2023年08月21日

「株の神様の極意」と「金の卵を産むメンドリ」

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●『「悪知恵」のすすめ ラ・フォンテーヌの寓話に学ぶ処世訓』(鹿島 茂 著)より


【株の神様の極意】


明治末に株の神様と呼ばれて兜町で崇拝されていた相場師がいた。
その名を福沢桃介という。
苗字から連想が働くように、福沢諭吉の娘婿である。


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福沢諭吉に費用を出してもらって留学し、結婚後、王子製紙などに勤務したが、結核にかかり長患いを余儀なくされた。


その間に株式投資のノウハウを勉強し、絶対的な株投資の法則を編み出して、現在の金額にして一〇〇〇万円を元手にして二〇億円の儲けを手にした。


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その株投資の法則とやらを知りたくなるが、答えを聞くと、だれもが「なんだ。そんなことか」という反応を示すはずだ。


では、その答えはというと、
「買った株が三割上がったら利食い売り、二割下がったら損切り」
といういたって常識的なもので、株の神様の極意とはとうてい思えない。


だが、福沢に言わせると、株で勝つにはこれしかないのだという。


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計算機を取り出して、一・三〇を一〇乗してみると一三・七八となる。
つまり、三割だけ儲けることを一〇回繰り返せば、利益は一〇倍以上になるという計算である。


もちろん、〇・八〇を一〇乗すれば〇・一〇に近くなるから、損切りが多くなれば利益はそれほど出ないが、そこは博才の問題である。
つまり、多少とも目先が利いて博才のある人間なら、欲求を腹八分目に抑えておけば、着実に儲けは増えていくということなのだ。


反対に、大儲けしようとすると、確実に大損するのである。


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【金の卵を産むメンドリ】


ラ・フォンテーヌ先生は、この原理を至ってわかりやすい「金の卵を産むメンドリ」(巻の五 第一三話)という寓話で説明している。


毎日、決まって金の卵を一つ産むメンドリがいた。そのメンドリを飼っていた男は、おかげで、毎日、少しずつ金持ちになっていったが、しかし、そのうちに、そうした儲けでは我慢できなくなった。


男はメンドリを殺し、おなかを裂いて開いてみたが、なんのことはない、まったく普通のメンドリで、金の塊などどこにもなかった。
かくて、男は、自分の財産の中でもいちばん大切なものをなくしてしまったのである。


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(大抵、欲にくらんで株とFXにはまり、)金の卵を失ってしまうのである。
一〇〇万円と一〇〇〇万円の貯金(が貯まった際)に気をつけろ。
メンドリの腹を裂いてはいけないのである。


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【コメント】


株式投資だけではなく、「大儲けできるという甘い誘い」には気をつけた方が良いということなんでしょうね。
金銭だけではなく、地位や名誉に関してもそうです。


私は、ハイリスクハイリターンな生き方は好きではありません。
また、他人から見て「見栄えの良い生き方」も好きではありません。


収入が低いのに、トヨタ・アルファードを残価設定ローンで購入し、早い買い替えサイクルをするようなことはしません。
(そもそも運転が下手なので、あんな大きなクルマを操れません。日常使用している人を尊敬しますよ)


新しい高価なものを買い、生活を潤すのもアリです。
一方、私の場合、「収入が上がろうが生活レベルは変えない」というスタンスです。
そういう地味な生活を維持できる精神力を何故か誇らしげに思うのです。

Posted by kanzaki at 2023年08月21日 07:00