2011年10月10日

「ロートル新聞」〜ベテラン社員の自己実現とは?

「ロートル新聞」なるものを毎月発行している会社があります。
これは、定年間近な社員と、退職後に嘱託として働いているベテランが作成しています(産業雇用安定センターの冊子「かけはし」より)。

この新聞は、過去の仕事上の問題発見と解決の事例を紹介しています。
部門は限定せず、なにか将来のヒントになりそうなものは、全て記事にしています。

発案者の考えはこうです。

少しでも会社に恩返しがしたい。
後輩たちの役に立ちたい。
けれど、後輩たちを集めて喋るのは押し付けがましい。
そんなんじゃ聴いてもらえないだろうから、無料の新聞にしたのです。
一つでも参考になる話題があれば幸いと考えています。

定年退職の際、「老兵は黙って去り行くのみ」と考える人もいます。
上記の新聞のような形で「最後のご奉仕」を企画する人もいます。

ご奉仕というと「会社人間」のようですが、そうではありません。
自分の体験を残す、それを後の人に託すというのは、他者への奉仕であると共に、当人にとっても紛れも無く自己実現の行為なのです。

「マズローの欲求5段階説」というものがあります。

●自己実現理論 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E5%B7%B1%E5%AE%9F%E7%8F%BE%E7%90%86%E8%AB%96

mazuro01.jpg

人から尊敬を受ける奉仕は第四段階の欲求とされ、自己実現はその上に位置する最高の段階とされています。

世の中には退職後、社会から孤絶した生活の中に、自己実現を見出そうとしている人もいます。
しかし、後に続く者たちへの奉仕の精神と自己実現とが重なり合う場があるとすれば、それこそ「社会人」として冥利に尽きるのではないでしょうか。

50歳も中頃になると、会社員は二極化するそうです。

役職定年でラインを離れた後は、
急速に会社への関心を失う人と、
最後のご奉仕とばかり自分の知恵や技術を後輩たちに伝えようとする人に分かれます。

傾向としては、前者の方が多いです。
もうすぐ離れる職場の問題より、定年後の身の振り方の方が切実な問題だからです。

役職を奪われ、年収も減少した人の中には、会社に対して敵愾心(てきがいしん・敵に対して抱く憤り)を抱く人もいます。
最後のご奉仕に精を出すことに前向きなのは少数派です。

※※※

中間管理職である私としましては、上記のような定年という言葉は、まだ先の話しです。

定年後に起業しようとかは思わないでしょう。
私は何気に現実主義者なので、無謀な事は考えません(やるとしたら、「社内起業」を選択)。
また、必要以上にお金を欲したいとも思いません。

自分が今まで、社会と接点を持ってきた事の知識・経験・人脈が、何かを行うにしても成功率を高めます。
そう考えると、会社でやってきた事が一番の武器になります。

その武器を「お金儲け」と「社会奉仕」のどちらで利用したいかと言えば、私は「社会奉仕」を選びたいです。
なかなか「お金儲け」と「社会奉仕」は両立できないものです。
その両立の可能性が高いのは行政でしょう。

誰に対して「社会奉仕」をしたいかと言えば、最優先は、自分を信頼してくれた人・組織・コミュニティーでしょう。
私は大きな人材ではありませんから、社会全体に影響を与えるほどの奉仕は出来ません。
身の丈にあった、自分に出来ることをしたいです。

冒頭の「ロートル新聞」は、非常に現実的かつ効果的です。
ある意味、社内企業的側面もあるし、社会奉仕・自己実現の側面もあります。
大きな事を打ち出さず、自分の出来ることで始めているのが好感を持てます。

お金儲けを考えず、社会奉仕を優先すると、不思議と人の縁が広がります。
自分の能力の限界を知り、卑下するのではなく謙虚に生きて、人の話しに耳を傾けると、これまた人の縁が広がります。
ここ数年、それを自分の体で実感しています。

お金を貯めるより、心に恩を貯める事の方が、良い結果を生むんじゃないかなあ。
「生きていた事の証」って、こういう事なのかも。

Posted by kanzaki at 22:12
Old Topics