2010年02月26日

「かもの法則 ―脳を変える究極の理論」(著)西田 文郎【3】

前回の続きです。

●神崎のナナメ読み: 「かもの法則 ―脳を変える究極の理論」(著)西田 文郎【2】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002030.html

人間の前頭前野は、他の動物と違って大きく発達した大脳皮質の一部です。
私たちの額の下あたりに広がっている部分で、脳全体を指揮しています。
脳の様々な部分と神経経路で結ばれているのですが、その中でも大脳辺緑系(感情脳)に存在する小さな神経組織で、「やる気の脳」といわれる側坐核と密接に結びついています。
その側坐核の影響を受けながらその活動性を増したり、働きを抑制しています。

常にベストのコンディションで、最高の能力を発揮してくれればいいのに、側坐核の状態によって、脳のパフォーマンスがまるで違ってきます。
つまり、前頭前野の実行機能(目標実現能力や達成能力)は、側坐核の「やる気」に大きく左右されてしまうのです。
世間で言われるように、「やる気」というものが大事なのです。


・しかし、やる気は、出そうとすればするほど面白いように出なくる。


うつ病の人に頑張れと言うと、かえって落ち込む。
気分を明るくしようと明るい音楽を聞いても、逆にふさぎこんでしまう。
私たちの心は、そうそう自分の思い通りにはならないのです。
思い通りにするには、心という現象を作り出す脳の仕組みを逆に利用するのです。

側坐核には、「期待の脳」という別名があります。
側坐核は、期待することで興奮する神経組織だからです。
その期待とは、喜びを期待することなのです。
脳科学的には、喜びはドーパミンの氾濫です。

ドーパミンは麻薬や覚醒剤とそっくりな分子構造を持ち、これが脳内にあふれてくると、言い知れぬ快楽や喜びを感じるように出来ています。

困難な仕事を苦労してやり遂げたとき、好きな彼女を抱きしめたときの喜びは、この神経伝達物質が作り出したものです。
その時、ドーパミンが湧き出すのですが、側坐核は強欲でして、その喜びを再び味わいたいと期待します。
もっと大きな喜びを味わおうと望みます。

成功体験が大切なのは側坐核の性質にあります。
一度成功した人は、さらに大きな成功を期待し、大きな期待で興奮状態になった側坐核は、前頭前野の実行機能を高めます。

しかし、成功体験の無い人は、成功という喜びに対する期待度が低いので、前頭前野が十分に働かず、なかなか成功できません。
才能や能力の違いではなく、成功に対する喜びに対する期待度の違いなのです。

「幸福を手に入れた時より、幸福を追い求める時の方がずっと幸福だ」という誰かの言葉の正体は、まさに「やる気」です。
喜びを期待するからやる気が出て、辛い努力も、喜びに近づく喜びへ変わります。

監督やコーチ、会社の上司が、チームの選手や部下に与えなければいけないのは、やる気を出せという言葉ではありません。
期待値を高める指揮です。
それによって側坐核の期待値が高くなるほど、努力が平気になります。
喜びを手にした時以上に、そこへ近づくプロセスの方がドーパミンをわき出させ、努力を喜びに変える。
そうなると側坐核の影響下にある前頭前野が張り切って働くようになり、実行機能が一段と高まり、努力が成果に結びつくのです。


・放っておくと人は、過去の延長で生きてしまう。


成功した人はますます成功し、成功しない人はますます成功できなくなる。
人間関係が得意な人はますます得意になり、人間関係が得意でない人はますます得意でなくなる。
そのように、自分の脳によって、宿命付けられてしまうのです。
だからこそ、未来をつくる助詞である「かも」が重要になってきます。

「オリンピックに出て金メダルを獲る」とい言いますと「そりゃ無理だ」と言い出しそうです。
しかし、「オリンピックに出て金メダルを獲れるかも」と言い換えると、どんな厳格な理性も、可能性まで否定できません。
いかに可能性に乏しくても、100%ないと断定できないのですから。
「かも」を付けると未来の「質感」が変わった気がしませんか?
そこにはワクワクさせるものがあります。
人を行動的にするのは、未来に対するワクワク感(喜び)です。
「できるかも」という予感は、「どうしたらできるか」を脳に問いかけ続けます。
「成功するかも」という予感は、「どうしたら成功するか」を脳に問いかけ続け、「駄目かも」という予感は、あきらめる理由を問い続けてしまいます。

●次回の記事: 「かもの法則 ―脳を変える究極の理論」(著)西田 文郎【4】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002032.html

(続く)

Posted by kanzaki at 2010年02月26日 21:54