2008年10月05日

モンスターペアレントに対する先生達の対処方法〜ビジネスマンにも役に立つかも

学校の先生というのは、「人を育成する」という、とても素晴らしい職業だと思うのです。
ビジネスマンのように利益を追求する仕事ではありませんが、将来、日本の社会をしょって立つ人達を育てているのですから、ある意味、日本という国の成長に貢献していると思います。

そんな先生達の悩み事の一つに「モンスターペアレント」という存在があります。

●モンスターペアレント - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%9A%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%88

モンスターペアレント (Monster parent) とは、学校に対して自己中心的で理不尽な要求を繰り返す保護者を意味する和製英語である。向山洋一の命名とされる(「教室ツーウェイ」2007年8月号9ページ参照)。当然のことながら、常識の範囲を逸脱しない要求を行う保護者はここには含まれない。
基本的には直接教員にクレームを行うものが多いが、校長や教育委員会など、より権限の強い部署にクレームを持ち込んで、間接的に現場の教員や学校に圧力をかけるという形式も増えている。また、なかには虚偽の告発をするなどして法的問題に発展させようとする場合もある。


母が介護士をしているので分かるのですが、世の中で一番精神的にキツイ職業というのは、「個人を相手(客)にしている仕事」だと思います。

ビジネスマン同士の場合、例えお互いがプライベート上で犬猿の仲だったとしても、会社の代表として交渉する場合は、感情は抑えて話しを進めていきます。
それが大人というもの。

しかし、個人を相手(客)にする場合は、そうもいきません。
相手は理不尽な事を感情をあらわにして言ってきます。
こちらも人間ですから、感情で反論したいところですが、自分は会社の従業員という立場で接しなければいけません。
こんな事が続けば当然、仕事を辞めたくなるものです。

そういう理不尽な事は今、学校でも巻き起こっているのです。
かなり表面化してきており、つい最近は、ドラマのストーリーのアイディアにも使われたぐらいです。

先週末、朝のテレビ番組を見ていましたところ、この問題について紹介をしていました。

学校に対する保護者の理不尽な要求が問題となる中、仕事に関するトラブルで訴えられた場合、弁護士費用などを補償する「訴訟費用保険」に加入する先生達が増えているのだそうです。
東京では既に、公立校の教職員の40%が加入しているとか。
これほど多くの人達が加入しているぐらいですから、そういう危機に巻き込まれる可能性を否定できない職場環境なんでしょうね。

大阪の堺ですと、危機管理アドバイザーなる人達がいるそうです。
先生と保護者の間に立って、最悪な事態を未然に防ぐ仕事です。
メンバーには、元校長や元警察官もいます。

先生達は個人的に、こういった危機的状況になった場合の対処セミナーへ参加しています。
そこでロールプレイングを行い、猛烈に批判をしてくる親を演じる人を相手に、自分がちゃんと対処できるかを確認し、そして適切な対処方法の指導を受けてきます。
面白いのは、そういうセミナーに参加した事を学校には言っていない事です。
学校に知れてしまうと、もしそういう事態が発生した際、「お前は以前、セミナーで教わってきたんだから対処しろ」と責任を押し付けられるのが嫌だからだとか。
個人的にはその気持ちは分からないではないのですが、ちょっとねえ・・・。

そして番組では最後に、モンスターペアレント達と話し合いの場が設けられた際、どう対処するかについて説明がありました。

(1)相手は「モンスター」なのではなく、「モンスター」という状態にあるという事を認識する。

(2)座る位置は、相手に対して直角、もしくは角度を変えて座る。真正面に対峙すると、それだけで対立の状況になってしまうから。

(3)状況証拠として、ボイスレコーダーで録音をする。その際、相手に対して「録音をして良いですか?」と尋ねるのではなく、「録音をさせていただきます」と伝える。

(4)メモ等をする際、鉛筆ではなく、ペンを使うこと。これは証拠として消えないようにする為。

(5)相手に対してこちらは複数で応対する。できれば、その内の一人は背や体格の大きい人が望ましい。

(6)相手に筆記用具を渡し、こちらに対する要求を文章として書いてもらう。その事により、自分自身の中で、本当に言いたいことを整理してもらう。

(7)熱気づいた討論になったら、窓を開ける等の行為をして、場のクールダウンをはかる。

(8)相手に色々と言われても、「そうですかあ」「〜かも」「はあ」と断定した言い方を避けて回避。

(9)相手の目を見て話すと攻撃的になるので、相手の口を見て話す。

(10)その親御さんの子供について、誉めるべところはちゃんと誉める。


うる覚えですが、大体、こんな事を説明していました。
ざっと見ますと、ビジネスマンの顧客に対する苦情処理にも応用できそうな気がします。
「事実」と「感情」が入り混じって言ってくる相手に対し、こちらは冷静に対応する上でも、上記の方法は有効だと思います。

