●『茜色に焼かれる』公式サイト
https://akaneiro-movie.com/
映画「茜色に焼かれる」予告編
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【観客が満員で驚いた】
尾野真千子さん主演映画「茜色(あかねいろ)に焼かれる」を観てきました。
全国的には2021年5月21日に公開済みです。
やっと7月22日、新潟県は「ユナイテッド・シネマ新潟」にて公開されました。
新潟での公開二日目の日中に鑑賞。
映画館自体は人が少ないのに、この作品の上映スクリーンは、前列を抜かしてほぼ満員でした。
今年観た作品で一番の混み具合です。
観客は、50代後半以上の男女が多く、次いで意外にも20代ぐらいの綺麗目系女性でした。
みんな、ソロで鑑賞しているのが特徴です。
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【この作品の主人公は、尾野真千子さん以外考えられない】
尾野真千子さんが演じるのは、13歳の男の子を一人で育てる普通の主婦です。
格差社会の底辺にいたけれど、このコロナ禍で、その底すら抜けてしまった生活をしています。
彼女の武器は、冒頭のテロップで示される「田中良子(主人公名)は芝居が上手だ」ということ。
この映画は、理不尽なまでの不幸と屈辱が、この家庭を絶え間なく襲い続けるお話しです。
上映144分の殆どが不幸話し。
しかも、それらの殆どが解決することはありません。
ところがこの映画、まったく悲壮感がありません。
意図的に笑えるシーンを途中に盛り込むことで中和しているわけではありません(クスっとはしますが)。
むしろ隙あれば、エロやグロを盛り込んでくる・・・。
悲壮感が無い理由は、「主役が尾野真千子さんだから」です。
この映画の脚本は、尾野真千子さんを最初からイメージして書いたのではないでしょうか?
どんなに不幸が押し寄せようが、時には無表情で心を押し殺し、時には泣き叫び、時には怒りを爆発させ、受けたダメージを耐えまくっています。
世の中の矛盾しまくったルールの中を自分なりの「正義」と「したたかさ」で生きています。
主人公は決して、程度が高く無い考えです。
しかし、勝つことは無いけれど、「負けた」とは言わない生き方なのです。
だから観ている方は、主人公の不幸に涙することも無いし、目を背けることも無く、長い上映時間を飽きることなく見続けられるのです。
こんなタフな主婦は、尾野真千子さん以外に考えられません。
今回、客席を満杯にできたのは、まさに尾野真千子さんのおかげ。
現在、年齢39歳。
明るさ・タフさ・凶暴さが同時に感じられる存在感は、同年代の女優さんで抜きんでていると思います。
私は片親家庭で育ちました。
だから、シングルマザーの苦労を自分なりに理解しています。
尾野真千子さん演じる主人公の頑張りを観終わった後、ケーキ屋さんへ寄り、母親に甘いものを買って帰りました。
めちゃくちゃな展開のある作品ですが、「母は強し。されど守らねば」と感じさせます。
尾野真千子さんの母親役は、そういうことを感じさせてくれました。
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【最後はカタルシスが欲しい】
劇中、不幸の原因を作るのは、「男」と「金」の組み合わせです。
男から見ても、とても分かりやすいぐらいクズな男たちばかり登場します。
まともなのは、主人公の息子ぐらい。
主人公は、そんな男たちを前に、「演技」だけで戦っていくのです。
「こんなクズな男たち、現実世界にいないよ」と思っている人たちは幸せです。
世の中にはね、本当にいるのですよ。
元の人間はノーマルだったのですが、置かれた状況(とお金)で人は変わってしまうのです。
そんな中、劇中で永瀬正敏さん演じる風俗店を営むヤクザと、嶋田久作さん演じる弁護士は、まともな部類です。
決してハートフルでは無いかもしれませんが、この二人の心の中にも、自分なりの「正義」と「したたかさ」を感じました。
尾野真千子さんが演じる主人公のこの先の人生をこの二人がなんだかんだで、節目節目に助けてくれそうな予感がします。
だから、この映画の続編を観てみたいのですよね。
この3人が組んだら、大抵のことは乗り切れそう(「コンフィデンスマンJP」みたいな感じ)。
そういう意味でこの映画は、田中良子という主人公のファーストエピソードのように感じました。
今回のエピソードで結局、主人公が怒りを向けて解決したのは、自分の体目当ての同級生ぐらいなんですよね。
そこが残念でした。
敵が小物過ぎる。
劇中、夫をひき殺した上級国民や、自宅を放火した学生など、幾らでも怒りの矛先はあります。
なのにそちらへは劇中、なにも天罰がくだらないので、カタルシスがないのですよね。
昭和のTV作品で言えば「必殺仕事人」や「ザ・ハングマン」のような、法の目を掻い潜り暗躍する悪人たちに、制裁を加えるような話しではありません。
けれど、なにかしらスカっとしたものを観たかったなあ。
そういうのが無いのなら、現実やドキュメンタリーを観てれば良いのだから。
結構、画面がスカスカしたところがありました。
主人公が働く風俗店や主人公の息子が学校の教室などです。
風俗店の規模や控室からいって、そこで働く女性がもっといていいのに、風俗嬢が主人公を含めて2人しかいない。
学校の教室も、息子含めて2人しかいない。
冒頭の葬式や、主人公が昼間働くホームセンターもそうなのですが、エキストラがいないので、画面的にはスカスカしていました。
予算のせいなのかもしれないけれど、有名どころの俳優を点在させるぐらいなら、上映時間をもっと短くして内容をコンパクトにして、その分、各シーンの密度を増やして欲しかったなあと感じました。
(もしかしたら、このコロナ禍なので、感染対策だったのかもしれません)
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【2人の若手俳優に注目】
この作品の掘り出し物は、2人の若手俳優です。
主人公の息子役の和田庵さん(15歳)、主人公と同じ風俗店で働く同僚役の片山友希さん(24歳)です。
●映画『茜色に焼かれる』和田庵インタビュー 詳細記事
https://sgs109.com/n/13598/d/
●片山友希インタビュー 映画『茜色に焼かれる』
この2人の存在が、上映時間が長い本作品を支えていました。
この映画のサイドストーリーの主人公とも言えます。
息子は主人公を客観的に見ている節があるし、同僚は主人公を主観的に見ている。
トリッキーな登場人物が多い本作で、観客寄りのこの2人がいたのは良かったですね。
和田庵さんは、本作の石井裕也監督から「和製リバー・フェニックス」と絶賛されました。
なんだか分かるような気がしますよ。
結構、脱ぐとガタイが良いのも驚きます。
(いじめてくる上級生より体格が良いので、戦ったら余裕で勝てそう)
1年半のカナダ留学後、この作品に出演したそうなのですが、そのせいか他の子役とはちょっと違います。
なんていうか、周りに流れている風が違う。
これから、どんどん出てくる俳優さんになると思います。
要注目です。
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