2020年08月23日

映画「糸」の感想〜平成という約30年を描いたお話しだったので、TBS金曜22時ドラマ枠の長丁場で観たいなあと思いました

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(この映画で一番好きなシーン)


●映画「糸」公式


「平成」という約30年間を2人の男女を通じて描いた作品です。
野島伸司先生のTVドラマや、宮本輝先生の小説を彷彿とさせます。


テイストは「平成」と言うより、携帯電話やネットの無かった「昭和」な感じ。
ひたむきに生きた人間は、最後にはささやかでも幸せになれる展開は素敵なものです。



これだけ大勢の出演陣と、平成に巻き起こった出来事を描くには、130分では足りなかったかなあと思いました。
テレビドラマで、じっくりやってほしかったです。
メインの出演陣のキャラが良かったので、それぞれをもっと掘り下げてほしかったです。


どんどん時代が進んでいくから、ひとつひとつのエピソードに費やせる時間が無かったように思います。
尺の都合かもしれないけれど、ラストの展開は、「携帯電話をかければ一発解決じゃん」とも感じました。


この映画を全部、オール北海道ロケにして、全てのエピソードを道内だけに費やしていたら、もっと深く掘り下げられたのになあと思います。
正直、小松菜奈さんの方のお話し(東京、沖縄、シンガポール編)はバッサリとカットしても良いのでは?
そうすると、ファンである私には困ってしまうのではありますが・・・。


予告編とかポスターを見ると、北海道の夏の代表的な花である紫色のラベンダーが印象的なのに、本編では一切観なかったような・・・。もっと北海道の素敵な景色を観たかったなあ。


小松菜奈さんのパート部分をカットした分、主人公の菅田将暉さん、妻の榮倉奈々さん、その間に生れる娘の3人を中心に描いていて欲しかったなあ。
榮倉奈々さんが、闘病しながら子供を育てるお話しは、観ていて辛いのではありますが、生きる強さみたなものも感じさせました。


今まで生きる目標が定まっていなかった菅田将暉さんが、妻の死後、北海道のチーズ工房で、世界を相手に出来るチーズ作りを日々研究します。
幼い娘を育てながら、自宅でも頑張っています。
このエピソードを後半の主軸にすれば、もっと深く掘り下げられたように思います。


そうすれば、子ども食堂の女主人を演じる倍賞美津子さん、主人公が働くチーズ工房のチーズ作りの師匠である松重豊さんをもっと活躍できるキャラにできたのに勿体ないです。


小松菜奈さん演じるヒロインは幼いころ、家庭内暴力で辛い思いをして東京へ行ってしまいます。
一層のこと、榮倉奈々さん演じるキャラの過去のエピソードにしてしまった方が良かったんじゃないかなと。
榮倉奈々さん演じるキャラが、闘病する前から明るく優しい性格な理由は、実は真逆な理由があったからという感じにして。


菅田将暉さん演じる主人公だけ、両親のエピソードが全くないのは不思議でした。
学生時代はプロのサッカー選手を目指していたのに、どうして挫折し、そしてやる気なさげにチーズ工房で働いていたのかも知りたかったです。
やはり、上映時間の都合なのかなあ。


菅田将暉さんが、榮倉奈々さんや娘と一緒にデパートへ行った際、洋服を見ている2人を少し離れた場所で涙するシーンが好きです。
あそこで私自身も泣きました。
なんでもないシーンなのですが、闘病しながらも娘を育てるその姿にぐっときました。


榮倉奈々さんはこの作品で、約7キロ減量したそうです。
本当に闘病生活をしている人に見えました。
ご本人にはお子さんがいるからでしょうか、娘役の子と接する姿に母性を感じました。
ご本人自身、きっと性格が良いのだろうなあというのが、画面からにじみ出ていました。


榮倉奈々さんが演じたキャラがメインヒロインで良かったのではないでしょうか。
菅田将暉さん、榮倉奈々さんのパートだけでも成立する映画だと思うし、もっと深く観てみたいなあと思いました。
TBS金曜22時ドラマ枠にて長丁場で。


「握った手を離さない」、「泣いている人がいたら抱きしめてあげる」、どんぐりを投げつける(観たら意味が分かります)・・・これらを何度も描いていました。
ちゃんと意味がある脚本と演出。
最近、こういう技術のある作品が少ないので感心しました。


小松菜奈さん、今まではどちらかというと、「ドラえもん」のしずかちゃんポジションの役が多かったですよね。
今回は自分から動く役だったので、ファンとしてはうれしかったです。
モデル然としたルックスなのに、なぜか田舎の「子ども食堂」で、子供たちとご飯を食べているシーンとか、不思議と馴染んでいたなあと思いました。
この方の魅力は、モデルのルックスという見た目と、性格のギャップにあると思います。


小松菜奈さんは、シンガポールでの仕事で挫折し、日本食堂で一人まずいカツ丼を食べるシーンと、子ども食堂のシーンの対比が良かったです。
次回作、映画「さくら」「恋する寄生虫」も楽しみですね。


東日本大震災で、岩手県で被災した女性を演じる二階堂ふみさんのエピソードももっと観たい。
斎藤工さんが演じた、事業で失敗し沖縄に逃げた男性のその後も知りたい。
菅田将暉さんの娘役の子の演技が素敵だったので、妻の死後、若い父と子のエピソードをもっと観たい。


名曲「糸」を題材にしているはずなのに、あまり「糸」感がありません。
運命の赤い糸みたいな安直なものだけじゃないはず。
きっと、もっと深く掘り下げられるはず。


う〜ん、やはり尺がまったく足りません。
TBS製作なので、是非ドラマ化してほしいです。
当然、同じ出演陣でお願いします。


Posted by kanzaki at 2020年08月23日 07:19