2007年06月05日

親知らずを抜きました〜その1

歯の治療って、出来ることならばしたくないものですよねえ。
けれど、虫歯になった歯は自然に治ることはありませんから、お医者さんへ行かなければいけません。

昨年の夏、左上の親知らずを抜きました。
その部分は、10年ぐらい前から虫歯を患い、少しずつ削る等をして静観していたのですが、とうとう大きな空洞状態になってしまい、遂に抜くことになりました。

上の親知らずを抜いた事のある人ならばお分かりかと思いますが、上の方を抜く分には、それほど苦痛を伴いません。
当然、抜歯してしばらくは血が出たり、モノを満足に食べられない等はありますが、予想していたものよりは遥かに楽でした。

その抜歯の際、レントゲンを撮影しました。
そのレントゲン写真を見て驚きました。
上の親知らずは普通に生えていたのですが、下の親知らずは横向きになって、歯茎の中にありました。
左下の親知らずは完全に埋もれて姿が見えないのですが、右下の親知らずは、ほんの少しだけ歯茎から顔を覗かせていました。
歯医者さんに、右下の親知らずも少し虫歯になっている事を教えてもらいました。
今はまだ大丈夫だけれど、ほうっておくと、となりの健康な歯まで虫歯になってしまうと忠告を受けました。

その時は、左上の親知らずの抜歯だけで終了。
右下の親知らずは、そのままにしていました。
ところがそれから数ヵ月後・・・。
右上の親知らずと右下の親知らず、その両方が本格的な虫歯になってしまいました。
舌で触れてみると、明らかに虫歯によって欠けてしまっているのが分かりました。
さすがにこれはヤバいなあと思いました。
早く抜いた方が良いのはヤマヤマです。
しかし、下の親知らずの抜歯はかなり大変な治療だと云う事をネットで知りました。
外科的手術が必要なので、しばらくの間、仕事が満足に出来なくなる可能性があります。
ちょうど仕事でドタバタしている最中だったので、仕事に余裕のある時期を見計らっていました。

そして、その時期がやってきました。
私にとって5月の中旬〜下旬は、仕事のエアポケットとなる時期です。
これを逃すと、仕事が過酷になっていきます。
5月14日(月)の昼休み、私は歯医者へ行きました。

検査した結果、右上の親知らずは、その歯医者でも抜歯は可能なのですが、右下の親知らずは抜歯できないと云うのです。
詳しい説明は忘れましたが、歯茎より下の方に巨大な管があり、その中には重要な血管・神経等が通っているそうです。
抜歯の際に麻酔を打つのですが、その管に触れてしまった場合、神経麻痺となり、唇に痺れが残ってしまうとか。
ネットで検索しましたところ、そういう痺れが残ってしまう人が、3〜6%ほどいるそうです。
これはかなりの確率と云えます。

ここの歯医者で抜歯も可能だけれど、そういう恐れもあるので、できれば避けた方が良いと云うのです。
大学病院の先生に紹介状を書いてあげるから、そこで抜歯してみてはどうかと助言をくれました。
大学病院の先生は、その歯医者の先生の同期だとか。
新潟では有名な人らしいです。

さっさと抜歯したいのはヤマヤマですが、一生、神経麻痺で苦しむのは嫌なので、素直に従いました。
紹介状と、その大学病院のパンフレットをもらいました。
日本歯科大学の新潟病院と云うところだそうです。

善は急げとばかり、日本歯科大学へ電話して、治療の予約をしました。
しかし、やはり有名な先生だけの事はあります。
既に治療の予約がびっしり詰まっており、更には学会の出席等もあるせいで、一番早くて約二週間後だと云うのです。
これ以上、治療が遅くなると、とても抜歯をしている余裕がなくなりますので、5月28日(月)午後3時30分に予約を入れました。

いつも通っている歯医者は仕事場からすぐ近くなので、大きな治療でなければ、昼休みに済ませてしまう事も可能です。
しかし、歯科大学の治療予約時間は平日の真昼間ですから、仕事を休まねばなりません。
もし、その日は検診だけで、抜歯は更に後日なんて事になったらどうしようかとも考えました。
まあ結局、それは取り越し苦労だったのですが・・・。

5月28日までの二週間・・・それは随分と嫌な気分でした。
親知らずの抜歯、特に下の方なんて、もの凄い激痛との闘いです。
その恐怖を想像すると、足がガクガクブルブルですよ。
さっさと一思いに抜いて欲しいものです。

小さい頃に学校で、予防接種の注射を打たれた経験はありませんか?
ずらーっと一列に並び、注射を打たれる順番を待つのです。
先頭にいる注射を打たれた人に、「痛くなかった?」と聞き、物凄く痛かった等と聞いては恐怖を倍増させていたものです。
アホですよねえ。
そう聞けば、わざと痛いと云うに決まっているだろうに。

