劇場版「きのう何食べた?」を観ました。
人は些細な「ひとこと」で傷つきます。
その一方、たった「ひとこと」で救われるということが分かる作品でした。
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●劇場版「きのう何食べた?」公式サイト
https://kinounanitabeta-movie.jp/
劇場版『きのう何食べた?』予告篇【11/3(水・祝)公開】/主題歌:スピッツ
劇場版「きのう何食べた?」公開記念 5分でわかる「何食べ」ドラマダイジェスト
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・驚いたのは、観客で男性は私一人だったことです。
あとは全て女性。
20代から60代ぐらいまで満遍なくいます。
特徴的なのは、一人で観に来ている人が殆どだということです。
1番スクリーンという客席数の多い場所で、男一人というのは生まれてはじめてでした。
この作品ならではかもしれません。
・テレビドラマ、TVドラマのスペシャル版を観ていたことが大前提で作品が作られています。
これまでのあらすじ等は一切ありません。
マイノリティな部分も、ごく自然な事として描いています。
登場人物たちは、我々の目が届かないところでも生活を営み続けていました。
この劇場版は、その後を描いています。
・「本当にこの登場人物たちは、我々と同じように日々を過ごしている」と思わせてくれます。
今回は120分の中で、秋〜冬〜春の生活模様を季節の移り変わりを背景に展開。
テレビドラマだと30分ごとに切ってしまいますが、映画の場合、それぞれの季節で巻き起こった事や台詞が、後の季節のエピソードへ綺麗につながっています。
登場人物たちの台詞や心情によってうまく積み上げられていきますよ。
自然な流れで一気に観ることができるのが、劇場版ならではのメリットでしょう。
・世界観とか流れる空気がドラマと同じで、完全にファンの心理を読んでいます。
ドラマの劇場版というと大抵、スケールアップしてしまい、その作品の良さが損なわれてしまいがちです。
スケールアップしていたのは、せいぜい冒頭の京都ロケぐらい。
それもタイトルが挿入されるまでですし、作品の持っている良さを損なわずに穏やかな時間が流れます。
それ以降は、テレビドラマでおなじみの場所と登場人物で話しが展開します。
(新キャラも、世界観に馴染んでいます)
この作品は、作り手が原作の大ファンなのでしょう。
劇場版になっても、ファンががっかりさせないように作り上げています。
お馴染みの料理シーンも健在。
・脚本は、この前まで放送されていたNHKドラマ「おかえりモネ」と同じ安達奈緒子さん。
この脚本家さんは貴重な存在ですよ。
今の時代に必要なモノを持っています。
監督もテレビドラマと同じ中江和仁さん。
この二人の組み合わせでオリジナル(日常モノ)ものをやってくれないかなあ。
・アドリブがいっぱいで、演技だけじゃない素の部分が出てくるのも、この作品の魅力ですね。
大抵、内野聖陽さんが仕掛けてきて、西島秀俊さんが笑いながらポツリと返します。
このアドリブが、日常の何気ない生活を大切にするこの作品にマッチしています。
そして、ファンもニヤけてしまう楽しいひと時です。
・美容室の新キャラの男の子は、松村北斗さんが演じています。
劇場版からの新キャラですが、作品内で違和感なく存在していましたよ。
ジャニーズのアイドルグループ「SixTONES」のメンバーです。
現在放送されているNHKの朝ドラ「カムカムエヴリバディ」でのキャラとの違いに驚きました。
幅広い演技ができる方ですねえ。
これからどんどん出てくるんじゃないでしょうか。
・相手を思いやるが故に巻き上がる心情・誤解を丁寧に描いていました。
老いた親との関係とか、今の時代ならではの問題も描いていますね。
ドラマ版でも、この劇場版でも、取り上げている問題について、観ている人は何かしら自分のことと重ね合わせられます。
だから登場人物たちが、我々が観ていないところでも、その作品内で日々生きているように感じられるのでしょうね。
・テレビの深夜ドラマで料理を扱ったものはたくさんあります。
普通、そういう料理ドラマは、ドラマパートは端折って、さっさと料理や食事シーンを観たくなります。
ところがこの作品は違います。
ドラマとしての質が高いからです。
それでいて、料理シーンもしっかり観てしまう。
本当にいい塩梅です。
・この作品の脚本は、登場人物たちが口にする「ひとこと」を大切にしています。
その「ひとこと」を受け止めた相手は、たったひとことでも傷つきます。
それは、おかれた境遇とか、自身が持つ優しさ・繊細さが故です。
私たちもそうですよね。
言葉は、刃物と同じぐらい凶器になりえます。
・凶器になりえる「ひとこと」ですが、そのひとことで救われることもあります。
誰に言われたか。
そして、その人はどれぐらい相手を思いやっているか。
そういうのも含めてのひとこと。
それで人は、前へ進めたりできるものです。
・大きな事件や出来事を扱った作品だと、その繊細な「ひとこと」は扱うのが難しいです。
話しの展開がどうしても重視されがちで、心情の処理を深く表現する時間が確保しにくいからです。
そういう意味で、私たちと同じように暮らしているこの作品ならば、話しを転がすことより、登場人物の心情を描く方に深く時間を割けます。
この作品の良さは、そういうところだと思います。
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