●傷のあるリンゴ(著:外山滋比古)より
青森へ行って帰りぎわ、時間があったので朝市をのぞいた。
さびしそうにおばあさんが、傷のあるリンゴを並べて売っている。
傷のあるリンゴがうまい、ということをいつどこで覚えたか記憶にない。
ただ、傷のあるリンゴの方が糖分が多く、甘くなるのだという話を聞いたことがあるのだ。
傷のあるのがうまいのは、リンゴだけではない。
人間でも、きれいで、非の打ちどころのないのより、ちょっと、欠けたところのある方が、いいように感じられる。
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失敗という心の痛手を受ければ、それを癒す努力は自然である。
壁につき当たったら、乗り越えようとするのが人間である。
そこでへなへなと、くじけてしまうようなら、いくら幸運に出遭っても、それを生かすことができない。
あらゆる入試をすべて一度でパスするような秀才、才媛もいないことはないが、一生を終えるころにたどり着くところは案外、平凡なものである。
試験に落ちて進路変更を余儀なくされたような人が、悪戦苦闘、傷だらけになって走る人生マラソンのゴールはおどろくほど見事である。
失敗は幸運の女神の化身であると考える人がすくないのは不思議である。
傷のあった方がうまいのはリンゴにかぎらない。
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われわれは不幸、失敗の足りないことをこそおそれるべきである。
傷ついてうまくなったリンゴの教訓は貴重である。
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【コメント】
傷の無いリンゴも、傷のあるリンゴも共に良いところがあります。
どういう視点で見るかが鍵。
ある意味、リンゴそのものよりも、それを品評する人間自体が品評されている面がありますね。
どのような生き方をしてきたかで、その人が世の中を見る観点が異なってくる。
「どのように(相手から)見られるか」ではなく、「どのように(自分が)見るか」という姿勢で生きたいものです。
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