神崎のナナメ読み

砂の器

皆さんは読書をする際、どのような姿勢をしていますか？
机に向かい、椅子に座って？
畳の上にアグラ？
本を机の上に開けば、自分の座る位置が固定され、身体が拘束されます。
本を持って目に近づけて読む場合は、場所は固定されないけれど、そのうちに手が疲れてきますね。
そうすると、身体を丸めて、本に自分を近づけるような感じになったりします。
これもまた、身体が痛くなる。
よく考えてみると、本を読むのって、身体に少なからず負担をかけるものですね。
でも、面白いから、ついつい読みふけってしまいます。

私の最近の読書スタイルは、「電車スタイル（今、命名しました）」。
自分の家の洋間へ行き、観察台のある窓ガラスの横に椅子を置きます。
椅子は、以前にも紹介したことのある、祖母の使っていた古い揺り椅子。
電車と同じく、窓ガラスに対して平行に椅子を置きます。
椅子に座りますと、自分の右手に窓ガラスが見える状態です。
電車で椅子に座った時と同じ状態ですね。
その椅子に座り、軽く揺り椅子を前後に動かしながら本を読みます。
この揺れが、電車に乗っているような感覚なんです。
その揺れが、読む際のリズム取りにもなるし、読書で身体を固定している状態が、多少は和らぎます。
観察台に、飲み物の入ったコップ等を置き、あとはひたすら読んでいます。

この読書スタイルにしてから、本ばかり読みまくっています。
今年に入ってからなのですが、そのお陰で、テレビを殆ど観ていません。
既に１５冊近く読んでしまいました（一日一冊以上のペース！）。
そういや、スカパーをあまり観ないなあ。
この２年程、スカパーの物珍しさに、テレビの前へ向かっている事が多かったのですが、その興味が本へ移ったような感じです。
これもまた、マイブームなので、いずれはテレビへ興味が行くこともあるかと思いますが、それはそれ。

以前はそこまで本を読む人間じゃなかったように思います。
それが変わってきたのは、インターネットのお陰かもしれません。
基本的に、インターネットは文章が基本。
毎日、少なからず活字を目に入れている訳です。
ニュースのような、出来事を単刀直入に説明しているもの。
自分の意見を感情込めて書いてあるもの。
文章にも、絵と同じように個性があるという、こんな単純な事に今更気づきました。
以前だと、何度読み返しても理解の出来ない文章というのが多々あり、「自分は馬鹿なんじゃないか？」と思ったこともありました。
漫画や映画、テレビドラマでも、自分が苦手な作品というものがあります。
そういうのがあれば、別に観なくてもいいんですよね。
自分が楽しむためのモノなのだから、自分が好きなモノを選べばいい。
本だってそうだ。
どうも文章となると、ちょっと生真面目な態度で接しないといけなかったり、知識・教養を迫られるような気がするのですが、それは間違いでした。
不思議とすんなりと受け入れられる文章、題材というものがあり、それはその筆者と自分との感性が上手くマッチしているからだと思います。
文章の上手い人の作品全てが、万人に受け入れられるとは限りません。
自分の肌に合った小説なりを見つけて楽しめばいいんですよね。

最近、私の好きな作家は、松本清張です。
昨晩、読み上げたのは「砂の器」です。
今度、スマップの仲居君がドラマで主演するミステリー作品です。
昭和３０年代の古い作品ですし、それなりにボリュームのあるページ数なのですが、すんなりと読めました。
きっと私の肌に合っていたのでしょう。
古い作品ですから、現在と世情が違っています。
身近なところでは、「ＪＲ」が「国鉄」だったり。
今では治療可能な病気も、当時では難病で、その患者は迫害を受けていたり。
けれど、どんなに古い時代にあっても、青年は、その当時の権力者に対して反骨精神を持っていたり、何かによって感情が起伏する姿は、今と何ら変わる所はありません。
しかも殺人トリックに関しては、よくもまあ、こんな事を当時に考えついたよなあと驚きました。

私の場合、自分の肌に合う文章というのが何となく分かりました。
それは、「空が青い」ことを伝える場合、「己の欲望を無へ帰する程、その大いなる存在を見せつける天」等と訳の分らない修飾語に彩られていないモノです。
つまり、「空が青い」ならば、そのまま「空が青い」と書かれたものが好きです。
文章の飾りで読者を引き付けるものより、その内容でひきつける為、無駄を省いたものが好きなようです。

自分の肌に合う文章・小説を自分の好きな場所で自分の好きな読み方をする。
これほど幸せな時間というものも、そうそうないでしょう。