2008年07月20日

「歌仙」の「付いている(ついている)」とは

◎お知らせ:
現在、2008年セカンドシーズン(5月〜8月)は、仕事が忙しくて更新がなかなかできせん。
本格的な再開は、9月からになります。
残業で日付変更線を超える日々とパワハラに疲れました・・・。


皆さんは、「歌仙」というものをご存知でしょうか。
短歌の上の句5・7・5を一人が詠みます。
二人目が下の句7・7を詠んで、5・7・5・7・7で一首になります。
そして三人目は、その下の句のみを生かして、新たに上の句5・7・5を詠み、5・7・5・7・7で次の一首が出来る・・・こんな形で続ける連句形式の通称を「歌仙」というのです。
作者は複数で行い、その仲間のことを連衆といいます。

この歌仙には重大なルールがあります。
三人目の5・7・5は、最初の5・7・5から、風情や景観ができるだけ離れているのが良いとされています。
近すぎると、「付いている(ついている)」とされ、評価が低くなります。
一句ごとに気分を転々と変え、歌の世界を広げていくことをよしとしているのです。

大学の先生によりますと、「付く」という事を嫌うのは、何もこの歌仙だけではなく、日本文化の根底をなしていると考えています。
催し物などで主催者は、どれだけ違った趣向の出し物を並べるかに知恵を絞るのです。
最近、能楽鑑賞会を観にいったそうです。
二日間に渡る催し物だったのですが、両日とも非常に質の高いものでした。
しかし、二日間とも全く同じ内容でして、それを別々の演者がやる形でした。
つまり、「付いている」状態だったのです。
これに対し、新しい美意識への変化なのかと疑問を持ったそうです。

その話しを聞いて思ったのは、「付いている」のは何も能の世界だけではなく、あらゆる芸事に見られる傾向なのではないかという事です。

例えばテレビ番組。
どのチャンネル、どの時間帯を見ても、大抵似たような内容です。
ここ数年は、お笑い芸人を大量投入し、ワイワイガヤガヤと騒ぎ立てる内容が多いです。
そして今年に入り、相変わらず出演している芸人やタレントは似たような人ばかりですが、ほんの少し趣向を変え、クイズ番組が増えました。
「クイズ!ヘキサゴンII 」の成功が影響しているのでしょうかね。
確かに、番組制作に費やす時間やお金が少なくても成立しますから、製作側にとってもメリットが大きいのでしょう。

歌の世界も似たような曲調、歌詞が多いですね。
そのせいでしょうか、CDの売り上げも減りました。
売り上げ3万枚程度で、ウィークリーチャート1位を取れることも珍しくありません。
とりあえず聴ければいいやという傾向もあるらしく、シングルに関しては、携帯電話による「着歌」の方へシフトしているようにも感じます。
シングル発売一週目は1位をとれても、翌週には売り上げがガタ落ちになる曲が本当に多いです。
特に、ジャニーズ系はその傾向が顕著です。
同じ曲なのに、ジャケットを複数揃え、一人で何枚も買わせる手法をとっています。
それだけ熱心なファンがいる環境を作り出したジャニーズ事務所は凄いとは思いますが、そこまでして1位がとりたいのかと疑問にも思います(しかし、誰でも口ずさめる歌を出している事には評価できます)。

テレビゲームも、一つヒットすると、亜流作品が次々とリリースされる。
その本家すら、新しい事にチャレンジせず、続編を次々とリリースする。

21世紀という世界は、20世紀で生み出した資産を食い潰す時代だと思います。
世の中の精神的停滞感は、何も不景気だけが原因ではありません。
みんな、「付いている世界」から抜け出せないのです。

世界の片隅で、こうやって細々とサイト運営をしている私ですが、なるべく偏った内容ではなく、アンテナを広げ、読んでいただいている方々の有益になるようにしたいと思っています。

Posted by kanzaki at 2008年07月20日 18:31