(NIPCOM 第16回プラモデル展示会より)
●知性の磨き方 (著:齋藤 孝)より
夏目漱石が神経衰弱に罹った要因は、彼が背負っていたもの(それはすでに述べたように近代日本人の運命についての問題であるわけですが)を知らなければ理解できません。
漱石が背負っていたものが何かを考えるヒントは、彼が明治 44(1911)年8月に和歌山県で行った講演の採録『現代日本の開化』(ちくま文庫「夏目漱石全集 10」所収)に記されています。
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漱石が生きていた文明開化の時代、世界の覇権は西洋の列強諸国が完全に掌握しており、経済も科学技術も文化も、あらゆることは西洋中心に発展していました。
日本が割って入ろうとするならば、日本人は「気兼ね」、つまり居心地の悪さを感じざるを得ないだろう、と漱石はいっています。
漱石がいうように、日本の近代化が外発的、つまり外圧をきっかけに否応なしに進められたことは否定のしようがないことであり、そのような自然でない近代化を進めれば、社会の至る所に 歪みが生じるのも当然でした。
しかし当時の日本には、一日でも早く列強に追いつかなければ国が滅んでしまう・・・・・・(中略)・・・・・・・西洋の社会制度や技術、文化・芸術に至るまでたとえ猿真似と呼ばれようと必死に真似していく以外の道はなかったのです。
日本という国家と日本人は、今後自分を見失いがちになるのは避けられないだろう。
そしてその中で「滑るまい」、つまり自己同一性を保とうとするなら、もはや神経衰弱に掛からざるをえないだろう、というのです。
〈少し落ち着いて考えてみると、大学の教授を十年間一生懸命にやったら、たいていの者は神経衰弱に 罹りがちじゃないでしょうか〉
〈滑るまいと思って踏張るために神経衰弱になるとすれば、どうも日本人は気の毒というか 憐れというか、言語道断の 窮状 に陥った〉
〈私には名案も何もない。
ただできるだけ神経衰弱に罹らない程度において、内発的に変化して行くが好かろう〉
とも述べています。
しかし、聴衆にそう語りかけている漱石自身、実はこのときすでに神経衰弱を相当にこじらせているのです。
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【コメント】
昔の話しなのに、何故か令和の時代を感じさせますね。
そして、ごく一般の会社員が置かれている精神状態そのものではないかと。
全員が神経衰弱になるか、無敵の人になるか・・・・・そういう極端な状態。
ワークライフバランスという言葉が浸透せず、失笑されている現代。
その言葉は、プラミア厶フライデーぐらい、使うのも恥ずかしいものとなっています。
外から吸収するだけではなく、内側から発するものを原動力にしていないと、いずれ息切れして止まってしまう。
令和を生き抜くのは大変なことです。
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