新聞のコラムで、こんなエピソードがありました。
友人夫婦の家で飲んでいるとき、枝豆が飛び出し、行方知れずになりました。
ひとしきり床を探したあとで、友人が「旅立ったね」とさわやかな口調で言いました。
彼の奥さんも「旅立ったね」と応じました。
彼ら夫婦の合言葉というか、解釈というのか。
探したけれども見つからないものを「旅立った」と捉えるのです。
枝豆、消しゴム、ゼムクリップ、ボタン・・・。
床にぽとりと落とした後、人知れず立ち上がり、荷物も持たずに旅立って行く。
彼らは、西日のさす駅のホームで、こちらをちらりと振り返り乗り込む。
そんな場面を思い描くと、「まあ、仕方がないか」と、前向きなあきらめとでもいった心持ちになれるものです。
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【文房具はすぐ旅立つ】
私の文房具たちは、所有者に似たのか、すぐどこかへ旅立ちます。
それも突然、ふっと消えてしまいます。
消しゴムが、特に旅行好き。
若いころはやんちゃだった消しゴムも、「最近は角が取れて丸くなったなあ」などと言われる頃、突然、旅立ちます。
過去、最後まで消しゴムを使いきった記憶がありません。
一週間前、何年も使用していたお気に入りのシャープペンシルが旅立ちました。
なんでもない日の、なんでもない場面で、「あれっ? どこ行ったっけ?」となりました。
大抵、彼れらは数日して、旅から戻ってきます。
そして、何食わぬ顔で、いつもの指定席におさまり、再び日常の中で活躍します。
またある時は、資料の間に挟まって遭難していたところを偶然、救助することもあります。
しかし今回のシャープペンシルは、一向に旅から戻ってきません。
資料にはさまっているわけでもないようです。
本格的な旅へ出てしまったようです。
こうやって擬人化すると、確かに「まあ、仕方がないか」と思えるから不思議です。
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【飴が泣く】
新潟では、「飴(アメ)が泣く」という言葉を使います。
よく、祖父・祖母が使っていました。
飴の袋や包み紙を開けたとき、表面が溶けてベタベタになっている状態のことです。
飴が溶ける様を人間が泣く様子に例えた比喩表現です。
方言ではないみたい。
ちなみに、アイスクリームが溶けても、「アイスが泣く」とは言いいません。
普通に、「アイスが溶けている」となります。
なぜか、アメちゃんだけなのです。
ネットで調べたら、この比喩表現は、新潟限定のようですね。
擬人化した表現をすると、モノに対して愛着や大切さを感じ取れます。
こういう擬人化した表現、我が地元ながら素敵だなあと思います。
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