2006年10月28日

必修逃れ

メディアは凄いと思う反面、ガキンチョだと思う時があります。
それは、一つ大きなネタがあると、それに関するネタを延々と繰り返すことです。

つい最近まで、公務員を含む飲酒運転をするドライバーの摘発を連日のように報道していました。
今日、○○県の公務員が飲酒運転で捕まった。
次の日、○○県の警察官が飲酒運転で捕まった。
その次の日は、○○運送のドライバーが飲酒運転で捕まった。
連日のように、似たようなニュースを繰り返します。
急に毎日、飲酒運転が摘発されたのではなく、今までもあったのにニュースで取り上げなかっただけ。
一度、報道魂が一つのベクトルへ向かうと、サルのマスカキのように延々と報道。

そして面白いのが、次の新しいネタ・・・今回ですと、全国の高校で卒業に必要な必修科目が教えられていない問題(俗に云う"必修逃れ")に火がつくと、今までのベクトルに関するニュースは黒歴史にしてしまい、その関連ニュースばかりを報道します。
今日、○○県の高校で、必修逃れが発覚した。
次の日、○○県では合計5校で、必修逃れが発覚した。
その次の日は、○○県では○○時間の補習講義で対応。
連日のように、似たようなニュースを繰り返します。

おいおい。マスコミの皆さんの目から見ると、世間の飲酒運転は撲滅されたのですか?

事件が起きたのでなく、事件を明るみにしただけ。

今までもずっと起きていたことをメディアが大々的に取り上げるだけでブームになってしまう。
今年の流行語大賞のラストパートに「必修逃れ」がエントリーされそうな勢いです。
世の中をメディアを通してだけで見てしまうと、自分の生き方や考えで物事を考えられなくなりそうです。
自分自身が、こういうサイトをやっているから分かるのですが、メディアの発した考えが自分の考えだと、いつの間にか錯覚してしまいます。
それは危険だと思いつつも多勢に無勢。

まあ、そんなメディアの偏向を語っているだけでもしょうがないので本題。

評論家のお偉いさんによりますと、全国には400校ほど進学校があり、そのうち200校が必修逃れをしているのではないかと考えられるそうです。
なんでそれだけ大きな比率になるかと云うと、文部科学省では、「確かな学力」向上のため、平成15年度より「学力向上アクションプラン」を実施しているのが原因だそうです。

これは簡単に云いますと、お上からの「センター試験○○点以上を何人以上とれるようにしろ!」と云うお達しのことです。
お上がそう云うので、それが出来るように学生達の指導内容を変えなくてはいけない。
そうすると、試験に関係ないような授業は無視して、ひたすら試験対策の授業をしなくてはいけません。
大学受験対策などのため必修科目の代わりに他科目の授業を行う。
それが、必修逃れに結びついたのです。

「学校の予備校化」・・・これがキーワードのようですね。

本日の地元夕刊紙を見ますと、現時点で必修逃れが新潟県内で5校発覚。
当分、この数字がカウントアップされていくでしょう。

学校の予備校化なんて正直、いまさら感がありますよね。
私は私立の進学校に通っていました。
その学校は、学校の予備校化なんてものじゃなくて、本当に予備校そのものでした。

二年生に進学の際、文系と理系のクラス変え。
三年生に、国公立と私立を目指す人にクラス変え。

数学は、三年間で終わらせる内容をその半分の期間で終わらせるため、いつも二時間連続授業でした。
速度が倍ですから、中間テストや期末テストの他に、中中間テストとか、中期末テストと云うのまでありました。

クラス全員が集まるのは、朝と夕方のホームルームだけ。
後は、自分が選択した授業を実施しているクラスへ行って授業を受けます。
大学みたいな感じです。

おかげで、クラスに統一感・連帯感なんてものはありませんでした。
私が遊ぶのは、他の学校の人とばかりでした。
こんなの自分だけかと思っていたら、社会人になって同じ母校の先輩・後輩に聞いたら皆そうでした。
やはり、あそこの学校は受験対策のためだけの予備校だったんですね。
私、正直な話し、高校の担任の先生の名前を覚えていません。
顔も思い出せるか怪しいです。
それほど愛着も何もない学校でした。

今でも記憶に残っている授業は生物。
担当の先生は、代々木ゼミナールの講師もやっている年配の人。
授業が始まると、何も喋らずにひたすら黒板に本日の授業の内容を書いていきます。
それを生徒はノートに全て書きます。
書き終わった頃、少しだけ説明しておしまい。
そんな授業ですから、テストのある期間よりもずっと前に試験範囲の授業は終わってしまいます。
それから試験までは、ひたすら自主学習。
これって授業?

私にとって高校の三年間は、本当に黒歴史以外の何ものでもありませんでした。
本当につまらない、ただの予備校でした。
あの時の精神的ダメージは今も治癒していないように思います。

あの学校は、先生が生徒に対して「指導逃れ」をしていた学校だったんだろうなあと思います。
本当に進学の為の授業だけで、それ以上でもそれ以下でもない、本当に予備校。
指導とか、先生と生徒の触れ合いとか全てを拒否していました。
まあ、そういう状況に甘んじて、生徒側も、本来ならば学校で体験するような事を「受験の為だと」言い訳をして逃れていた感は否定しませんけれどね。

学校教育から開放され、社会人になった今、「一体、あの時代はなんだったんだろう・・・」と疑問に思ってしまいます。
けれど、その学生時代の学歴やら何やらが、社会人になって就職する際のパスポートになったり、人生を大きく左右する考え方を決定するんですよねえ。皮肉なことに。

今回の件が明るみになって、センター試験も押し迫っていると云うのに、補修をしたりしなければいけない生徒達。
先生からのいじめで自殺した子がいましたが、今回の件だって、先生や学校に対する不信感を植え付けるのに十分な材料です。
そうすると、私のように高校生活を黒歴史化してしまう子供たちが沢山出てくるんだろうなあ。

Posted by kanzaki at 2006年10月28日 00:14