「100分de名著」ブックス 三木清 人生論ノート 孤独は知性である』(岸見 一郎 著)より
希望を持ち続けること、決して諦めないことは、大切なことです。
しかし、三木が希望について論じた章は、こんな文章で締めくくられています。
断念することをほんとに知っている者のみがほんとに希望することができる。
何物も断念することを欲しない者は真の希望を持つこともできぬ。
形成は断念であるということがゲーテの達した深い形而上学的智慧であった。
それは芸術的制作についてのみいわれることではない。
それは人生の智慧である。
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多くのことを諦めたけれど、最後の最後に残ったものについて「これこそ自分が本当に希望していたものだ」と思えるのなら、どれほど多くの夢を諦めたとしても、夢を叶えた人生だといえるでしょう。
逆に「あれもできなかった」「これもできなかった」と、いつまでも後悔する人は、今という時間や人生を棒に振っていることになります。
諦めることが放棄することだとしたら、三木のいう「断念」は真の希望につながります。
たとえ長く続けてきたことであっても、それが自分に向いていないと分かった時は、きっぱりと断念し、違う道を選ぶ勇気を持ちたいものです。
※三木 清は、京都学派の哲学者、評論家。
法政大学法文学部教授。京大哲学科卒。
西田幾多郎・ハイデガーに師事。
留学中にパスカルを研究、帰国後『パスカルに於ける人間の研究』を刊行。
戦時中に治安維持法違反で保釈逃走中の知人を支援したことで逮捕拘禁され獄死したが、著書『人生論ノート』はロングセラーになった。
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【コメント】
限られた人生・時間の中で、自分が本当に求めているものが見つかるのかどうか。
普通に何も意識していないと、そうそう見つかるものではありません。
見つかったとしても、それに集中するには、他のことをやめるなり、中断するなりしないと時間が確保出来ません。
自分では「見つけた!」と思ったことが、あとになって違っているかもしれません。
自分の能力では無理と挫折もあることでしょう。
そうなった時、そのまましがみつくよりも、すっぱり諦めて新たな道を進む方が良いこともあります。
方向転換は怖いけれど、案外、なんとかなるものです。
私も年齢を重ね、多くを諦めてきました。
けれど、だからといって後悔しているというわけではありません。
今、集中していることがあるからでしょう。
大切なのは過去ではなく「今」です。
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