2010年11月29日

映画「SP(エスピー) THE MOTION PICTURE 野望篇」の感想・レビュー〜久々に何度も見たいと思ったアクション映画(ネタバレもアリ)【1】

先日、「SP(エスピー) THE MOTION PICTURE 野望篇」を見てきました。

●SP THE MOTION PICTURE 野望篇 予告編

●映画「SP」公式サイト
http://sp-movie.com/

●SP (テレビドラマ) - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/SP_(%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%9E)

●SP THE MOTION PICTURE - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/SP_THE_MOTION_PICTURE

この映画の感想・レビューを書きたいと思います。
最近は映画を観ても、面白くないと神ナナに書きません。
私がここで書くぐらいですからお気に入りだし、人にも勧めたい作品です。

例によってネタバレを含んでいますので、近々見る予定がある方は、読まない方が良いと思います。
けれどですね、今回の劇場版前編は、殆どストーリー自体は展開がありません。
ストーリーは後編のお楽しみ。
前編はアクションのオンパレードとなっております。
きっと、後編となる「革命篇(来春3月12日公開)」の直前に、特別編集版としてテレビでオンエアするでしょう。
けれど、アクションものは是非、劇場で観てもらいたいです。
日本映画は、物静かで繊細な心情を淡々と語っていくものだと思っていたら大間違いです。
こうやって、アメリカ等が忘れてしまった肉体をフル活用したアクション映画を日本が作れるようになったのは、後編のタイトルどおり「革命」だと思いますよ。

2008年4月5日にテレビ放映された「スペシャルアンコール特別編」の最後、主人公・井上 薫(いのうえ かおる・岡田准一)は、上司・尾形 総一郎(おがた そういちろう・堤真一)に疑惑を感じます。
それは、対立を予感するものでした。

映画は、それから一ヶ月後のお話し。
この劇中で、尾形 総一郎(堤真一)は完全に「敵」と認識されます(後編で大どんでん返しがあるかもしれませんが)。

また、特撮ヒーローもので言うところの敵幹部・ラスボスが登場します。
尾形 総一郎(堤真一)側のキャラクターです。

警視庁警備部警護課第四係は、そいつらにとって見れば邪魔な存在。
特に、井上 薫(岡田准一)は、護身術・武術・格闘技に秀でているだけではなく、幼少の経験から、五感が異常に発達しております。

wikiによりますと、

・嘘や身の回りの危険を察知する能力「シンクロ」
・見た光景を一瞬で記憶し映像として残す「フォトグラフィック・メモリー」
・足跡からその人物の特徴を見破る能力「トラッキング」
・警護対象者が襲われた場合を「妄想」という形で「予知」し、犯行を阻止する

等の特殊能力を身につけています。
ガンダムで言うところのニュータイプみたいなものでしょうか。
ニュータイプって、額のところがキュピーンと光って、何かを感じ取りますが、まさにあんな感じです。
それ故、ただの肉体派刑事ではないのです。

そんな特殊能力まで持っている主人公が敵にとっては邪魔なので、職務遂行中の殉職という形で殺そうと刺客を送り込みます。
それに恐れおののくような警護課第四係ではありません。
戦っていく中、一人またひとり倒れていきますが、しっかりと要人警護を遂行します。
以上が今回のお話し。

この通り、ストーリーが殆ど進んでおりません。
けれどそれ故に、上映時間98分の殆どをアクションシーンに力を注いでいます。
このアクションに、スタッフは自信を持っていいと思う。
CG全盛のこの時代、スタントマン無しで動きまわる岡田准一さん他、みんな頑張っているのが伝わってきます。
CGやワイヤーアクションのような嘘臭さが無いのは、本当に自分達でやっているからです(CGは主に、現在の日本では撮影許可が降りないからという理由の部分に使っている)。
なんて、エキサイティングな映画なんだろう。
こんな風にワクワクしながら映画を見たのは久しぶりですよ。
アクション中心だから、リピーターも多いようです。
(二回目以降は、そのアクションの至る所に散りばめた伏線を検討するという楽しみがあります)

1970年代から1980年代前半までの、
深夜や土曜の午後等にオンエアされていたアメリカのアクションドラマ、
日曜洋画劇場でオンエアされたアクション映画、
CGを使わずに撮影したスピルバーグ&ルーカスのインディ・ジョーズ&スターウォーズ
等に興奮して幼少時代を過ごした人ならば、SPにハマれると思う。

CGだと、簡単に空想を現実化できるから、余計にスクリーンの中に情報を詰め込み過ぎるんですよね。
しかも大量の物体が、物凄い速さで動く。
最近のアニメもこの悪い癖があるのですが、見ている方は何が起きているのかよく分からないんですよね。
先日、劇場版「機動戦士ガンダムOO」を見たのですが、あまりにもロボットと異星人が早く動きすぎ、更に一体からミサイルを百発以上放出するものですから、画面がごちゃごちゃして分かりませんでした。

