2010年02月02日

NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【1・行旅死亡人(こうりょしぼうにん)とは】

先日のNHKスペシャルは、無縁社会についてでした。

●NHKスペシャル 無縁社会〜“無縁死” 3万2千人の衝撃〜
http://www.nhk.or.jp/special/onair/100131.html

2010年1月31日(日) 午後9時00分〜9時58分総合テレビ
2010年2月3日(水)午前0時45分〜1時43分(再放送)

自殺率が先進国の中でワースト2位の日本。NHKが全国の自治体に調査したところ、ここ数年「身元不明の自殺と見られる死者」や「行き倒れ死」など国の統計上ではカテゴライズされない「新たな死」が急増していることがわかってきた。なぜ誰にも知られず、引き取り手もないまま亡くなっていく人が増えているのか。「新たな死」の軌跡を丹念にたどっていくと、日本が急速に「無縁社会」ともいえる絆を失ってしまった社会に変わっている実態が浮き彫りになってきた。「無縁社会」はかつて日本社会を紡いできた「地縁」「血縁」といった地域や家族・親類との絆を失っていったのに加え、終身雇用が壊れ、会社との絆であった「社縁」までが失われたことによって生み出されていた。
また、取材を進めるうちに社会との接点をなくした人々向けに、死後の身辺整理や埋葬などを専門に請け負う「特殊清掃業」やNPO法人がここ2〜3年で急増。無縁死に対して今や自治体が対応することも難しい中、自治体の依頼や将来の無縁死を恐れる多くの人からの生前予約などで需要が高まっていることもわかって来た。日本人がある意味選択し、そして構造改革の結果生み出されてしまった「無縁社会」。番組では「新たな死」が増えている事態を直視し、何よりも大切な「いのち」が軽んじられている私たちの国、そして社会のあり方を問い直す。


内容としては、かなりハードですよ。
精神的ダメージが大きかったです。
放送後、ネット上でも大きな話題になっていました。
なにせ、自分自身が将来、その取材対象になってもおかしくないのですから。
どんな内容の番組だったかをご紹介いたします。
この数時間後、再放送もありますので、興味がある方は御覧下さい(視聴には、かなりの勇気が必要ですよ)。


ここ数年、警察が捜査しても名前さえ分からない身元不明の遺体が増え続けているそうです。

今、都市部で急成長している新たなるビジネスがあります。
亡くなった人の遺品や遺骨を専門で整理する「特殊清掃業者」です。

特殊清掃業者が、亡くなった人のアパートの一室で遺品を整理している映像。
その亡くなった人の部屋に、亡くなった人自身の遺骨がありました。
なんと、家族が引き取らなかったのです。

遺骨は、ゆうパック (小包郵便)で無縁墓地へ送られました。
送り状の品名欄には、「陶器1個」と書かれています。
ゆうパックのダンボールの中に、遺骨の収まった箱を入れ、普通の小包と変わらない状態で送られます。
命の尊厳とか、そういう単語が脳裏からすっぽりと消えてしまう衝撃的な映像でした。

東京都足立区にある無縁墓地。
ここに持ち込まれる遺骨の数が増えており、自治体は対応に追われています。
遺骨の入った箱を白い布で包んであるのですが、その布には「故 不詳男性殿」と書かれた紙が貼られていました。
引き取り手の無い遺骨は、自治体がまとめて埋葬します。
映像では、骨壷をひっくり返して、一つの大きな器に遺骨を移し替えていました(全員の遺骨が一緒になり、誰とも区別がつかなくなる)。

「無縁死(むえんし)」・・・この新たな死。
異常な事態が我々の知らないところで起きているのです。

NHKは全ての自治体に調査をはじめました。
引き取り手が無く、自治体によって火葬・埋葬されている人の数を調べました。
その結果、分かっただけでも一昨年一年間で3万2千人にも無縁死が起きていることが分かりました。
確か、日本の一年間の自殺者が3万人だったかと思います。
それと同じ人数だったとは・・・。
無縁死と自殺。この本人が望むはずも無い結末を迎えた人がこれだけいるなんて、やはりこの国はちょっとおかしいです。

無縁死の多くが、単身者・・・一人で暮らす人が多かったです。
気づかないうちに水面下で起きていた無縁死。
今、一人で生きる人達の間で、不安が高まっています。

会社や家族との繋がりを失い、孤立して生きる人達。
今、無縁社会ともいえる時代に突入しています。

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無縁死3万2千人の中には、身元の分からない人が、年間1千人いるそうです。
そういう人達の遺品(財布・携帯電話)は、警察から区役所の方へ渡されます。
そういう人達の遺品を保管してある段ボール箱には、「行旅死亡人(こうりょしぼうにん)」と書かれていました。


●行旅死亡人 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%8C%E6%97%85%E6%AD%BB%E4%BA%A1%E4%BA%BA

行旅死亡人(こうりょしぼうにん)とは飢え、寒さ、病気、もしくは自殺や他殺と推定される原因で、本人の氏名または本籍地・住所などが判明せず、かつ遺体の引き取り手が存在しない死者を指すもので、行き倒れている人の身分を表す法律上の呼称でもある。


国が発行している官報。
私も仕事柄、それに目を通しています。
主に、会社の決算公告や株式関係についてです。
会社法が施行されてから、株主総会終了後に官報へ10万円以上の費用を掛けて掲載する必要が無くなってからは、ただの一読者として読んでいました(手続きが面倒だったので非常に嬉しい)。

その官報には毎日のように、行旅死亡人の記事が掲載されています。
遺体の引き取りを親族に呼びかけるためのものです。
まあ、官報を個人が目を凝らして読むなんてことは殆どありえませんから、単なる形式上と私は思います。

身長、所持品、氏名、性別。
亡くなった人の情報は、僅か数行です。
何故人々は社会との繋がりを失っていき、無縁死していくのか?

NHKの取材班は、官報に掲載されていた行旅死亡人のひとつの記事に注目しました。
自宅の居間にいたにも関わらず、名前が分からず氏名不詳となっていたからです。
取材班は、この男性の死までの軌跡を追うことにしました。

(続く)


官報はいつも読んでいましたが、正直、行旅死亡人の記事は気にしていませんでした。
恥ずかしながら、その言葉の意味すら分かっていませんでした。
手元にある官報を改めて開いてみました。

kouryo01.jpg

このような記事が沢山、官報には書かれているのです。
その人には何十年もの歴史があり、その中で喜怒哀楽を出しながら生きてきたのです。
しかしその最後、こんなにも無味乾燥な記事で終わりを迎えたのです。

テレビの中ではなく、こうやって目の前にある官報でリアルに直視した途端、私は少し気分が悪くなってしまいました。
人間というものを哲学的に見てきた自分の心を真っ黒に汚されたように思ったからかもしれません。
けれど、これが現実。
そして自分自身も、同じようになる可能性だって大いにあることに寒気を感じました。


●次回の記事: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【2・身元不明の死】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002016.html


*NHKスペシャル無縁社会(全6回)

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【1・行旅死亡人(こうりょしぼうにん)とは】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002015.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【2・身元不明の死】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002016.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【3・薄れる家族とのつながり】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002017.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【4・会社とのつながりを失った人々】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002018.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【5・"生涯未婚"の急増】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002019.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【6・希望の光】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002020.html

Posted by kanzaki at 21:59
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