あなたの好きな物を形容詞で五つ言ってみてください
●『サイレント・ブレス 看取りのカルテ (幻冬舎文庫)』(南杏子 著)より
【小説のあらすじ】
「サイレント・ブレス」というのは〈穏やかな終末期を迎えることをイメージする言葉〉だそうだ。
その題名どおり、本書は訪問診療を受ける終末期の患者たちの死をめぐる物語である。
主人公の水戸倫子は医療技術の研鑽がすべてと信じる大学病院の女医。
ある日突然訪問クリニックに異動させられる。左遷だと思って落胆するが、訪問先で死を待つ患者と向き合ううちにサイレント・ブレスを守る医療の大切さに気付いていく物語だ。
吉永小百合主演映画「いのちの停車場」の原作者デビュー作。
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倫子(医者)が処方箋を書いている間、綾子(患者)はコースケ(看護師)に例の問いかけを始めた。
「あなたの好きな物は?」
コースケは片付けの手を止め、表情を変えずに答えた。
「フェラーリっす」
コースケは「一生、縁はないと思いますが」と冗談めかす。
「どうして好きなの? 形容詞で五つ言って」
「カッコいい、速い、性能がいい、すごい、楽しい!」
コースケはすらすらと答えた。
以前、倫子が尋ねられたので、次は自分にくると思っていたのだろう。
「ふうん。らしいわね」
綾子が満足げにコースケの顔を眺める。
「これって、どんな意味があるんすか?」
倫子が答えてもらえなかった質問だ。
綾子は目をくるりと回した。
「形容詞のあとに『自分』って付けてみて。それが、あなたの心にある理想像よ」
コースケは、「カッコいい自分、速い自分、すごい自分……」とつぶやくと、ハハッと照れたように笑った。
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自分が思う理想像ですか。
私も好きなモノを思い浮かべてみました。
結果、その形容詞は「穏やか・平和・静か・ゆっくり・笑顔」でした。
まさにその通りだなあと思いました。
生きるだけでも辛い毎日なのですが、つまらない悩みで心を埋めないで歩んでいこうと思います。
Posted by kanzaki at 2021年12月20日 06:49