2009年11月15日

なぜ几帳面な人ほどリストラされやすいのか

雑誌「PRESIDENT」を読んでいて興味深い記事がありました。
それはリストラに関するものです。

アメリカの企業でリストラがありました。
そのリストラの対象の一人に、リサという女性がいました。
しかし彼女には欠点が見つかりません。
むしろ、他の社員より優秀なのです。

それでは何故、リサはリストラされたのか?
理由は、リサは解雇しても安全な社員だったからです。
彼女の上司は、彼女がどんな仕事をしていて、誰と協力し、何の責任を負っているのかをよく知っていたのです。
そして、彼女は仕事をきちんと整理しており、彼女を解雇したらどんな影響があるのかを簡単に理解できました。
逆に、彼女より劣る社員がリストラされなかったのは、彼らがどんな仕事をしており、彼らを解雇したらどんな影響があるのかを完全に把握していなかったからなのです。

なんともまあ、皮肉なリストラですよね。
上記から、今のような乱世においても会社に居残れる方法が分かります。


・とにかく卓越した仕事をして、目標を効果的に達成すればするほど解雇される危険性は少なくなります。会社はその生産性を評価するからです。まあ、これは理解できますよね。


・とにかく分かりにくい仕事をする。目標をあいまいに達成すればするほど解雇しにくくなる。会社は不確実さを恐れるからです。分かりにくい社員は、解雇後の影響が不明瞭なのでリストラしにくい。


非常に両極端な方法ですが、確かにどちらもリストラの対象にされにくいように思います。
経営の世界、政治の世界、他の世界でもそうですが、判断の誤りによってそれ以降に多大な悪影響を及ぼすことがあります。
例えば、リーマン・ブラザーズの倒産を許した政府は、倒産しても大した影響はないだろうと考えていました。
しかし、それは大きな間違いでした。
会社の規模はそれほど大きくなくても、無数の取り引きにより沢山の企業と結び付いていた為、結果的に大規模な影響が出たのです。
しかもその無数の取り引きに伴う処理は非常に複雑であり、社内の人間誰一人として全てを把握はしていませんでした。
それ故、正確な追跡調査が出来ず、安易に倒産を許してしまい、世界的規模で悪影響が出たのです。

私はよく、自分より若い社員に対して、「この事ならば、○○君に聞けば必ず解決してくれる。そういう風に言われるような武器を持ちなさい」と言っています。
特殊能力を持つことにより、その社員にプレミアが付き、不本意な転勤・解雇がされにくくなるからです。
そしてそれは、本人の自信に繋がります。
存在価値を自分で感じられる事は、安心感にもなりますしね。
この特殊能力は人によって様々でしょう。
私にもそれに相当するものがあります。
なにせ私以外、基本的に処理の方法を知りませんから。
そして常に最新情報や知識、法律を覚え、セミナー等にも出席し、その特殊能力が陳腐化しないようにしております。

特殊能力により、他人はその解決に至るまでの過程を知ることが出来ません。
それ故に分かりにくく感じるでしょう。
決してそれが良い事だとは思いませんよ。
だって、もし私が交通事故で突然死んだならば、その仕事は誰も出来ず、会社に悪影響が出るのですからね(その為、不完全ではありますが、マニュアルは作成してあります。)。

しかし、よほど売り上げが好調で、過去最高の利益を出し続けている企業ならばともかく、殆どの地方の中小企業にそんな体力はありません。
だから必要最小限の人員で業務をこなす事になり、隣の人がやっている仕事がどんな内容なのか知らない状況が発生します。
知識の共有をする暇がありません。

また中間管理職という立場は、本来ならば部下達へ仕事を教え、その業務を管理はすれど、自分が実務をする必要がなかったはずです。
しかし、人員増強ができずに人手不足の中ですと、以前は部下がやっていた業務すら自分でやらなければいけない状況となっています。
疲労し、精神的に疲れ、自殺にいたる人も多い。

こんな状況が日本全体で蔓延しているのが実情です。
さて、それを解決する方法はあるのでしょうか?

私が思うに、広げすぎた業務を縮小するしかないのではないかと考えます。
今いる従業員の中で、ゆとりある業務をするには、仕事の数を減らすしかありません。

または、社員によって偏りのある仕事の量を均等に分配できるようにしなければいけません。
仕事の再分配はすなわち、特殊能力の否定に繋がりますよね。
私のように特殊能力を肯定し、それによって不本意なリストラ等を回避しようと推進している考えの持ち主にしてみれば、全く逆の発想です。

でも、どちらの考えも何となく理解できるでしょ?
そして、それらがお互いにせめぎあっており、解決に至っていない事もお分かりかと思います。

企業単体で解決できない問題は、既に政治の問題になると思います。
「ワーク・ライフ・バランス」という考えが注目されています。
政府は、ワーク・ライフ・バランス推進のため、国民運動「カエル!ジャパン キャンペーン」を開始しました。


●仕事と生活の調和推進(ワーク・ライフ・バランス)ホームページ
http://www8.cao.go.jp/wlb/


まだ解決に至っていない中、世間は師走へ突入します。
最小人員で業務をこなしているのに、更に激務が確実な年末には、相当の人的被害(精神的な意味も含め)があることでしょう。
私もその一人になるのでしょう。
正直、辛いですよ・・・。

Posted by kanzaki at 2009年11月15日 18:38