そのアホな行動は、大人になっても治っていなかったようで、会社の人や色んな人に、親知らずの抜歯体験談を聞いてまわっていました。
見た目がもの凄く体格の良い男性なのに、抜歯した際は泣いてしまったなんて人もいました。
抜歯して会計の際、具合が悪くなって倒れ、点滴を受けた人もいましたよ。
そんな訳で、下の親知らずに関しては、ほぼ100%苦痛を伴うことだけは分かりました。
そしてそれを聞き、恐れおののく二週間でした(アホ)。

そして、5月28日(月)。
ついにやってきてしまいましたorz。
午前中は憂鬱な気分を吹き飛ばしたいが為、通常の3倍のスピードで仕事をこなしていました。
午後から会社を休む訳ですし、下手したら、翌日も苦痛で出勤できないかもしれませんから。
そんな訳で、糞マッハで時は過ぎていきます。

昼で帰宅しました。
しばらく、まともな食事も出来ないんだろうなあと思い、何かボリュームのあるものを食べておこうと思いました。
ある意味、「最後の晩餐」ですから(あっ、まだ昼か)。
けれど、これから起こるであろう惨劇を想像するに、とても食事なんて喉を通りません。
結局、ほんのちょっと口に含んだ程度で終わらせました。

ああ、これから自分の身に起こる苦痛を回避することができるならば、「たけしの挑戦状」「スペランカー」「トランスフォーマー コンボイの謎」を一晩でクリアしてもいいぐらいです(お

ほんの数十分、軽く昼寝をし、日本歯科大学へ車で行くことにしました。
はじめて行く場所なので、地図を見てもよく分かりません。
そこで、PSP(プレイステーションポータブル)にGPSユニットを装着し、地図ソフトを起動させ、カーナビとして使いました。
いつもならば、衛星の補足なんてすぐに行われるのに、この日は、なかなか補足してくれません。
衛星を補足しないと、ルート案内をしてくれないので困りました。
仕方が無いから、ルート案内を無視して、カンで車を運転しました。
それからしばらくして、ようやく衛星を補足。
既に、かなり走っていたのですが、やはり機械に任せて運転した方が精神的に楽です。

PSPのカーナビは、車速パルス等で補完する訳ではなく、衛星の位置情報だけでルート案内をするので、どうしても誤差が生じます。
普段はそれで困ることはないのですが、日本歯科大学の近辺は細い道ばかり。
しかも、一方通行も多い。
おかげで私は、間違ったルート案内で道に迷ってしまいました。
治療の予約時間は、もうすぐそこです。
もの凄くあせりました。
お陰で、心臓の鼓動は早くなるし、汗も大量にかきました。
これから、外科的な摘出手術をすると云うのに、最悪のコンディションです。
機械のルート案内を無視して、私は自分の目で病院の看板を探し、なんとか自力で到達できました。
つ、疲れた・・・orz。

汗だくで到着し、受付で保険証と紹介状を渡し、事務処理が完了するのを待ちました。
その後、貰った書類を手にして、2階にある「口腔外科」と云う場所へ行きました。
名前からして、とてもリラックスして治療を受けられるような場所ではないようですね。
口腔外科で再び受付をして、自分の名前を呼ばれるのを待ちました。
予約をしていたせいか、すぐに呼ばれました。
その為、心を落ち着かせる暇がありませんでした。

若い女性の看護士さん(ピンク色のナース服装着)に案内され、治療するシートに座りました。
うーむ。いつも通っている歯医者のシートと、ちょっと違うような・・・。
なんとも落ち着きません。
看護士さんは、少しお待ちくださいと云って姿を消します。

目の前の大きなガラス窓から、外の景色が見渡せます。
割と古い町並みで、緑色の木々も沢山見えます。
そんな景色を見て、やっと少しは平常心になったかな?

先ほどの若い女性の看護士さんが戻ってきました。
その子に、脈や血圧、体温をはかってもらいました。
随分と若く、しかもルックス的にも可愛い!
お笑い芸人の悲しい性(「かなしいせい」ではありません。「かなしいさが」です)。
ついつい、笑いのあるトークをしたくなってしまいます。
実際、笑いを得る事ができて良かったのですが、テンションがいつもより高いのが自覚できます。
それもそのはず。
体温が37度5分と、微熱だったのです。
これから治療だと云うのに、どうする俺。

その後、先生の登場。
随分とイケメンですし、若い。
紹介状を書いてくれた先生とは、とても同じ年齢には見えません。
後で、その人は別人だと判明。
どうやら研修医のようです。
(本当は研修医じゃないかもしれませんが、ここでは研修医と云う事で書いていきます)

最初、レントゲン撮影から始めるのかと思いきや、紹介状の中に同封されていた昨年撮影したレントゲン写真のコピーを見始めました。
色々と話し合いをした後、本日、右上の親知らず・右下の親知らず、両方とも一気に抜歯することになりました。
えー!! これは何かの罰ゲームですか?!
日を置いて一本ずつ抜くのかなあとか、本日は検診だけかなあとか、そんな淡い期待は泡となって消えました(どの道、あまり治療に時間をかけられる余裕もありませんし、仕方がないか)。