昔のアクション映画は手作りですから、一つの画面の中で動いている数は少ない。情報量自体は少ない。
けれど、一つ一つの動きが丁寧だし、見ている方も動きに追いつけるから理解がしやすい。
動きがそのまま、視聴者の楽しみに繋がっていました。
だから、ちびっ子だった私でも、海外だからとか、英語だからとか(吹き替えですが)、子供には理解出来ない大人の世界でも、十分に満喫できました。

今回の「SP(エスピー) THE MOTION PICTURE 野望篇」は、二つのアクションシーンに分けられます。
一つは前半の日中のアクション。
主人公が犯人を、沢山の人や車でゴミゴミした街の中で追いかけるシーン。
基本的に一対一のアクションですから、見ている方も理解しやすい。
それを東京の街で展開するので、クルマを飛び越えたり、人ごみの壁を突き抜けたり、電車が突っ込んできたりと、街が多彩なステージのアクションゲームの舞台に変化しております。

もう一つは後半の、深夜の街の中を要人を警護しながら、官邸へ無事に送り届けるステージ。
こちらはパーティー戦となっております(けれど、敵味方あわせても数人です)。
深夜の暗い街の中、クルマが使えないので足で移動。
しかし行く先々で、敵が待ち構えています。
警備部警護課第四係のメンバーが戦いの中で一人、また一人負傷して脱落していく。
それでも職務遂行の為に目的地へ到達するまでのお話しです。
まるで全盛期の週刊少年ジャンプにて、ラスボスを倒すために塔のてっぺんへ向かう主人公達みたいじゃないですか。
暗い街の中で展開し、ゴールした場所で朝日がのぼる。
昔のアクション映画みたいです。
テレビドラマ版では、主人公以外の警備部警護課第四係のメンバーがあまり戦っていませんでしたが、今回は全員が戦っており、「みんなエキスパートだったんだな」と再認識できます。
みんな活躍の場があったのは良かったです。
主要人物に空気キャラがいないのは良いですよね。

この作品のファンのほとんどは、岡田准一さんをジャニーズのアイドルという目で見ていないと思う。
一人のアクション俳優であり、このストーリーを構築する重要なコアだと認識しているはず。
アイドル映画なんて、これっぽっちも感じませんものね。
ご自身もアクションシーンのスタッフとして加わり、色々とアイディアを盛り込んでいます。
また、肉体改造のため、フィリピン伝統武術カリを2年間稽古した成果は、はっきりと出ていたと思います。

この前編で注目すべきは、警棒(伸縮する金属製の護身用の棒。正式名称は私には分かりません)を使ったアクションでしょうか。
私は警棒を使ったアクションなんて見たことありません。
せいぜい、漫画・アニメ「機動警察パトレイバー」の主人公ロボットが武器として使ったのを見たぐらい。
これは世界初でしょうか?
移動するトラックの荷台で敵と向かい合い、敵がトラックにあった鉄パイプを握りしめる。
主人公は警棒をスタッと伸ばして構える。
それだけで、かっこ良さに身震いがしましたよ。
足元の安定しない中、警棒で敵と戦うシーンは、背景の街の合成はショボイものの、それを全く気にさせない迫真のアクションでしたよ。
また、後半の夜の戦いでは、敵が投げてきたダイナマイトを警棒で打ち返して爆発させていましたもの!
普通、敵に攻撃されてきたら、まずはピストルで応戦するのでしょうが、主人公は全く拳銃を使わずに戦っております。
やはり、ピストルでドンパチをするより、己の肉体で格闘する方が、観ていてワクワクしますよ。
こんな凄い警棒アクションを思いついたスタッフと、現実のものにした岡田さんに拍手したいです。

クルマの上を跳んで移動したり、警棒で格闘したり、肉体をフル活用していますが、服装はネクタイにスーツです。
アクションに最も相応しくない格好で、あれだけの動きをするのだから凄いですよ。
テレビドラマ版でも動きまくっていましたが、映画はそれを上回る動きです。
アクションって制作費を掛けたからと言って良くなるものではありません。
スタッフとキャストの心意気が重要。
だからこそ、昔のアクションドラマ・映画は、制作費が少なかろうが、製作技術がまだ未熟であろうが、観ている人の心に心意気が伝わってくるのでしょうね。

【続く】

●次回の記事: 映画「SP(エスピー) THE MOTION PICTURE 野望篇」の感想・レビュー〜機動警察パトレイバーのエッセンス満載(ネタバレもアリ)【2】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002226.html

Posted by kanzaki at 2010年11月29日 23:24