2021年09月20日

映画「ムーンライト・シャドウ」の感想〜ファッション雑誌に掲載されているアーティスト系なモデルの写真を眺めているかのような感覚

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●映画「ムーンライト・シャドウ」公式サイト
https://moonlight-shadow-movie.com/

原作:吉本ばなな × 主演:小松菜奈 × 監督:エドモンド・ヨウ


(小松菜奈主演『ムーンライト・シャドウ』予告映像)


吉本ばななさん原作の映画化です。
小松菜奈さん初の単独主演映画でもあります。
小松さんファンとしては行かねばと鑑賞してきました。


ファッション雑誌掲載のアーティスト系なモデル写真を眺めている感覚でした。


キャストの選出が秀逸。
誰一人ルックスで被る人がいないし、とても印象的。
記憶に残りやすい。


外国の監督さんだからなのか分かりませんが、その選出の基準が、やはりアート系ファッション雑誌な感じです。
この映画は、この世界観へのトリップ代に対価を支払うものだと思えばいい。



・原作は読んでいません。
予告編すら観ず、予備知識ゼロでの鑑賞です。
公開最初の日曜日、新潟市のイオンシネマ新潟南にて、午前11時40分上映回を鑑賞しました。
1日の上映回数が2回しかなく、そのうち1回は夜中なので、実質11:40分上映回しか観るチャンスがありません。
お客様は20人〜30人ぐらいいました。
割かし年配の方が多かったです。
女性単独客も多く、原作者ファンなのかなあと思いました。


・小松さん演じる主人公が、交通事故で死んだ恋人と再び出会うお話しです。
映画「黄泉がえり」的な。
ストーリー的なものは上記予告編で語っているもので全てです。
それを92分に散りばめています。
説明的なものどころか、明確な台詞も少なめな印象です。
死んだ人が一時的にやってくることについてのSF考証は一切なし。
独特な音楽を背景に、文章少なめのアーティスト系ファッション雑誌のスナップショットを観ている感じです。
ミニシアターで上映される実験的なショートフィルムの雰囲気が漂います。


・撮影されている景色自体は、日本のどこでも見られるようなもの。特別感はないです。
登場人物も別段、特別な性格や人生を送っているわけじゃありません。
むしろ、各登場人物の設定がほぼ無い。
(主人公の彼氏の弟がちょっとだけある感じ)
むしろ、説明してほしい。
特に、臼田あさ美さん演じる怪しい人物は、特殊能力があるけれど、結局最後まで何者なのかよくわからない・・・。


・登場人物のドアップが多かったなあという印象です。
体全体での演技はそう多くなく、そこまで動きのある演出も無い。
お芝居自体はあまり要求されていない感じ。
むしろ、ご本人達の普段の姿を要求されたのかなあ。


・途中、主人公の彼氏が交通事故で死んだ以降、小松さんはノーメイク風で心を閉ざした表情ばかり。
最初は、メイクも華やかでキラキラ感があったし、笑顔もたくさんあったから、そういうのをもっと観たかったなあ。
だって、単独初主演映画だし。


・「死者がほんの少しの時間だけ蘇る」という意味では、和製ホラーなのかな。
蘇るのは、この物語のクライマックスです。
ところが、そこまで細かく描いていません。
そのあと主人公は、急に心が元気になって前へ進もうと決意します。
蘇った彼氏と再会するシーンはほぼぶつ切り。
その再会でどのようなやりとりがあって、どうして心が動き始めたのかが分かりませんでした。
物語は、心の動きであると思いますので、もうちょっと細かく描いてほしかったなあと思います。


・なんとなく、食事のシーンの印象が強い映画です。
しかも、主人公の彼氏の弟は料理が得意です。
だからてっきり、彼氏が死んで悲しんでいる主人公をお手製の料理を食べてもらい元気にするのかと思ったら、そういうのは無し。
原作では料理や食事は、どう取り扱っていたのかなあ。


・映画のキャッチコピーが「ひとつのキャラバンが終わり、また次が始まる」とあります。
実際に観ても、どこにも「キャラバン」の要素がないんですよね。
原作にはあるのかも。


・映画を観ると、この独特な世界観と時間の流れをどうやって原作は文章だけで表現したのかと気になってしまいます。
実際、鑑賞後に原作を体験する人は多いかも。



【小松菜奈さん出演映画関連】


●映画「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」の感想〜SFですが、宮本輝さんの小説「錦繍」のような感覚。命や運命のせいにして生きるのではなく、過去を受け入れ、自分を受け入れ、お互いがそれぞれの道を前向きに生きるようになるストーリー
http://kanzaki.sub.jp/archives/003765.html


●【100点満点】映画「坂道のアポロン」を観た感想〜今の時代、観る者の心を傷つけない作品は貴重です。三木孝浩監督は、新しい時代の大林宣彦監督になりえると思う
http://kanzaki.sub.jp/archives/004028.html


●映画「恋は雨上がりのように(小松菜奈さん・大泉洋さん主演)」の感想〜人生の「再生」を描く根幹は小説「錦繍(著:宮本 輝)」、映画「ミッドナイト・バス(主演:原田泰造)」と共通していている
http://kanzaki.sub.jp/archives/004083.html


●映画「糸」の感想〜平成という約30年を描いたお話しだったので、TBS金曜22時ドラマ枠の長丁場で観たいなあと思いました
http://kanzaki.sub.jp/archives/004648.html

Posted by kanzaki at 16:56
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