しかも、レントゲン撮影はせず、昨年撮影したレントゲンのコピーを元に治療をするそうです。
案外、こんなもんなのね。

麻酔を打たれました。
さすが21世紀。
麻酔そのものは、さして痛くもありませんし、刺した後に強烈な腫れなどもありません。
むしろ、「本当に麻酔が効いているのか?」と心配になるほど。

可愛い看護士さん。
辛くない麻酔。
・・・今のところは、順調です。今のところは。

そして、しばらくした後、抜歯作業になりました。
座っているシートが思いっきり後ろに倒れて、ほぼ水平になりました。
さながら、手術感覚です(いや。実際、手術なのだが)。

そこでようやく、先生が初登場。
少し年配で、確かに紹介してくれた先生と同年代に見えます。
軽く挨拶をされました。
その時、横目で見た先生の姿は、本格的な手術の衣装でした。
よくドラマで、手術の際に先生が着るような服、帽子、マスク、手袋。
さきほどの若い研修医も同じ姿。
これはどう見ても、ただの歯の治療じゃありません。
完全なる「外科手術」です。
さすが、口腔外科(なにが、さすがなのか分かりませんが)。

緑色で、口の部分だけ穴が開いている布を顔と腹の上に被せられました。
手術で血が飛ぶから、それで汚れない為だそうです。
私の、「歯医者さんの治療」のイメージとは180度違うその治療スタイルに、心は恐れおののいていました。
そして、恐れおののいてしばらくすると、何故か「諦めの境地」になりまして、深く考えなくなっていました。
麻酔のせいなのか、何をしてあがこうが、どうしようもないからなのか。

研修医が、まずは上の親知らずを抜くことを教えてくれました。
上の親知らずの抜歯は、昨年も経験しているので、割かし平常心。
抜く際、歯茎のミシミシと云う音も、それほど聞こえませんでした。
時間もそんなにかからなかったと思います。

そして次に、下の親知らず。
これはやっかいです。
まずは、歯茎を切開。
そして、親知らずを真っ二つに裁断。
どんな器具なのかは見えませんでしたが、まるで、口の中でチェーンソーが動いているような音が聞こえていました。

麻酔をしているから、その手術による痛みはありません。
しかし意識はありますし、耳元の作業なので、色んな音が聞こえてきて嫌になります。
布を被せられて見えないから、聞こえてくる音で、あれこれ妄想してしまいます。
どうも、先生と研修医の会話を聞いているに、殆ど研修医がやっているようです。
そして、その作業に色々と先生がアドバイスをしている感じ。
途中、先生が「このままだと落ちてしまう」「やばい・・」等と、怖くなってしまう会話を聞きました。
何が落ちて、何がやばいと云うのでしょう。

ようやく下の親知らずも摘出し、最後は糸で縫っておしまい。
上が一針、下は三針も縫われましたよ。

被せられていた布を取られ、しばらく放置。
しばらくすると、帽子やマスク等を外した研修医が再び登場。
結局、先生の姿は、手術前の挨拶の時だけでした。
シートを元の形に戻し、研修医から色々と説明を受けました。
何を云っていたか具体的な事はもう忘れてしまいましたが、とにかく「しばらくすると、必ず痛くなる」事を強調していたように思います。
まあ、メスを入れたり、歯を切断したり、抜いたりしたのですからね。
抜いた親知らずを見せてもらいました。
上の親知らずは、一部が黒くなっていました。
これが虫歯なのでしょう。
こんな状態を数ヶ月も放置しておいたかと思うと、気持ち悪くなりました。
下の親知らずは、真っ二つに切られた状態でした。
どちらの歯も、私が想像したものより、とても大きな歯でした。
そんな巨大なものが、ぽっかりと歯茎から無くなったのですから、一体、今はどんな状態なんだろうと思いました。

研修医が、「この歯、どうします?」と聞いてきました。
ついつい、「記念に持って帰りたいと思います」と返事をしました。
しかし、手術した直後のせいで、上手くしゃべる事が出来ません。
でも、相手は理解できたようでして、「このまま放置しておくと、匂いが凄いことになります。持ち帰ったら、消毒用のアルコール等に5日間も漬けてみてください」と教えてくれました。

その後、処方される薬についての説明を受け、1階の会計受付へ行くことになりました。
困った事に、本当にうまく話せません。
右の上下の親知らずを一気に抜いたせいで、口の右側を上手く動かせなくて非常に不便です。
会計の際や、薬を貰う際、非常に辛かったです。

今は麻酔が効いているから良いのですが、1時間30分経過すると、その麻酔も切れてしまい、ここからが痛みの本番です。
そう。実際に抜歯した事のある人ならばお分かりの通り、親知らずの治療は、治療そのものより、その後が苦しいのです。

続く。

●次回の記事: 親知らずを抜きました〜その2
http://kanzaki.sub.jp/archives/001452.html

Posted by kanzaki at 2007年06月05日 23:04