2010年10月03日

その土地ならではの新しい料理の作り方(温泉地の名物料理、B級グルメ作成)【1】

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※信濃川下流の様子。レンズは「ニコンAF-S NIKKOR 50mm f/1.4G」を使用。APS-C機に取り付けると約75mmの画角です。ファインダーを覗いても肉眼に近い画角46度なので違和感は無いのですが、広角レンズと違って構図が難しいですね。
それ以上に、まだこのレンズの特性をよく理解していません。各シチュエーションごとの最適な設定を調査中です。フルサイズセンサー機に取り付けると50mmという標準画角で、最もスタンダードなレンズとなりますから、今のうちに慣れておかねば。

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「新潟経済社会リサーチセンター」が発行している「にいがたの現在(いま)・未来(あした)」という月刊誌10月号にて、「これだけは知っておきたい! その土地ならではの新しい料理の作り方」という特集をしていました。

世間では「B級グルメ」が大流行。
B級グルメは町おこしの起爆剤になっています。

そんな中、全国の温泉地や旅館業界でも、その土地ならではの名物料理を新たに開発することで、知名度・集客アップにつなげる取り組みが行われています。
今回、この雑誌には、新潟経済社会リサーチセンターが関わってきた事例が書かれていました。
これは、B級グルメ開発のヒントになると思います。


・複数の旅館が新たに名物料理を開発する際、
「当該温泉地内にある複数の旅館経営者」
「各旅館の調理師」
「新潟経済社会リサーチセンターが依頼している料理アドバイザー」
「新潟経済社会リサーチセンターの職員」
の四者が集まって議論を重ねる「会議」を特に重視しています。
厨房を使った料理指導も勿論ありますが、原則は会議室での話し合いです。
一つの料理が完成するまでの期間は、短いもので3か月、長い場合で9か月程度です。


・名物料理の開発にあたり、料理アドバイザーが会議に加わっていることがポイントです。
東京都内のホテルで日本料理・統括料理長を歴任してきた齋藤章雄さんに料理アドバイザーを依頼しています。
齋藤さんは1958年生まれの52歳。
2008年度に「東京都優秀技能者(東京マイスター)知事賞」を受賞し、日本調理師正友六進会の会長等を務めています。


・料理アドバイザーが加わるメリットは、料理全般に対する指導を仰ぐ事だけではなく、地元の住人だけでは気づきにくい当地の特徴を特に首都圏側からの視点で指摘してもらうという点があります。


・名物料理の開発順序は、
「会議」
「各旅館からの料理提案」
「試食会」
「完成発表会」
という四つの手順を踏んでいます。
特に「会議」に重点を置いてまして、全体の5割程度を占めています。


・名物料理は、5つの方針で料理開発を進めています。

(1)地元の食材と郷土料理を掘り起こす:
その土地ならではの料理を開発しているのに、なぜか他の地域の温泉地を真似たり、他の地域の食材を使うケースが多いそうです。
首都圏から来られるお客に満足してもらうには、やはりその土地でしか食べられない料理を目指すべきですよね。
その為に会議では、その土地ならではの食材と郷土料理を見直すことから始めます。
それこそが、その土地ならでは独自性をあらわしているので、全く白紙からスタートするより短期間で、確実に料理が開発できます。
勿論、郷土料理をそのまま提供するのではなく、旅館で提供できる水準にまで洗練することが必要です。


(2)その土地にあった料理を意識する:
新潟県の温泉地は、派手さよりも懐かしさ、安心・安全を目指した方が良いと言われています。
けれども新しい料理を開発するとなると、どうしても見た目の派手さ、変わった料理、非日常的な豪華さ、複雑な手間を加えた凝った料理を目指してしまう傾向にあります。
そういったものは、開発時は良いと思っても、調理の手間が面倒だったり、コストが合わなかったり、他の料理とのバランスが悪かったりという理由から、長く提供されず、じょじょに消えてしまう可能性が高いのです。
よって、地元の新鮮な食材を活かし、必要以上に手間を加えること無く、毎日でも提供できる料理を目指すのが良いのです。
大規模な旅館では、団体客のような大勢のお客へ提供する際、複雑で手間のかかるものは提供がしにくいです。
規模を問わず、どんな旅館でも参加できる枠組みを維持するには、できるだけ日常的に提供できる料理を目指すべきなのです。


