●『50代を上手に生きる禅の知恵』(枡野 俊明 著)より
「本来無一物」という有名な禅語があります。
人間はみんな、何も持たずに生まれてきます。
まったくの無一物の状態でこの世に生まれてくる。
そして同じように死を迎えるときも、何も持っていくことはできません。
再び無一物の状態で旅立つ。
これが仏教の基本的な考え方です。
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仕事を失った。
家を手放した。
もう自分には何も残されていない。
まさにゼロになってしまった。
それはたしかに辛いことでもあります。
それでも、生きている限り、前を向いて歩きださなければなりません。
ゼロになったということは、生まれたときの状態に戻っただけのこと。
またそこから始めればいいだけのことです。
失ったものに執着し、それをいつまでも嘆くより、これから何を得ていくかに目を向けること。
「何とかなるさ」という言葉には、そんな意味が含まれているのだと思います。
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過去にこだわらず、未来にあれこれと不安を抱かず、今という現在を必死になって生きている。
そんな人間を会社は手放すことはありません。
おそらく会社が必要としないのは、現在の仕事にも努力をすることなく、来てもいない未来に怯えるだけ。
不要な不安を勝手に生み出して、その不安の海の中で溺れている人間だと思います。
漠然とした不安感に打ち勝つ方法。
それは、頭で考えてばかりいるのではなく、行動に移すことです。
一生懸命に仕事に打ち込んでいる人間には、不安感が入り込む隙間は生まれないものです。
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【コメント】
すべてを失った人。
就職氷河期世代である私のような世代では、それを「無敵の人」と呼びます。
※無敵の人(むてきのひと)とは、社会的に失うものが何も無いために、犯罪を起こすことに何の躊躇もない人を意味するインターネットスラング。
犯罪に手を染めず、真っ正直に生きていくだけでは成果が出にくい世代です。
本書をはじめ、50代の定義として、「仕事も家庭にも余裕が生まれ、心も落ち着く頃。次の世代へ引き継ぐという意識を持つ人」という事になっています。
それは、就職氷河期世代より上の世代でのお話し。
本来なら現在、多くの就職氷河期世代が、組織の要職として働いている頃です。
しかし、この世代の人間の採用をしぼり、育てず、消耗品扱いにしてきてしまった。
おかげで組織は現時点でも疲弊化し、10年後の後継づくりも出来ないでいます。
企業の不正がニュースにのぼりますが、その根本原因は人員不足。
そして、法律・規制が過剰なまでにキツキツになっている為、とても少ない人間でこなせない結果です。
「何とかなるさ」とはならない時代です。
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