2004年02月20日

ジャムおじさん・死の商人説

神戸大学ゲーム研究会

ジャムおじさんは、アンパンマンワールドのほとんどの食糧供給を担っており、加えてアンパンマンをして町内を巡察せしめ、街の警察権まで掌中にしている。
これほどまで絶大な権力を担いながら、悪の道に手を染めていないとは考えにくい。
まずジャムおじさんは、一般市民の労働によって「アンパンマン号」を初めとする大量の軍事兵器を手にする。
もちろん建前は「住民の安全確保のため」だ。
そして、余剰した兵器を諸外国に売る。
こうして外貨を稼いだジャムおじさんは、平和時に外国の精度の高い兵器を購入し、近隣諸国で戦争が勃発した時に高く売りつける。
これをくり返すだけで相当の富を得ることができる。
(途中略)
近年になって、実は「ばいきんまん」でさえ、住民におとなしく労働を供出させるための、ジャムおじさんの「操り人形」であるという説も浮上している。
ジャムおじさんは、密かにばいきんまんと取引をしており、金と食料を提供する代わりにアンパンマンと住民の眼前で闘うように契約しているという。
ジャムおじさんに雇われたばいきんまんをアンパンマンがやっつける。
住民は一層ジャムおじさんに治安を任せようと考える。
そして惜しみなく労働を提供する。
民から「雑徭」税を搾取しようとするジャムおじさんの卑劣な策である。
以上に見たように、アンパンマンワールドの経済は、ジャムおじさんを中心にして構築されていたのである。
恐るべしジャムおじさん、闇取引に手を染めながらも、パン職人&和食の達人であるとは‥‥。


* *


まさに、ガクガクブルブルの事実ですよ。
科学の視点から、慢画や特撮の「あり得ない事実」を解説しているので有名なものに、「空想科学研究所」がありますよね。
今回ご紹介したサイトは、経済の視点からアンパンマンの世界を解き明かしています。

映画や小説の殆どは、現実の世界観を舞台に話しが展開します。
作者と読者との間に常識を共有させることにより、話しの展開に腰を折ることが無いからです。
スイッチを押せばテレビが映ったりするという事も、作者と読者が常識として認識しているから、当たり前のように表現できます。
もし今が、テレビと言うものが普及していない時代だとしたら、そもそもテレビとはなんぞや? 電気とは? 放送局とは?等、いろいろな事を説明しないといけません。

世界観をちゃんと説明しないと読者が理解に困るものに、SFとファンタジーがあります。
人々はどこに住んでいて、どういう支配体制なのか?
貨幣体系は? 食料調達は? 文明レベルは?
いろいろと事細かに説明しないといけません。
何せその世界について読者は、作者と共有すべき常識を持ち合わせていないのですから。
そういう架空の世界観を読者に説明できる人は、執筆力も凄いですが、いろんな分野に見識がある才人だと思います。
最近では、そういう世界観の構築が出来る人が減ってきています。
作者も読者も、SFとファンタジーについては、先人が構築した世界観を流用している感がみられるからです。

日本でロボットSFアニメと言えば、「ガンダム」。
最近じゃ、この世界観を流用したSFが多いです。
・宇宙に住んでいる人達の居住区域はスペースコロニー。
・武装兵器は、人型巨大ロボット。
・軍事組織の構成は、現実の組織の亜流。
他にもいろいろありますが、そういう共通認識があるので、いちいち現実の世界と違う世界観の説明を省いているように思います。
この他に個人的には、「敵のパイロットに、ヒゲを生やしたオッサン」「武器・兵器の名前にドイツ語」を使うと、ヲタ受けが良いというのもあるかと・・・。


日本でファンタジーと言えば、小説よりも「ドラクエ」「FF」等のゲームが有名ですよね。
・町の外には、モンスターが一杯。
・敵を倒すと、経験値と金品が手に入る。
・魔法には、火、水、雷系等の属性がある
他にも、先人達が築いた常識のおかげで、いちいち現実にはあり得ない事を細かい解説無しで読者は素直に受け入れています。
この他に個人的には、「感動の長編大作」と銘打ったもので感動できるものなんて、今まで一つもないというのもあるかと・・・・。
大昔からファンタジーゲームをやっている人ならば、最初の冒険の場所は必ず「ゴブリンのいる洞窟」であるというのも付け加えておきましょう。

空想科学研究所も、今回のアンパンマンについても、「現実にはあり得ない常識だけれど、それを素直に常識としている読者」に対して、「現実にあり得る常識」で説明しているところに面白さがあるんですよね。

今度、アンパンマンを見る機会があった際、ジャムおじさんを見る私の目が変わっているような気がします。
決して自分のお子さんには、「ジャムおじさんは、実は死の商人なんだよ」なんて言わないように。

Posted by kanzaki at 09:40 | コメント (0)
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