(3)地元の旅館関係者が主役になる:
著名な料理師や外部コンサルタントの指導を受けて名物料理を開発する場合、完成発表直後はイベント性があり、一時的には盛り上がるのですが、一過性のブームで終わるケースが多いものです。
理由は、著名調理師の一方的なレシピの押し付けとなっていることや、手間がかかって調理が大変だったり、食材が高くてコストが合わなかったりするからです。
複数の旅館が協力しあって名物料理を開発する場合、地元の旅館経営者、調理師が主体になってアイディアを積極的に提案するとともに、参加者自身が調理作業とコストの面で納得しながら進めていく形式をとるようにしています。


(4)農商工連携を勧める:
名物料理は、その土地で作られた食材を使用するだけではなく、できるだけ収穫、製造時期に応じた食材を使用することで、季節感を打ち出していくことも考慮すべきです。
しかし、他の地域で作られた食材や、年間を通じて同じような食材を使用している地域・旅館が少ないのが実情です。
これは、旅館関係者の情報だけでは限界があるからです。
その為、旅館関係者に対して、地元の農林漁業関係者、食品メーカーとの間で、食材の種類・特徴、収穫・製造時期や古くから食べられている食材などに関して、情報を密接に交換することを新潟経済社会リサーチセンターはつとめています。
単に、地元の食材を使用するだけでは意味がなく、美味しくて優れた食材でなければいけません。
仕入れた食材の品質に関して厳しくチェックする必要があります。
逆に、農林漁業関係者と食品メーカー側も、納品した食材が適正に調理されているかを確認すべきです。
その為にも、互いの品質に関して意見交換を重ねるのが大切です。
これにより、地域全体の「食」の品質、魅力がじょじょにあがっていきます。
それが集客力増加になってあらわれ、旅館と農林漁業関係者、食品メーカー間の商取引が拡大され、旅館だけではなく、地域全体の潤いに繋がるのです。
これが「地産地消」の最大の目的です。


(5)ルール・約束事を決める:
複数の旅館が共同で取り組むことから、使用する食材の種類・数、調理方法、料理を提供するタイミングや提供期間について、参加する個々の旅館が守らなければならないルール・約束事を事前に決めておく必要があります。
しかし、それはある程度、緩やかなものにしておいた方が現実的です。
理由は、規模の大小を問わず、多くの旅館が参加できるようにしなければならないからです。
手間がかからず、高価な食材・調理器具が不要で、誰でも参加できるようにしないと、一部の旅館にとどまってしまうことになるからです。
また、各旅館の特徴を発揮できる余地を残さないと、一方的なルール・約束事の押しつけになってしまう可能性があります。
こういう点からも、ルールは緩やかにしておいた方が良いのです。


以上が、全体の枠組みです。
次回は、新しい料理に取り組んだ実例を紹介します。

B級グルメ開発もそうですし、今回の複数の旅館による料理開発もそうですが、一つのお店・旅館だけではなく、その地域全体が潤うようにしないと意味がありません。
その地域の独自カラーを作るには、ある程度ルールが必要です。

料理というのは、各お店、旅館によって独自性を出すのが当然であり、お互いがライバルです。
個性と個性がぶつかり合いすぎて、統一カラーを出すのは難しいものです。

だからこそ厨房ではなく、「会議室」での話し合いが中心になるのですね。
同じ方向を向く事が、複数のお店・旅館が連携する大切なようです。

話しが大きく、とても一つの旅館や料理店だけで出来るようなレベルではありません。
その為にも、いろんな業界・専門家をつなげる(お見合いをさせる)ための機関が必要です。
今回は新潟経済社会リサーチセンターが担っています。
B級グルメだと、県とか市の職員が携わります。
料理とは全く無縁のようですが、地元の異業種をつなげるには、まずこういった機関が動かないと難しい事がわかりました。


●次回の記事: その土地ならではの新しい料理の作り方(温泉地の名物料理、B級グルメ作成)【2】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002178.html

Posted by kanzaki at 2010年10月03日 22:09