2005年01月11日

新聞やテレビでは伝えられない現状【スマトラ沖地震】

FMステーションJ-WAVE(http://www.j-wave.co.jp/)にて「JAM THE WORLD」と云う番組がオンエアされています(月〜金、20:00〜22:00)。
昨晩は、「新聞やテレビでは伝えられない現状」と称しまして、現地から帰ってきたばかりのビデオジャーナリスト・神保哲生さんがゲスト出演し、現地の模様を語っていました。

【新聞やテレビでは伝えられない現状】
インドシア・スマトラ島沖で発生したマグニチュード9.0の地震から2週間以上が経過しました。
15万人以上の犠牲者を出した今回の大地震。
WHO=世界保健機関は今後、伝染病などで地震と同じくらいの数の犠牲者が出る危険があると警告しています。
また、タイやインドネシアなどの被災地では生き残った子供たちが大量に行方不明になり、人身売買を行う組織が言葉巧みに近づき、国外に連れ去る事件が横行していると伝えられています。
果たして、被災地では今、何が起きているのでしょうか?
そこで今夜は、被災地で取材を行ったビデオジャーナリスト・神保哲生さんをスタジオにお招きして、新聞やテレビではあまり伝えられないスマトラ沖地震の現状についてお話を伺いました。

・・・そんな訳で、ラジオで語られていた内容を掻い摘んでご紹介し、検討していきたいと思います。
今回は津波による被害が特徴の地震でした。
海岸から200〜300メートルぐらい迄が被害甚大な訳ですが、逆に云うと海岸から5キロも行きますと、それほどの被害でもないようです。
現地でも、場所によって被害に格差があるようです。

また、地震の際は生き残った子供達が、その後になってから大量に行方不明になっているそうです。
これは人身売買業者が、震災のどさくさに紛れて連れ去っているからです。

今回、被害が大きかった場所は、もともと貧困な地域が多かったようです。
この貧困は、内戦等によるものです。
この地域では地雷の問題を以前から抱えていましたが、今回の震災による津波により、その地雷の埋まった地域が流されてしまったそうです。
つまり、地雷が無いと思っていた所に地雷が流され、それを踏んで被害にあってしまう危険があると云う事です。
津波の際、ゴミ等と一緒に流されてしまい、通常の地雷の埋まり方とは違うので、発見が非常に困難となっています。
地雷は単純な構造なので、雨風を受けてもビクともしません。
津波によって流された際でも、内側の部分は影響を受けていないので、踏めば爆発してしまうのです。
政府はジャーナリスト達に、「地雷については問題ない」と云っているのですが、神保さんが実際に行ってみたところ、「問題ない」と云っている最中も、地雷除去作業を行っていたそうです。
しかもですね、地雷の撤去は政府の方だけがやっているのではありません。
ゲリラ側の依頼で除去している人達もいるのです。
今回は敵味方なんて云っている場合では無い為、憎しみあう同士が地雷除去を共同でやっているのです。
このような光景は、戦いが始まってからの長い年月の中で初めてだとか。

一番被害の大きかった奥地へ援助物資が届いたのは、震災から2週間後の事でした。
その現地では二次災害の危険に侵されています。
それは、津波等によってめちゃくちゃになった地域に病原菌が蔓延しているからです。
不衛生の為、最近では赤痢が広まっているそうです。
不衛生を解消するには、やはりトイレの問題が一番です。
しかし現在、1000人に2個の割合程度しかトイレが確保されていないそうです。
それしか無いと、やはり人々は地面等で用を足してしまいます。
その為に不衛生になって病気が流行ってしまうのです。
このトイレ不足や、女性用生理用品・下着の確保が、二次災害を防止する重要課題です。

津波が起きた直後は、切り傷等の外傷が中心でした。
これらは、世界各国のNGO等が一斉に現地入りして対応したので、何とかなりました。
時間の経過と共に、報道される時間も減り、救助活動をしていた人達が現地から去っています。
しかし、二次災害はこれから起きるのです。
地震による直接的被害者と同じぐらいの数の人達が被害にあう恐れがあるそうです。

二次災害・・・不衛生からくる病気、地雷の問題の他に、「風評被害」と云うものがあるそうです。
つまり「噂」です。
まずは、「津波の上に魔物が乗っていた」と云うもの。
多宗教の地域なのですが、こういった迷信まがいのものが、人々を不安にさせています。
地震の際に津波が襲ってくると、一瞬、辺りは暗くなるのだそうです。
それは、いろんなモノを巻き込んだ巨大な波が壁のようになるからです。
他には、「海岸には死体が一杯あった。そして、その死体を食べた魚を人間が食べるとオカシクなる」と云うもの。

こういった迷信的なものの他に「逆風評」と云うものも起きています。
冒頭、地雷が津波で流されたと書きました。
つまり、今まで何でも無かった自分の家の庭に、地雷があるかもしれないのです。
「逆風評」と云うのは、こういった地雷の問題を隠し、「問題ない」とアナウンスしている事です。
どうして逆の事を云うのかと申しますと、地雷が辺り一面にある事を他国の人達が聞いたら、援助活動で現地に来てくれなくなるからです。
支援をしてもらえなくなる恐れから、こういったアナウンスをしているのですが、これはこれで危険です。
実際に現地入りした人達が、地雷の存在を知らずに被害に遭うかもしれないからです。

スリランカ、アチェ等は、貧しい生活をしている人達が多くいます。
その貧困が、今回の地震・津波による被害を大きくした原因。
内戦、ゲリラの問題を抱えた地域なのですが、今、各国の協力の上で、災害援助(食料の送付等)をして何とか乗り越えたとしても、こういった内戦等の根本的問題を解決しない限り、また災害で大ダメージを受けてしまいます。

ビデオジャーナリスト・神保哲生さんは最後に、以下のように話されています。
災害直後は、メディアが随時報告をしていたが、それも時間の経過と共に時間・量が減ってきている。
支援団体も帰ってしまっている。
しかし、話したように、まだまだ問題を抱えているのです。
長期的支援をどうやって維持していくかが、今後の課題ではないだろうか。
そういった考えのNGO団体をネット等で探し、参加・協力をして欲しいと云っていました。また、日本は技術とお金を沢山持っています。
日本のちょっとしたお金で、現地の大勢の人達が救えるのです。
そういった形でも支援を続けてもらいたいとの事でした。

・・・私はこのラジオを聞いて、昨年の洪水や中越地震を思い出しました。
被害にあった直後は、皆が力を貸してくれるけれど、時間が経つと直接的被害を受けた人や関係者を残し、殆どの人達が忘れているんですよね。
被害を受けた地域にあります建物の復旧はこれからです。
私の会社の建物も、復旧作業を始めたばかり。
建物を一から造るのとは違い、日常業務をしながらの修理なので、スムーズにはいきません。
しかも、被害は非常に複雑かつ入り組んでいる。
最初は見つからなかった被害が、今ごろになって出てきたりしています。
更に、この大雪。
うちの会社の建物は、積雪による被害には大丈夫だと云われていますが、それだって確証はない。
企業レベル、個人レベル共に、まだまだ戦いは続いています。
被害は災害直後だけではないのです。
今でも物理的・精神的に現地の人々を苦しめています。
私はそういった建物の修復という立場から協力をしていますが、もっともっと協力・支援を続けていかないといけない・・・ラジオを聞いてそう思いました。

Posted by kanzaki at 2005年01月11日 01:43 | トラックバック (0)