2010年12月01日

映画「SP(エスピー) THE MOTION PICTURE 野望篇」の感想・レビュー〜機動警察パトレイバーのエッセンス満載(ネタバレもアリ)【2】

前回の続きです。
(昨日は腰が痛くてダウンしてしまいました。私はSPになれそうにありませんorz)


●前回の記事: 映画「SP(エスピー) THE MOTION PICTURE 野望篇」の感想・レビュー〜久々に何度も見たいと思ったアクション映画(ネタバレもアリ)【1】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002225.html

●SP THE MOTION PICTURE 野望篇 予告編

●映画「SP」公式サイト
http://sp-movie.com/

●SP (テレビドラマ) - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/SP_(%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%9E)

●SP THE MOTION PICTURE - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/SP_THE_MOTION_PICTURE


この映画を見た男性の多くは、映画館をあとにした際、テーマソングが「♪デー・デッ・デッ、デー・デッ・デッ」と脳内に無限ループで鳴り響いたことでしょう。
そして、今の自分ならば主人公・井上 薫(いのうえ かおる・岡田准一)のように、クルマの上をジャンプして移動できたり、ダイナマイトを投げられてもそれをキャッチして投げ返したりできる超人の気分だったことでしょう。
さらに折りたたみ傘なんか持っていた日には、伸縮する柄の部分をシャキーンと伸ばして構えたりしてしまう事でしょう。

今回の映画はTVドラマの続きなのですが、TVドラマ時代の総集編的なものは流されませんでした。
完全に、TVドラマ時代のファンのみをターゲットに制作したという事でしょうかね。
一緒に映画を観に行った人は、このドラマを観ていなかったので、人物関係が分からないし、なんで主人公がエスパーみたいな能力を持っているのか理解できなかったとの事。
たった98分の短い映画なのですから、あのテーマ音楽にあわせ、簡単に今までの出来事を紹介しても良かったのではないでしょうかね。

「踊る大捜査線」の劇場第一弾を公開する前、テレビでスペシャルドラマを二本オンエアしたし、「相棒」の劇場第一弾を公開する前も、土曜ワイド劇場時代のエピソードを新作カット追加で二本オンエアしましたよね。
「SP」はTV版がオンエアされてから、少し時間が経過しています。
ずっと観ていた人達でも、要所要所の記憶しかない。
その間、週刊漫画雑誌「ビッグコミックスピリッツ」で漫画版を連載はしていました。
しかし、TVドラマ版が大前提で作られた映画なのですから、せめてゴールデンタイムにて、2008年4月5日にテレビ放映された「スペシャルアンコール特別編」に新作カットを追加したものをオンエアしても罰はあたらないと思います。

これから予備知識無しで映画を観るならば、三点をおさえておけば良いかと。

・主人公達は警視庁警備部警護課に所属しており、警護対象(マルタイ)を体をはって守る人達だと言う事
・主人公・井上 薫(いのうえ かおる・岡田准一)は護身術・武術・格闘技が凄い上に、五感が異常発達している
・主人公の上司・尾形 総一郎(おがた そういちろう・堤真一)は、実は敵だった
・警護課の紅一点・笹本 絵里(ささもと えり・真木よう子)のオッパイは大きい

前回の記事で、アクションシーン満載の映画だと書きました。
この「SP」にはもう一つの側面があると思います。
それは、アニメ・漫画「機動警察パトレイバー」のエッセンスを引き継いだ内容だという事。

●機動警察パトレイバー - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A9%9F%E5%8B%95%E8%AD%A6%E5%AF%9F%E3%83%91%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%BC

『機動警察パトレイバー』(きどうけいさつパトレイバー、Mobile Police PATLABOR)は、1988年を基点とした10年後からの数年間の近未来の東京を中心とした地域を舞台とした漫画、アニメ、小説などのメディアミックス作品である。

wikiのあらすじをまとめますと、この漫画及びアニメは、21世紀を間近に控えた日本が舞台。
軍事・民生を問わずあらゆる分野で、人型をした大型のロボットが使用されるようになっています。
この世界ではロボットを「レイバー(Labor)」と呼んでいます。
しかし、そのレイバーを使った犯罪が多発。
そこで、、警視庁は警備部内の特機部隊にレイバーを導入して対処することになりました。
「特科車両二課中隊」、通称「特車二課」。
これがパトロールレイバー、通称「パトレイバー」 の誕生です。
小隊は「第一小隊」と「第二小隊」があります。
第二小隊は、一人を抜かして他は、予備校を出たばかりの経験ゼロの人達ばかり。
後藤隊長が「精鋭になるかは、たまた独立愚連隊になるか」と言わしめた個性的な集団でした。
若いパトレイバー隊員たちの青春群像である他、産業ドラマ、陰謀ドラマとしての側面があります。

「SP」の主人公達が所属する「警視庁警備部警護課第4係機動警護班」は、第1〜3係だけでは手が足りない時の補充要員であり、新人SPはまずここに配置されるという設定です。
個性というか癖のあるキャラクター達ばかりの、ある意味独立愚連隊。
そんな立ち位置は、パトレイバーの「特科車両二課中隊第二小隊」と似ていますね。