私は仕事柄、交渉事が多いので、相手と直接の話し合いの場を設ける際、確かに上記に似たような事はしていますね。
私の場合を以下に書いておきます。
これはあくまで、相手が自分の会社へ来て話し合いをする場合や、こちらの方がユーザー(客)の場合です。

(1)の考え方は大事だと思います。
相手は普段から、そういう興奮状態になっているのではなく、たまたまこういう状況下に置かれているから、感情を剥き出しにしているのです。
そう考えると冷静になれ、相手を認める落ち着きを取り戻せます。
私は普段の人間関係でも、似たような事を考えていました。

相手が非常に興奮状態になった場合、こちらも興奮して対抗してはいけません。
むしろ、「今、この人は物凄い嫌な態度をとっているが、自分の子供や嫁さんに対しては、とても良いお父さんの笑顔を向けているんだよなあ。たまたま、今はこういう感情になっているだけで」と考えます。
そうすると、次に会った際、こちら側は嫌な表情が出なくなり、関係が改善される確率が高くなります。
人間関係のギクシャクは、互いの笑顔が解決の早道ですからね。
これは、私の弟から教わりました。


(2)の対応も、よくやります。
もし応接室で会う場合、相手が複数で来ていれば、その話しの主導権を握っている人物と真正面にならないようにしています。
一対一の場合、可能な限り広くて、座る場所の多い部屋で会います。
そして、相手の視線が斜めになるように、直角の場所に座ります。
これは、一つの資料を二人で見ながら話し合いをする際、位置的にも見やすいですしね。


(3)の録音ですが、これもしょっちゅう行っています。
私が仕事で使っているのは、下記のICレコーダー(ボイスレコーダー)です。

●DS-60|オーディオ|オリンパスイメージング
http://olympus-imaging.jp/product/audio/ds60/index.html

私の場合、普段はこっそり録音しています。
しかし、さすがに危機的状況に陥った中での交渉や、理不尽な交渉の場合、相手に録音をしている事をはっきりと分からせるように、机の上に置いて録音しています。
これにより、「適当な事を言っているなよ! 証拠は残しておくからな!」と精神的に訴えかけます。
これで後で、言った言わないの問題も回避できるし、相手も慎重に言葉を選んで話してきますから。
しかしこれは逆に、自分の言葉も録音されてしまうので、自分自身も慎重に話さなければいけません。


(5)については私の場合、やはり直属の上司に同席してもらいますね。
上司は私以上に交渉事が上手ですし、切り口がソフトだからです。
事前に上司と、お互いの考えを話しあい、「会社としての意見・対応」について統一の見解を用意しておきます。
これにより、話しがあらぬ方向へ行くのを阻止できます。
そして、結論はその場で出しません。
必ず、一旦話し合いが終わり、更に上の役職の人達へ報告した上で、正式な返事を「メール」で行います。
メールで行っているのは、証拠が残るからですし、CCやBCCで社内の関係者にも配信しておけば、例え書いた内容が間違っていた場合でも、指摘を受けて修正できる確率が高くなるからです。
そしてそれにより、「この問題に対して、多くの人を巻き込む事が出来る」のもメリットの一つ。
大きな問題の場合、一人二人で問題を抱えていると、方向を見失うだけではなく、精神的にも追い詰められて、最悪、辞職や自殺に発展する事もあります。
自分より上の役職の人達を巻き込んで、自分を追い詰めないようにするのは、大切だと私は思います。


(7)〜(10)も実践していますね。
私の場合、相手の話しの腰を折る場合、目の前に置かれたお茶を勧めます。
お茶を「どうぞ」と笑顔で勧められ、そのまま話しを続ける人はいません。
そしてお互いがお茶を飲み始めれば、話しが止まりますし、話しの方向展開も容易です。


以上ですが、営業で相手の会社へ赴いて交渉する場合、上記群のような方法は有効じゃないと思います。
でも、相手はこういう考えを巡らしているという事を頭の片隅に置いておけば、対処もしやすくなると思います。

そして私はもう一つ意識している事があります。
それは「嘘をつかない」こと。
これは、誠意を見せる為でもありますし、嘘をつくと、次から次へ嘘を重ねて行き、しまいには相手に気づかれ、矛盾を指摘されてしまうからです。
嘘をつかない代わりに、「言わない」という事はありますね。
切り札や本音を「言わない」事は、嘘とは違い、矛盾を引き起こさないですから、交渉の時に揚げ足を取られる事はありません。

色々書きましたが、きっとそういうマニュアル本みたいなものが、本屋にある事でしょうから、目を通しておくのは良いと思います。
知識は武器になりますから。

以上でおしまい。
そして、モンスターペアレント問題に対処している先生達、お疲れ様です。

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Posted by kanzaki at 2008年10月05日 23:01