また、パトレイバーは警察内の腐敗、軍事・レイバー産業内での陰謀が、重要ストーリーとして扱われています。
劇場版第一作「機動警察パトレイバー the Movie」は、公開が1989年ですから、まだWindows95が世に出る以前だというのに、レイバー(ロボット)に組み込まれたOSが、犯罪者による「コンピュータウイルス」によって汚染され、レイバー達が街の中を暴走する事件を描いた内容です。
警視庁上層部や政府は、大企業との癒着や国のミス等を隠蔽し、無理やり政治的決着をつけようとします。
しかし犯人は、更なる大規模な暴走を引き起こす為、ある仕掛けをしていました。
それを食い止めるため、第二小隊は、東京湾上の浮遊建造物「方舟」を解体する為に緊急出動をします。
コンピューター犯罪、警察の上層部の腐敗等をミステリー的に描きます。
こういった重いテーマを高い水準の画・脚本・音楽で描きだし、更にロボット達のアクションもカッコいいときたもんだ。
そういやこの作品の中で、カラスが印象的でしたが、「SP」の劇場版でも使っていましたね。
(SPの場合、あまり意味が無かったかも)

●機動警察パトレイバー the Movie - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A9%9F%E5%8B%95%E8%AD%A6%E5%AF%9F%E3%83%91%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%BC_the_Movie


劇場版第二弾「機動警察パトレイバー 2 the Movie」では、自衛隊のクーデターをモチーフにした作品です。

●機動警察パトレイバー 2 the Movie - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A9%9F%E5%8B%95%E8%AD%A6%E5%AF%9F%E3%83%91%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%BC_2_the_Movie

既にパトレイバー初期のオリジナルビデオアニメにて、自衛隊のクーデターものは取り扱っていました。
今回は更に重厚となっており、仮想的な「戦争」という状況下に置かれた東京を舞台に、この「情況」を演出したテロリストを逮捕するため、特車二課第2小隊最後の任務が描かれます。

権力闘争と責任転嫁に汲々とする警察上層部の姿と、それを見限った後藤隊長の関係は、「SP」の警察上層部と警護課第4係係長・尾形 総一郎(おがた そういちろう・堤真一)の関係に近いです。
後藤隊長はテロリスト逮捕に努めますが、尾形係長は逆にテロリスト側へ手を染めます。

パトレイバー劇場版第一作、第二作共に押井守監督による作品です。
押井守監督はこのエッセンスを「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」という作品で更に追求しています。
この作品は、テロや暗殺、汚職などの犯罪を事前に察知してその被害を最小限に防ぐ内務省直属の攻性の公安警察組織「公安9課」の活躍を描いた近未来のSFアクション物語です。


そして、パトレイバーの演出、世界観のエッセンスを刑事ドラマに取り込んだのが、フジテレビ制作の「踊る大捜査線」と言えましょう。
「踊る大捜査線」はテレビ、スペシャルドラマ、劇場版第一作までは、コアなファンによって支えられてきたものの、次第に方向性がおかしくなってしまい、第二作でファンに失望され、最近上映された第三作は年月の経過もあり、以前のような日本中を巻き込んだブームにはなりませんでした。
初期の「踊る大捜査線」ファンは今、「SP」へ流れていると思います。

「パトレイバー」「踊る大捜査線」では、警察上層部と民衆の怠惰が混沌とした世界を作り出しているという演出がされていますが、その後継的作品が「SP」だと言えましょう。
(そういや、「相棒」もそういうエッセンスを含んだエピソードをたまにやりますよね)

映画「SP(エスピー) THE MOTION PICTURE 野望篇」の続きである「革命篇」は、要人警護を取り扱った作品に相応しいラストバトルとして、なんと「国会議事堂」を舞台にしています。
さすがに国会議事堂では映画撮影はできませんから、滋賀県庁等、滋賀県でロケが行われました。
「野望篇」の最後で「革命篇」の予告をやっていましたが、パッと見た感じ、まんま国会議事堂です。
あまりにもリアルすぎて驚きました。
政治の舞台である国会議事堂をこの作品のラストバトルの舞台にしたのは、とても野心的でいいですねえ。
今まで、誰もやったことの無い映像が期待できそうです。
閉鎖された空間で、しかも要人中の要人である政治家達が大勢集う場所にて、テロリスト達とどう戦うのでしょうか。
限られた舞台で戦った作品と言いますと映画「ダイ・ハード」の第一作が思い浮かびます。
第二作目以降の大味化したものと違い、ビルという限定された閉鎖空間において、劣勢な主人公が頭脳で挑んでいく要素が沢山散りばめられており、非常に日本人受けする内容でした。

「野望篇」でも頭脳戦が盛り込まれていましたが、「革命篇」は更にその辺が濃密になって展開されるのではないでしょうか。

世間では、宇宙を飛行する戦艦や、メガネを掛けた魔法使いの映画が注目されていますが、併せて「SP」も観てみてはいかがでしょうか?

Posted by kanzaki at 2010年12月01日 22:39